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2025-08-01

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第30回「気分転換」その4

平成29年初場所10日目、新旧の学生横綱対決は、豪風が北勝富士を叩き込んで勝利

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令和3年はコロナのヤツが猛威を振るっていました。
東京も、神奈川も、大阪も、埼玉も、とにかく日本中が大変です。
三密を避け、不要不急の外出はせず、家の中にジッとしているに限ると言いますが、ほどってものがあります。
こういうときは思い切って気分転換をしちゃいましょう。
この気持ちの切り替え、気分一新は、力士たちの得意技です。
どうやっているんだって? 
じゃあ、紹介しましょう。彼らの個性にあふれた気分転換法を。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

敬意を表して

見苦しい、という理由からいまは伸ばすことも力士規定で禁じられているが、平成31(2019)年2月以前はヒゲを伸ばしたり、逆に剃ったりして気分転換を図る力士が多かった。同様の理由から爪を伸ばしたり、入れ墨をしたりすることも禁止されている。
 
ただ、中には、ヒゲを剃ることにこんな思いまで込める力士もいた。平成29年初場所10日目、ここまで6勝3敗と好調の東前頭5枚目の豪風(現押尾川親方)は、前日も勝ったにもかかわらず、それまで伸ばしていたヒゲをきれいさっぱり剃り落として現れた。そのきっかけ、動機がわからず、

「どうして?」
 
と聞かれた豪風は間髪を置かず、この日対戦するまだ入幕2場所目で13歳年下の新鋭、東前頭8枚目の北勝富士の名前をあげた。

「彼も、ボクと同じ学生横綱です。向こうはひと回り以上、年下ですけど、敬意を表する意味で剃ってきました。勝負は、そういうところから始まっていますから」
 
豪風は39歳まで現役をつとめている。その秘密は、こんなふうに謙虚で、また気合の入れ方が違ったのだ。もちろん、この日の勝負も豪風の気合勝ち。激しく頭で当たり合ったあと、頭を抑えて叩き込み、若い北勝富士を翻弄した。
 
もうヒゲが気分転換の小道具に使えなくなったのは寂しい。

月刊『相撲』令和3年9月号掲載

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