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2025-07-24

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所12日日の一番】元気な40歳にも起こされず。安青錦が2敗を守り、トップ並走は琴勝峰と2人だけに

今場所元気な玉鷲を相手にしても、上体を起こすことは許さず。最後は下手投げで2敗を守り、安青錦はまた一歩Vに前進した

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安青錦(下手投げ)玉鷲

人生のキャリアで言えば、2倍近く生きている(安青錦21歳、玉鷲40歳)大先輩を、豪快に投げ飛ばした。
 
安青錦が低い体勢からの下手投げで玉鷲を破って2敗をキープ。きのうまで4人いた2敗勢のうち、この日、髙安を叩き込んで白星を挙げた琴勝峰とともに、優勝争いのトップを守った。
 
今場所、昭和以降では最高齢での金星を記録するなど、元気な元気な玉鷲との対戦。もしも右ノド輪をまともに食らうようなら、いかに安青錦でも起こされる危険があり、怖い相手ではあった。
 
注目の立ち合い。安青錦は頭から低く当たり、玉鷲はそれを下からはね上げるような形をとった。そのあとしばし突き合い。パワーに勝る玉鷲がやや攻め込んだが、安青錦は頭を上げず、逆に押し返した。
 
こうして最初の突進を止めてしまうと、玉鷲もさすがにそれ以上の力で押し直すというのは難しい。相手に飛び込まれるのを警戒して、様子を見ながら手を出す感じになった。こうなれば安青錦ペース。少し突いた後サッと入って左下手。だがまだ安心はできない。玉鷲には大の里を倒した強烈な右からの突き落としや小手投げがあるからだ。
 
それでもそこは、この若さで相撲のうまさを身につけている安青錦だ。相手に重心を預けるような攻めには持ち込まず、頭をつけながら少しずつ相手の上体を浮かせ、最後はいったん右ハズで押しておいて、タイミングよく左下手から投げ捨てた。

「強いし、低いし、形が一回も崩れない。なかなか自分の押しが効かなかった。完全に負けたんなら分かるけど、なんかパッとしない」と敗れた玉鷲に嘆かせたのは、それだけ安青錦が玉鷲得意の攻撃を出させなかったという証だろう。
 
この日は、安青錦のほか、琴勝峰は勝ったが、草野は若隆景を起こせず、低く食いつかれて黒星。一山本は大の里に引かせて軍配を受けたが、取り直しの末に敗れ、きのうまで4人いた2敗力士が2人に絞られた。3敗では大の里、一山本、熱海富士、草野が続く形となったが、情勢としては安青錦が初優勝へ一歩前進した、と言えるだろう。
 
安青錦は、あすは一山本と対戦。三役戦はすでに終わっているので、あとは平幕で星のいい力士から順番に当たっていくことになるだろう。現在の状況からすると、14日目に琴勝峰、千秋楽は熱海富士か草野が候補ということになる。
 
もちろん、対戦相手となる力士は、全員が今場所好調であり、実力者なので、楽な相手は一人もいないが、少なくとも「安青錦のほうが不利では?」という相手はいない。星の上では大混戦だが、現時点で安青錦が最有力とみられるゆえんだ。
 
予想どおりに賜盃にたどり着けば、なんとデビューから12場所目での初優勝になる。昨年5月に大の里が初優勝したときには「入門7場所目のVは(昭和以降)最速」と騒がれたが、大の里は幕下10枚目格付け出しのスタートなので、それと同等の価値があると言ってもいいだろう(ちなみに序ノ口スタートの力士としては、尊富士が10場所目で優勝している)。
 
おそらく組まれるであろう琴勝峰との直接対決を含める必要はあるが、あと3つ勝てば、その快挙に手が届く。新入幕から連続で11勝しながら、今場所の番付では平幕筆頭に据え置かれたが、もう、安青錦が三役になることに異を唱える人は、誰もいないはずだ。

文=藤本泰佑

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