2025年9月7日、日本大学アメリカンフットボール「有志の会」が、公式戦初勝利を飾った。2部リーグBブロック1次リーグ第1グループに所属する専修大学との一戦で、37-3で勝利した。QB川端迅(2年、千葉日大一)を中心とした攻撃陣が躍動し、序盤から一方的な展開を作り上げた。第4クオーター(Q)残り4分46秒の日大得点時点で、規定(前半終了時35点差、3Q終了時28点差がついた場合にランニングタイムに移行し、リードしたチームが得点した時点で試合終了)によりコールドゲームとなった。【写真/文:北川直樹】
日大○37-3●専修大(2025年9月7日@駒沢第二球技場)
「与えてもらったこの場所が当たり前じゃないと学生に伝えた」日大有志の会・須永恭通監督の試合後コメント廃部から約2年、有志の会として再出発日大アメフト部は2023年夏、部員による違法薬物事件が発覚し、同年12月15日に廃部となった。1940年創部以来、甲子園ボウル21度の優勝を誇った名門フェニックス(不死鳥)が84年の歴史に幕を下ろした。
廃部から3カ月後の2024年5月、薬物検査で陰性となるなど一定の条件を満たした元部員、新入生が後継チーム「有志の会」として活動を開始した。
2025年6月に関東学生連盟が臨時理事会を開き、大学側からの再加盟申請を承認した。理事会での審議、加盟校からのヒアリング等を経て、日大は2部リーグからの復帰が決まった。そしてこの日、日大のチームとしては、2022年11月27日の横浜国立大戦以来の秋季リーグ戦復帰、新組織「有志の会」としては初めての公式戦となった。メンバーとして70人の選手が登録された。
序盤から川端が躍動 パス攻撃で主導権握る両チームの戦術的な特徴が明確に表れた一戦となった。専修ディフェンスは日大のランプレーに対して粘り強く対応し、効果的にゲインを抑制。しかし、パス攻撃への対応に課題を抱え、QB川端の正確な投球に幾度となく抜かれる場面が目立った。一方、日大ディフェンスは専大の中央への走攻をほぼ完璧に封じ込め、相手攻撃陣に自由にプレーさせなかった。この守備の安定感が、攻撃陣の積極的なプレーコールを支えた。
キックオフ直後、専修陣30yd付近から攻撃を開始した日大は、川端QBのパスが冴え渡った。RB桑野稜也(1年=日大一)へのパス、WR青木峻(4年=駒場学園)への連続パスで着実にダウンを更新すると、WR森翔太郎(2年=千葉日大一)へのパスで敵陣15ydまで一気に前進。第1Q7分、川端からWR岩﨑充希(3年=佼成学園)へのコーナールートのタッチダウン(TD)パスが決まり、7-0と先制した。

その後も日大の勢いは止まらない。専修の攻撃を3アンドアウトに抑えると、川端から青木へのビッグゲインで敵陣40yd付近まで侵攻。さらに第1Q2分33秒にはWR冨士原優斗(3年=仙台育英)がパントリターンTDを決め、14-0とリードを拡げた。
第2Qに入ると、RB酒井佑昌(3年=箕面自由)のビッグゲインでレッドゾーンに侵入した日大は、10分29秒に川端から青木へのパスでTD。21-0と大きくリードした。
直後のキックオフリターンで専修がファンブル。これを日大がリカバーすると、WR岩﨑狙いのエンドゾーンパスでパスインターフェアを誘発し、ゴール前へ進んだ。しかし、K石上元輝(4年=日大鶴ヶ丘)の33ydフィールドゴール(FG)はブロックされた。その後酒井のビッグゲインから桑野のランでTDを奪い、前半を28-0で折り返した。
一方の専修は、QB間野佑聖(1年=駒場学園)らが奮闘。WR松井心芭(2年=駒場学園)へのパスで初めてのダウン更新した直後に、日大主将LB三ケ尻晃基(4年=大産大附属)にインターセプトを喫してしまい、なかなか攻撃のリズムをつかめなかった。
専修も意地を見せるもコールドゲームで日大が初勝利後半に入ると、専修もアジャストを好プレーにつなげる。WR平林拓己(4年=佼成学園)のビッグリターンから始まったドライブでは、QB福本陽生(3年=駒場学園)が中央のランプレーとロングパスを効果的に組み合わせ、着実にダウンを更新する。ゴール前まで進んで28ydFGで初得点を挙げ、28-3とした。
しかし日大も川端のオプションプレーのキープやスクランブルで応戦。冨士原へのパスやRB石川陽大(3年=日大三)へのピッチプレーでダウンを重ね、K石上のフィールドゴールで31-3と突き放した。

第4Qは28点差のためランニングタイムが適用される一方的な展開に。専修のパントフォーメーションからイリーガルパントの反則があり、日大がゴール前10yd付近でボールを得ると、川端から冨士原へのTDパスで37-3。試合時間残り4分46秒の段階で試合終了となった。
日大は川端を中心とした多彩なパス攻撃と、酒井、桑野らRBの力強い走りで専修を圧倒。「有志の会」として初の公式戦を大勝で飾り、新たなスタートを切った。
大勝を収めた一方、後半は川端QBのパスをWR陣が弾くシーンが目立った。せっかくの好機を活かしきれず、ダウン更新や得点機会を逃す場面も少なくなかった。勝負どころでの精度向上が今後の課題となりそうだ。それでも、新生日大の第一歩としては申し分ない結果。川端を軸とした攻撃陣の可能性を感じさせる内容で、今後の戦いが楽しみな仕上がりだった。