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2025-07-13

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所初日の一番】大の里、緊張の新横綱初日も相撲は万全。欧勝馬を寄り切り白星の船出

土俵際の腰の備えも万全に、欧勝馬を寄り切って好スタートを切った新横綱大の里。あすの新鋭安青錦との一戦は楽しみ

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大の里(寄り切り)欧勝馬

新横綱の誕生を祝うような、新しくて豪華な会場。1万7000人収容のIGアリーナの空間の広がりは、これから開けていく未来を示しているようだ。
 
相撲の開催時は、7800人収容で使用するとのことだが、この日は7782人が詰めかけ、新会場はこけら落としから早速の札止め。新横綱人気もあって、名古屋場所はにぎやかにスタートした。
 
最大の注目はもちろん、幕下10枚目格付け出しデビューから所要13場所と、年6場所制以降では最速のスピードで横綱に上ってきた大の里だ。注目の初日は日体大の2年先輩でもある新小結の欧勝馬との対戦が組まれた。
 
欧勝馬は、先場所前頭6枚目で10勝を挙げ、三役に飛びこんできた力士。幕内ではこの日が初顔合わせだ。十両では2度対戦しているが、いずれも前に圧力を掛け続けて押し出しで大の里が勝っている。イナシのうまい力士なので、大の里にとっては「不十分な体勢で無理に攻めず、しっかり圧力を掛けて起こしながら攻められるか」がポイントとなる相手ではあった。
 
ただやはり、横綱土俵入りがあるなど、これまでとは違うリズムで臨む戦いで、緊張があったのだろう、立ち合いは、一度新横綱が早くつっかける形で待ったとなった。
 
それでも、2度目の立ち合いは、まったく問題なく、落ち着いたものだった。欧勝馬も低く当たって一瞬左の前まわしに手を掛けたが、大の里はモロ手突きの形から右をグイッと伸ばして距離を取り、前に圧力を掛けながらこれを切る。
 
そのあと再度大の里の右差し狙いと欧勝馬の左前ミツ狙いの攻防となったが、大の里はおそらく、圧力を十分にかけられていて、相手を起こせている、という感覚があったのだろう。右差しが難しいとみるや、無理にこだわらず、右を上手狙いに変えて、左からのおっつけと合わせて、相手が右にも左にもかわせない形をつくって、そのまま寄り切った。

「いろいろなことが先場所までと違って初めてだったり、タイミングが大変だった。その中できょう勝てたのは大きい」と大の里。まずはこれ以上ない形で、新横綱の船出を飾ったと言えるだろう。横綱としての取組までのリズムにもだんだん慣れてくるはずなので、序盤をうまく乗り切れれば、新横綱Vへの道も見えてくる。
 
この日は、先輩横綱の豊昇龍は苦手の髙安を左外掛けと右ノド輪の合わせ技という厳しい相撲でひっくり返して白星。大関琴櫻は新鋭安青錦の内無双に敗れたが、これはむしろ安青錦の今後への楽しみを膨らませる一番と言ってもいいかもしれない。また、1つ空席となった大関の座を狙う関脇陣は、大栄翔こそ残念ながら休場となったが、残る霧島と若隆景は、それぞれ持ち味の低い攻めを発揮し、会心の勝利。どうやら今場所は面白いと言われる「関脇の強い場所」になりそうだ。
 
この日、好スタートを切った大の里は、あすは結びの一番で安青錦と対戦。これもどんな相撲になるか、ワクワクの顔合わせだ。相撲界の新たな時代のスタートを感じさせたこの日だが、その2ページ目も、どんな形で開かれていくのか、まだまだ楽しみは尽きない。

文=藤本泰祐

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