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2025-07-11

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第30回「気分転換」その3

平成28年名古屋場所7日目、琴奨菊の休場により、魁聖がこの場所2回目となる不戦勝の勝ち名乗り

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令和3年はコロナのヤツが猛威を振るっていました。
東京も、神奈川も、大阪も、埼玉も、とにかく日本中が大変です。
三密を避け、不要不急の外出はせず、家の中にジッとしているに限ると言いますが、ほどってものがあります。
こういうときは思い切って気分転換をしちゃいましょう。
この気持ちの切り替え、気分一新は、力士たちの得意技です。
どうやっているんだって? 
じゃあ、紹介しましょう。彼らの個性にあふれた気分転換法を。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

不戦勝の恩恵も

闘わずして勝つ。これは究極の必勝法だ。相撲にもある。相手がさまざまな事情で土俵に上がれず、なんにもせずに勝ち星が転げ込む不戦勝だ。こんな楽で、気分転換にもなる勝ち星はない。
 
平成28(2016)年名古屋場所7日目、東関脇の魁聖(現友綱親方)は、このありがたい不戦勝を得た。相手の大関琴奨菊(現秀ノ山親方)がこの日、「左膝内側側副靱帯損傷、左アキレス腱周囲炎で約14日間の安静加療を要す」という診断書を提出し、休場したのだ。
 
この魁聖、実はこの場所の初日にも対戦相手の大砂嵐が左膝半月板損傷で休場してしまい、不戦勝をもらっている。これでこの場所2個目の不戦勝だった。魁聖が喜んだのは言うまでもない。勝ち名乗りを受けて引き揚げてくると、

「なんかツイているっすね。どうしてかって? オレは帰ると部屋から出ず、夜遊びしない、いい子だからじゃないっすか」
 
とはしゃいでいた。
 
この魁聖のように1場所2個も不戦勝を得たツイている力士は結構おり、最近では令和2年秋場所の朝乃山がいる。ちなみに最多は平成14年夏場所の東十両6枚目の春日錦の3個。このことを知らされた魁聖は、

「じゃあ、オレは4個を目指す」
 
と変なハッスルをしていたが、世の中はそんなに甘くなく、結局2個止まり。成績の方も、闘わずして2勝も得たにもかかわらず7勝8敗と勝ち越しにあと1歩及ばず、自己最高位の関脇を1場所で明け渡してしまった。

月刊『相撲』令和3年9月号掲載

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