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2020-06-03

宇佐美貴史、天才と呼ばれた男の少年時代



ステップアップのために臨機応変にドリブル

――宇佐美選手はマーカーやコーンを使った練習もしていた一方、次第にマーカーやコーンを用いず、目の前に相手選手を思い浮かべて仕掛ける練習、いわゆる「妄想ドリブル」をするようになったそうですね。

宇佐美 僕は考えることが好きだったんです。何も考えずにプレーするよりも、なぜそういうミスが起きたのか、どうやったらボールタッチがうまくなるのかを考えていました。闇雲にボールを蹴ったり、触ったりしてもうまくなりません。

 妄想ドリブルは小学3、4年生ぐらいだったかな。きっかけは、あるとき気が付いたんです。マーカーやコーンを使ったドリブルは基礎中の基礎。できるようになったあとに続けても正直、意味はないですよね。実際の相手はマーカーやコーンのように止まっているわけではないので、実戦で使えるスキルではありません。

 マーカーやコーンのドリブル練習は、実戦で使うスキルの一つ手前で、いわば土台です。ずっと土台をつくる作業をしていても仕方ないですし、ステップアップしなければいけません。だから、頭の中で相手を思い浮かべて臨機応変にドリブルするほうが理にかなっていると思ったんです。よくボクサーがシャドーボクシングをするじゃないですか。相手をイメージするという点では、シャドーボクシングとほとんど一緒です。

――妄想ドリブルの具体的な方法を教えてください。

宇佐美 基本的に、思い浮かべる相手は1人ではなかったです。4、5人を思い浮かべて、ボランチとサイドハーフのところを突破したらサイドバックが出てくるので、そこでカットインしたら次はセンターバックが出てくる、というところまで想定していました。何人か抜いたあとに、相手がどういうカバーリングをしてくるか、といったことも思い浮かべていました。カットインしたあとにどうプレーするのか、ピッチ上の奥のほうまで描きながら練習するんです。

――小学生の頃の思い出に残っている練習はありますか?

宇佐美 リフティングをしながらダッシュする練習です。50メートルぐらい、それもトップスピードのまま。小学6年生ぐらいから始めて、中学生になって(ガンバ大阪ジュニアユースに入って)からも続けていました。

 ほかに思い出深いのは、小学校低学年のときです。長岡京はひたすらボールに触らせるので、本当に集中して自分が扱いたいように、置きたいところに置けるように、蹴りたいところに蹴れるように練習していました。今にして思えば、不思議なほど集中していました(笑)。「この練習は絶対におろそかにしてはいけない」、「これでサッカー選手としてのベースができるんだ」と無意識に感じていたんだと思います。長岡京は、サッカーをすごくやっていた記憶はありますけど、メニューは特別ではなかったです。

2018年ロシア・ワールドカップのメンバーに選ばれ、2試合に出場。まだ20歳代後半と老け込むような年齢ではなく、日本代表でもさらなる活躍が期待される

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