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2025-09-08

世界陸上東京大会マラソン代表 近藤亮太(三菱重工マラソン部)が語るマラソントレーニングとシューズの履き分け

月間1000㎞を走破
きつい練習ほど燃える! 

――大阪マラソンでは自身初のマラソンで、日本歴代5位の2時間5分39秒をマークしました。マラソン挑戦に当たって、練習で最も変わったことは何ですか。

近藤 一番は走行距離ですね。1つ1つのポイント練習の距離がもちろん延びましたし、ジョグも増えました。大学時代は長くても月間800㎞程度でしたが、マラソン練習では1000㎞近く走るようになりました。

――距離が増えることにすぐに対応できましたか。

近藤 距離走などの長い距離を走る練習は得意なので、抵抗感はそれほどありませんでした。40㎞走も30㎞走と変わらずにできたので、そういう意味ではすぐに対応できました。

――ご自身の強みはどこにあると思っていますか。

近藤 ポジティブマインド、前向きな気持ちだと思っています。いろいろなことをポジティブに変換して考えることができるんです。例えば5㎞× 6本などのロングインターバルでも、「この練習はきつい負荷をかけられるから、成長できる」と、きつい練習ほど燃えて前向きに練習に取り組めます。

――素晴らしいですね。レース前のルーティンはありますか。

近藤 部屋を掃除して出ていくことですね。〝部屋の乱れは心の乱れ〞だと思っています。日々のケアやレースに向けた準備などが1つ1つ丁寧にできているときはやはり部屋もきれいな状態なので、まずは部屋をきれいにすることで、ほかのことにも行き届くようになる、と考えています。

――レースへの準備という関連で、食事についても教えてください。大阪マラソンの前日、当日は何を食べましたか。

近藤 前日の夕食は親子丼とうどん、おにぎりと炭水化物をいっぱい食べました。当日の朝はホテルでのビュッフェスタイルだったので、普段と変わらずに、ご飯、味噌汁、お肉、焼き魚、サラダ、果物とバランス良く食べました。

――朝食のご飯は多めですか。

近藤 いえ、特別に多くはなかったです。前日に炭水化物をたくさんとって、体の細胞に落とし込んでおくタイプです。

練習ではプレート未搭載の
3足を履き分ける

――次に、シューズについて聞かせてください。シューズを選ぶときのポイントや好きな履き心地はどのようなものですか。

近藤 ゆっくり走るときのシューズは、疲労回復のためにクッション性を大事にしています。最近はジョグに使えるシューズでも、カーボンプレートや、カーボンではなくてもプレートが入ったものがありますが、そうしたモデルはできるだけジョグのシューズとしては選ばないようにしています。プレートに頼らない走りをするためです。履き心地は、硬 めよりも軟らかいほうが好みですね。足底腱膜炎になったことがあるので、薄底や硬いソールのモデルを履いていると、痛みが強くなってきてしまいます。

――具体的には、練習によって何モ デルを履き分けていますか。

近藤 シューズは、アシックスの5足を履き分けています。レース用は、厚底カーボンシューズとスパイクです。アシックスの厚底カーボンプレートシューズには2種類ありますが、私はストライド走法で、ペースが上がるとストライドもどんどん伸びていくタイプなので、メタスピードスカイを履いています。トラックで5000mや1万mを走るときは、メ タスピード LD2というスパイクを使っています。

――練習での3足の履き分けを教えてください。

近藤 普段のジョグはノヴァブラスト5を、少しペースを上げるときやリズム良く走りたいときは、エボライドスピード3を履いています。また、筋力を強化したいときは、この 2足よりも少しソールが薄いハイパースピードを使っています。

――30㎞走などの距離走では何を履くのでしょうか。

近藤 基本的には、エボライトスピードですね。

――具体的に、ペースではどのように履き分けていますか。

近藤 ノヴァブラストは 5 分/㎞前後、エボライドスピードは4分/㎞~4分30秒/㎞ですね。スピード練習はトラックで行うときはスパイクを、ロードではメタスピードスカイを履いています。ただ、トラックでもインターバル走などのレースに向けた実戦的な練習では、動きや走り のリズムを試合に合わせるために、レース用のメタスピードスカイにします。

――クッショニングモデルのなかでも、ノヴァブラストを選んでいる理由は何ですか。

近藤 前に進む感覚があり、安定感もあるのが気に入っています。私は足関節が軟らかく、脚をひねりやすいので、安定感があるモデルを履くようにしています。


近藤流
カーボンプレートシューズの履きこなし方

――いつからカーボンプレートシューズを履き始めましたか。

近藤 大学2年生の頃ですね。ちょうどその頃に、いろいろな種類のカーボンプレートシューズが出始めました。それまでは、ソーティジャパンやターサージャパンといった薄底 を履いていました。

――カーボンシューズは薄底シューズと感覚が大きく違いますが、すぐに履きこなせましたか。それとも苦戦したでしょうか。

近藤 自分は苦労しましたね。もともと踵接地の走り方だったので、距離が延びるほどふくらはぎにすごく負荷がかかり、アキレス腱のバネを走りになかなか生かせませんでした。 カーボンプレートシューズを履きこなすには、体幹の安定が必要ですが、最初は姿勢をキープし続けることが 難しかったんです。それが体幹トレーニングのバネトレを続けているうちに、体幹を締めて、前重心で前傾 姿勢で走れるようになってきたら、タイムもついてくるようになったという感じです。

――走っている最中は、体を前傾させて前に乗りこんでいくイメージでしょうか。

近藤 前傾姿勢といっても、前に倒れることよりも、前に進むことを意識する感じです。慣性の法則で、ずっと動いていくのが一番いいんだと思うんですよ。走りの重心移動も同 じように、一定の位置、一定の高さでずっと動いていく。脚は、地面に着いた瞬間に体を支えるだけ。それをずっと意識して走ることが大事ではないかなと思っています。

――なるほど。イメージは湧くのですが、具体的には、体のどの部位をどのように意識すればいいのでしょうか。

近藤 まずは真っすぐ立って、ちょっと体を前に倒します。そうすると、体を支えるために自然に脚が出ると思うのですが、それを続けていくんです。体が倒れないように脚を出していくことで、無理なく前傾姿勢が維持できると思います。


普段使用しているNOVABLAST 5を手に
普段使用しているNOVABLAST 5を手に



Profile
こんどう・りょうた/1999年10月5日生まれ、長崎県出身。島原高校→順天堂大学。中学生から陸上競技を始め、高校3年時には国体に出場(5000m15位)。大学時代は4年時に箱根駅伝10区を走り、準優勝に貢献した。卒業後は三菱重工に入社し、2025年2月の大阪マラソンで初マラソンながら、2時間5分39秒(日本歴代5位)の好記録で日本人トップの2位になり、9月13日に開幕する世界陸上東京大会のマラソン代表に内定した。

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