東京女子の毎年恒例のシングルトーナメント「東京プリンセスカップ」で大躍進を見せている遠藤有栖を直撃。遠藤は1回戦でハイパーミサヲ、2回戦で山下実優、準決勝で荒井優希を撃破して自身初の決勝進出。舞台は8・23後楽園、相手は渡辺未詩だ。簡単にいかない相手であることは分かり切っているのだが、それでも遠藤はいまの勢いを結果につなげることを誓った。
――初めてシングルトーナメント「東京プリンセスカップ」の決勝戦に進出することができました。
遠藤 ベスト4も初めてで、ホントに初めて尽くしですよ!
――遠藤選手はタッグのイメージが強いですが、シングル戦線でも頭角を現してきましたね。
遠藤 たしかにでじもんでベルトも取ったし。だけど、そう考えるともちろん鈴芽さんと一緒に闘えるのはいいけど、やっぱり頼りすぎちゃう部分が自分にあると思ってて。後を追うじゃないけど…鈴芽さんも言ってくれるんですよね。「いつだって先を走っていく、ホントにかっこいいやつ」って。でも、それは私も同じことを思ってて。シングルのベルトも巻いたことがあるし、先にいってるって私からしたら鈴芽さんの方で。それもあって、自分1人の力でも強くなりたいって。勲章が欲しい!
――ただ鈴芽選手の欠場に伴い、準決勝(8・17大阪)はセコンドに不在でした。
遠藤 私は背負ってきたつもりですよ、鈴芽さんの気持ちを。背負って、セコンドにいてくれてるって勝手に思ってた。でもやっぱり、近くで聞く鈴芽さんの声ってホントに頑張れるから。それで元気が出るんですよ。
――なるほど。2回戦(8・9品川)で山下選手に勝利した際、セコンドの鈴芽選手は涙を流していましたね。
遠藤 泣きながら喜んでくれてた! 私より泣いててくれて、その上でホントにマジで喜んでくれて。こんなに人のことで喜べる人って素敵だなってめっちゃ思った! タッグパートナーでホントによかったな。
――素晴らしいパートナーです。これまでのトーナメントを振り返ると1回戦(8・2浜松)でミサヲ選手、2回戦(8・9品川)で山下選手、準決勝(8・17大阪)で荒井選手と、それぞれチャンピオンを経験してきた選手から勝利しています。
遠藤 すっごい人たちを倒してきたんです。しかも3人とも、これまで私はシングルで勝ったことのない選手たちで。
――2回戦での山下選手からの勝利は、場内が爆発するほどでした。自信になったのでは?
遠藤 もちろん。だって最初がミサヲさん、その次が山下さん、さらに荒井優希ですよ。ホントに自信×自信で! そんなすごい人たちを倒してきた遠藤有栖がいきますよ。未詩さんもきっといままでの後輩・有栖じゃないって思ってくれてるはずだし。
――そういった躍進を生み出したきっかけ、もしくは今年の違いなどはありますか?
遠藤 やっぱり負けず嫌いの爆発じゃないですか? 耐え抜く力も大事だなって思った。
――その思いが浮き出てきたきっかけはなんですか?
遠藤 きっかけは、トーナメント前にお父さんが…わざわざですよ? 何しに来たか分かんないですけど、地元の会津から東京の私の家に来て。一言で後押ししてくれて、ご飯も食べずに帰っていったんですよ。ホントにそれだけを言いに来た。もはや電話でも済むことをわざわざ家まで来てくれて。これはもう、お父さんのためにもトロフィーを掲げる姿を見せたいですね。
――ちょうどタイミングよく、決勝戦(8・23後楽園)の3週間後に地元・会津若松で大会がありますね。年1回の凱旋興行です。
遠藤 そうなんですよ! タイミングよくて。地元のみんなにトロフィーを見せる機会になりますね。
――ちなみにご両親はよく遠藤選手の試合を現地で観戦されているんですか?
遠藤 よく来てますよ。今回のトーナメントは来てない…けど、後楽園は来るかな(笑)。だって大阪での荒井との試合に勝った直後にお父さんからメッセージで「オレ決めた。トーナメント決勝戦行く」って一方的に宣言されて(笑)。
――一方的なんですね(笑)。それでも間違いなく遠藤選手の支えになっています。
遠藤 こんなに頑張ろうって思わせてくれる父って偉大だなって思った。原動力ですよ。
――決勝戦で華々しい姿を見せないといけないですね。
遠藤 もちろん! というか全然話変わるんですけど、ここ最近ピンクがめっちゃ好きなんですよ。だからあのピンクのトロフィーは絶対に欲しいんです。
――なぜここ最近で好きになったんです?
遠藤 ちょっと説明していきますね。私ってそもそも三兄弟なんです。で、ちっちゃい時からなぜか長女の私がピンクのものを身に付けられてて、妹が青で、弟が黄色だったんです。信号機じゃないんですけど、当時の私はピンク担当だったんです。だからこそ…っていうのかな。物心ついた時はピンクがホントに苦手になってて。女の子みたいって逆の気持ちになって。でも最近は大好き。これはもう、ピンクに縁があると。
――当時は何色が好きだったんですか?
