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2025-09-15

【相撲編集部が選ぶ秋場所2日目の一番】ひとまず上位陣安泰。休場明けの豊昇龍も苦手の髙安を退け連勝スタート

豊昇龍は、先手、先手と動いて苦手の髙安を寄り切りに降す。このまま一つひとつ、丁寧に白星を重ねていきたいところだ

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豊昇龍(寄り切り)髙安

100パーセント思い描いていた相撲ではなかったに違いないが、とにかく白星はつないだ。
 
休場明けの横綱豊昇龍が、過去の対戦成績3勝10敗(うち互いに1勝ずつ不戦勝あり)と苦手にする髙安を退け、連勝スタートとした。
 
過去の対戦成績でも分かるとおり、豊昇龍にとってはこの髙安は嫌な相手。パワーでは横綱相手にもひけを取らないだけに、豊昇龍としては、立ち合いで受け損なったり、がっぷり四つに組むことは避けたいところだ。
 
立ち合いは、ともに左差しを狙うような形になった。胸を合わせたくない豊昇龍はすぐに右を巻き替え、浅いモロ差しになったが、髙安も豊昇龍が右から掬うところを左上手投げを打ち返してしのぐと、右を巻き替え右四つに。一瞬、髙安のみが左上手を取っている形になった。
 
ここで上手を引きつけられ、がっぷりに持ち込まれると、横綱も危ないところだったが、豊昇龍はすぐに動いて右下手投げ、髙安の左上手投げとの打ち合いを互いにこらえ、逆側の攻防となった瞬間に、豊昇龍は突きにきた髙安の右手をはね上げ、モロ差しに成功。あとは落ち着いて体を寄せて、青房下に寄り切った。
 
豊昇龍としては、内容的には楽な運びではなかったが、とにかくがっぷりを避けるべく、先手、先手で動いて攻め切った、という相撲になった。
 
取組後は、「先手、先手で動く意思が見えました」という問いに「まあよかったと思います。悪くないと思います」と答えた後、「(状態は)普通です。(場所前の調整は)いつもちゃんとやってるんで。しっかり一日一番、全力出していこうと思います。以上」と、余計な話は一切せず、自ら囲み取材を打ち切った。
 
余裕があるときは脱線トークに乗ることもある豊昇龍だが、さすがに休場明けの今場所は、いらない話をしている場合ではない、ということなのだろう。それは今場所の余裕のなさを示す一面もあるが、一方で、とにかく今は雑念、雑音を封じて目の前の一番に全集中するときだ、という強い意志も感じる。
 
初日、2日目と、内容は万全とは言えないが、とにかく星の上では連勝で東横綱の大の里と併走しており、ここまでの豊昇龍は横綱としてあるべき形をつくっているとは言える。
 
今場所の豊昇龍には、内容は苦しかろうが何だろうが、とにかく星を拾って、大の里との併走を保ち、最後に直接対決に強いというアドバンテージを生かす形に持っていくという形を目指すのが優勝への唯一最善のプランとなるだろう。ある意味では、それは西の横綱の宿命ともいえるが、休場明けの今場所は、特にそういう戦いになる可能性が高い。
 
3日目は「あしたはやってやりますよ」と気合十分だった伯桜鵬との一戦が待つなど、まだまだ楽ではない戦いが続くが、ここぞの場面で気持ちの強さを何度も見せてきた横綱だけに、その重圧を一日一日、はね返していく姿を見せてほしいところだ。
 
この日は三役以上の取組ではすべて番付上位が勝ち、安泰の一日。黒星スタートだった若隆景、安青錦も初日を出し、横綱・大関陣と関脇霧島は連勝。とりあえず、役者がそろってきた感じはあるが、序盤で上位との対戦がある安青錦、玉鷲、伯桜鵬あたりにはまだまだ波乱を生み出す可能性も感じられ、「上位充実、平穏の場所」となるかどうかは、まだ何とも言えない気もする。

文=藤本泰祐

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