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2025-07-20

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所8日目の一番】伯桜鵬が初の金星! 大の里が2敗目を喫し、優勝争いは一気に混戦に

大の里は引きで相手を呼び込み、伯桜鵬に初金星を献上する2敗目。優勝争いは一気に分からなくなってきた

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伯桜鵬(押し出し)大の里

優勝大本命の横綱が、あっさりと2敗目を喫した。
 
大の里が引いたところを伯桜鵬に一気に出られ、今場所2つ目の黒星だ。伯桜鵬は、先場所の豊昇龍戦に続いて2度目の横綱挑戦で初めて勝利を挙げ、これが初金星となった。
 
この日は、伯桜鵬に速く、鋭い立ち合いをされた大の里が、直後に右で相手の首根っこを押さえての安直な引き。すかさずついてこられて、そのままあっという間に白房下に押し出された。
 
大の里と伯桜鵬の対戦は、先場所は当たり合った後、余裕をもっての叩き込みで大の里が伯桜鵬を転がしている。立ち合い直後の引きという意味では同じような相撲に見えるが、先場所と今場所では、その前段がまったく違っていた。
 
先場所は、大の里は立ち合い、まずモロ手突きでしっかり相手の勢いを止め、上体を起こしていた。そのため、その後の引きは余裕十分なものとなった。だが今場所は、大の里は右を差しにいく立ち合い。速く、低く立った伯桜鵬に、当たる勢いでも、体の角度でも先手を取られた。もちろん相手を起こすことはできていない。このため、今場所の引きは相手を呼び込むことにしかならなかった。

「座布団が舞う光景はテレビでは見ていましたが、初めて目の前で見られて、夢のようでした。稽古してきたことがしっかり出せて、よかったです」と伯桜鵬。「懸賞を受け取る時、思わず顔に出そうになりました」と笑顔だ。
 
何でも、鳥取城北高時代に稽古に来た大の里に1回勝ったことがあるそうで、この日は両親から送ってもらったその時の動画を何度も見返して、イメージをつくって臨んだのだという。そして、その両親が会場で見守る前で、見事に初金星をゲットした。

今場所の前半は、敗れるときは完全に圧力負けのような相撲が多く、あまり力が出せていない感じもあった伯桜鵬だが、この日の内容のいい金星で五分に戻したことで、一気に後半戦への展望が開けてきたと言っていいだろう。勝ち越すことができれば、殊勲賞の有力候補、さらには来場所の番付では新三役へも肉薄できる地位が見えてくる。
 
大の里は、4日目の王鵬戦に続いて、引いての黒星。立ち遅れたりして後手を引いてしまうと、そこでもうひと腰踏ん張れずに引いてしまうのが癖になりつつある感じもあり、ちょっと心配だ。伯桜鵬のような、どちらかというと幕内では大きいほうではない力士にも、「速く鋭く、しっかり当たればチャンスあり」と思わせてしまうことになったのもマイナス材料と言えるだろう。無敵の横綱となるためには、早めの改善が求められるところだ。
 
きのうまで、ガチガチの大本命と見られた大の里が2敗目を喫したことにより、今場所の優勝争いは一気に混とんとしてきた。中日の折り返しで、1敗は霧島、玉鷲、一山本、草野の4人。大の里、髙安、安青錦ら6人が2敗で追うこととなった。
 
大の里は1敗勢とはいずれも対戦がなく、自力で引きずり降ろすことが可能で、対霧島にも対戦成績がいいことから、まだ十分逆転できる状況ではあると思うが、ほかの力士に先行を許したことで気持ちの余裕がなくなるようだと、さらに星を落とす危険もないとは言えない。
 
そしてもう一つ言えるのは、いつもの場所なら、「1敗勢も後半上位と当たれば星を崩すだろう」という予想が成り立つが、正直、今場所の三役陣はそこまで層が厚いとは言えないので、平幕勢も1つ、2つ三役を食えれば、優勝戦線に残れる星になる可能性がある、ということだ。そう考えると、40歳玉鷲の3回目の優勝! とか、チョンマゲ草野の新入幕優勝‼ とか、あるいはデビュー12場所目の安青錦の優勝!!! も、可能性がない話ではないと思えてくる。
 
新横綱大の里が逆転して綱の威厳を保つか、それともアッと驚く優勝者が飛び出すか。尾張名古屋の場所の終わりは、全く予測がつかなくなってきた。

文=藤本泰祐

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