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2025-09-18

【相撲編集部が選ぶ秋場所5日目の一番】霧島が安青錦に敗れ黒星。全勝は横綱豊昇龍ただ一人に

霧島は安青錦に送り出されてついに1敗。優勝争いの上でも痛いが、すっかり苦手をつくってしまったように見えるという意味でも、厳しい黒星だ

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安青錦(送り出し)霧島

きのうまで、初日から白星を重ねてきた二人のうち、一人に初黒星がついた。崩れたのは、関脇の霧島だ。
 
低い安青錦の体勢を突っ張って起こそうとしたが果たせず。結局左下手をつかんで頭をつけるという、相手得意の体勢を許してしまい、何とか打開しようと右を巻き替えにいったところを、タイミングよく出し投げを打たれ、そのまま後ろに回られて送り出された。場所前に痛めた右手首のケガの影響もまったく感じさせることなく、きのうまでは力強く、うまい相撲でトップを並走してきただけに、痛い黒星だ。
 
そして、霧島にとってのこの敗戦、もちろん優勝争いの上でも痛いが、それ以上に、内無双で敗れた先場所に続き、安青錦に対して全く勝ちへの糸口が見いだせずに連敗、ということになってしまったのは厳しいことのような気がする。

「相手は低くて、強かった」と、取組後に霧島は言ったが、ちょっとこの相手に対しては、はたから見ていても、どう取ったらいいものか、番付が上の霧島のほうが、むしろ困っているように見える。
 
もともと、霧島は低い体勢と、タイミングのいい横への動きが武器の力士。それが、自分よりなお低く、前傾姿勢を崩さない、かつ、一気に突き起こせるほどパワーに差があるわけでもない、そして突っ込んでくるわけでもないので、腕を手繰ったりイナしたりの横の動きも使いづらい、というこの相手に、打つ手が見当たらなくなっているように見受けられるのだ。これから毎場所当たるのは間違いないだけに、この相手への対策を見つけられるかどうかは、今後、大関復帰を狙う上で、霧島にとっては大きなポイントになってくるのではないか。

霧島が巻き替えにきたところ、タイミングよく出し投げを打つ安青錦。低く、うまいその相撲は上位の力士にとっては脅威だ
 
一方、「自分らしいんじゃないですか。変なことをやらずに我慢できた。流れは自分じゃない。(出し投げは)稽古場でやったことがある。感覚でやっているんで、狙ったわけではない。体が動いている」と安青錦。「先場所よりちょっと成績が悪いので、皆さんに喜んでもらえるように、精いっぱい自分の相撲を取っていきたい」と、中盤戦以降に向けて決意も新ただ。トップを走る横綱豊昇龍とは星2つの差があるので、まだ自身が優勝争いどうこうという立場ではないが、豊昇龍との対戦を残しているだけに、関脇以下の中では優勝争いの最大のキーマンであることは間違いない。
 
豊昇龍は、この日は対戦成績で負け越している熱海富士に、立ち合いから突いて出て圧勝。もちろん、飛んだり跳ねたりはまずしてこない相手、ということはあるが、今場所では一番の、手応えのある攻める立ち合いを見せた。
 
これまではあまり余裕が感じられない印象もあった今場所だが、あるいは、大の里に対して星1つのリードができたことが、思い切った攻めの相撲につながってきているところもあるのかも。もしそうだとすれば、ここからグッと変わってくる可能性もあるが……。とりあえず、あすは波乱の可能性もはらむ王鵬戦。これは見ものだ。
 
トップが1人だけになり、優勝争いの焦点は、豊昇龍がどこまで無傷で走れるか、そして大の里以下、11人の1敗勢の中から誰がピタッとついていくか、に移ってきた。そろそろ見えてきた折り返し地点では、果たしてどんな形勢になっているだろうか。

文=藤本泰祐

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