遠藤 マジで真っ黒。服も真っ黒だったんですよ。ちょっと怖いですよね、病んでるみたいで(苦笑)。でもホントに黒で、それはちっちゃい時の反抗心ですかね。ピンクは着たくねえんだよ!って。
――ただ、最近は好きになったと。
遠藤 なんでかは分からないんですけど…やっぱり導かれてるんですかね。クロックスもピンク買ったし、いまはマジでピンクが大好きです。ただ、髪色はピンクが全然似合わなくて。いまのこれくらいだったらいいんですけど…半分だけとかでもまったく似合わないんですよ。
――なぜでしょうね。それでもピンクのトロフィーは似合うと。
遠藤 絶対似合う! だっていまピンク似合ってるでしょ?(と着ている服をアピール)
――…もちろん似合ってますよ。
遠藤 髪以外であればなんでもピンクは似合うんです!
――そして決勝戦の相手は未詩選手。8・17大阪大会はセミが遠藤vs荒井、メインが未詩vs中島でしたが、未詩選手の試合は見ていました?
遠藤 自分の試合直後でしたけど、途中から見てましたよ。未詩さんって試合をやるにつれて、こんなバケモノ化していくんだって思いましたね。なんていうんだろう…パワー×パワー?
――しかも相手が中島選手だったことで、パワー以外の部分も際立ってたかなと。
遠藤 そう、技術とかもすごかったから。練習ってホントに意味があるんだなって、マジであらためて思った。
――一方で決勝進出を決めた際に未詩選手も遠藤選手のことを高く評価していました。「デビューしたての頃とかは、シングルで勝てないってずっと言ってる印象があったんです。でも私の中で有栖って本当はシングルでも強いし、いつだって勝てたと思うんですよ。だから有栖は多分気持ちの面で自分はシングルじゃ弱いっていう思い込みでいけてなかったのかなってずっと思ってて」と。
遠藤 すごい見抜かれてますね。シングルのベルト挑戦とか、自分に実力があったかは分かんないですけど…。でもたしかに気持ちで「いまの私じゃダメだ」みたいなところはマジでありましたね。
――だからこそ、シングルで強い遠藤有栖を見せていくと。
遠藤 そう思ってます、私は。実際に決勝まできてるから「有栖は強い」。(1回戦~準決勝での勝利が)どれだけ自信につながったと思うんですか。
――もちろん伝わってきています。決勝戦はおそらくメインイベントになりますが、シングルでのメインは過去に2回だけやってるんですよね。
遠藤 やっぱり緊張は増しますね。だけどリングに立ったら闘わなきゃいけない、やるしかないじゃないですか。でも割とみんなの声、ファンの人の声で緊張は和らいだりはしますね。
――選手によっては緊張によって周囲の声が聞こえない方もいますが、むしろ聞こえる方なんですね。
遠藤 めっちゃ声を聞いて落ち着かせてるので。優勝がかかるってなると緊張からは逃れられないけど…。
――ちなみに相手の未詩選手は団体内の3本のベルトを獲得してグランドスラム達成。さらにタッグトーナメントも優勝しているので、今回のシングルトーナメントを優勝したら真のグランドスラム達成者になるようです。
遠藤 すご…。うわぁ。でもこれは私が阻止して、まだまだあげませんってかんじで。
――阻止することができたら遠藤選手はタッグ王座戴冠とシングル&タッグトーナメント制覇、さらにその先でプリプリ王座奪取を果たすと同じく真のグランドスラムにリーチがかかります。
遠藤 かっこいい…。だっていままでその可能性がなかったじゃないですか、正直なところ。だからいまやっとここまできたかってかんじ。見えてきた。そういうグランドスラムって言葉、マジで私知らなかったですもん(苦笑)。でも全部取る! ビンゴしなきゃ。
――ビンゴ…?
遠藤 リーチって言ったからビンゴって言ってみた(笑)。でも全部で5個か。
――五目並べですかね。
遠藤 じゃあそれで! 全部取ります。ホント、あらためてやばい。(トーナメント表を指して)ここに遠藤で線があるのがマジ?ってかんじ。想像できます? あんなに勝てないで、ただただ泣いてた女ですよ? 何年もシングルで勝てなかったし。そう考えたら、マジですげえ。
――その通りです。決勝戦に向けてなにか考えていることはありますか?
遠藤 未詩さんって全部を備えてるじゃないですか。そんな未詩さんに私が何で食らいついて…って、ここで言ったらバレちゃいますね。いや、ダメじゃないですか! 本人が見ちゃうかもしれないから!
――そこは秘密と。荒井選手も準決勝後のコメントで「遠藤有栖、優勝しろよ」って言っていました。
遠藤 背負いますよ、ホントに。お父さんも背負います。荒井も背負います。ってなったら私、パワーじゃないですか。2人背負ってるから。パワーで負けないですよ。トロフィーもあるから、いくらでも背負いますよ。なので「私もパワーあるよ」って、それだけ「決勝について考えてること」に書いておいてください!
――了解しました(笑)。
遠藤 鈴芽さんもいるし。みんな背負って入場しますよ、リアルで(笑)。もうパンパンだけど、家族も背負います。飼ってるワンちゃんも背負うので、6人と3匹ですね。うわぁ、パワーすっごい。でもムッキムキですよ、全部持てるから!