close

2025-09-23

【相撲編集部が選ぶ秋場所10日目の一番】両横綱譲らず、豊昇龍は10連勝。1敗も1人となり、マッチレースの流れ加速

豊昇龍はまったくスキのない取り口で若元春を掬い投げに仕留め、初日から10連勝。優勝争いは、このまま大の里とのマッチ―レースになっていくのか……

全ての画像を見る
豊昇龍(掬い投げ)若元春

いよいよマッチレースか。
 
全勝の豊昇龍、そして1敗の大の里の両横綱は、この日も譲らず。大の里は琴勝峰、豊昇龍は若元春と、ともに先場所敗れている相手を危なげなく退けて、それぞれ白星を伸ばした。
 
一方で、もう一人1敗で来ていた正代は、好調同士の隆の勝との一番で、受けに回って押し出され、2敗に後退。これで全勝が豊昇龍、1敗に大の里、2敗にこの日勝ち越しを決めた小結安青錦、平幕の隆の勝、竜電、そしてこの日敗れた正代の4人という情勢となった。平幕勢はやはりこれからつぶし合いや上位との対戦があって厳しいと考えると、優勝争いはほぼ両横綱のいずれか、安青錦はこの後、豊昇龍に勝てれば参入の権利を得る、というような情勢となってきた。
 
両横綱のうち、先に土俵に上がったのは大の里。この日は相手の出方を見るという考えがあったのかどうか、タイミングとしては立ち遅れた。このためやや上体が立ってはじかれ、右は差せず。しかし、きのうに続いて落ち着きはあった。左でおっつけ、最後は相手の左腕にあてがってのイナシ。これで琴勝峰に横を向かせ、あとは余裕を持って突き出した。
 
そして結びで土俵に上がった豊昇龍。こちらは最初から最後までスキがなかった。立ち合いは先場所に続いて張り差し。先場所はそのあとイナされて体が離れた後、組み負けて左四つになり敗れたが、今場所は後の攻めも厳しかった。
 
立ち合いで若元春の右足が少し滑ったような感じもあって、今場所は完全に豊昇龍が当たり勝ち。そして右はしっかり固めて、若元春の左差しを許さず差し勝つ。逆側は前傾姿勢で若元春の右の突きの手を伸ばすことを許さず、そのまま差してモロ差し。土俵際まで攻め、右の差し手から十分掬ったところで、相手が残そうとする反動を利用して土俵中央に掬い投げで投げ捨てた。

「張られて足が止まっちゃった。止められて浮いてしまった。格上、横綱とやるときは先に攻めていかないと。なかなか先手を取らせてくれない」と、若元春はやや“お手上げ気味”のコメントだった。
 
この日に関しては、両横綱の出来は、豊昇龍◎、大の里△といった感じか。豊昇龍は文句なしの出来、大の里はきのうに続いて落ち着きと左からの攻めのよさは見せたが、立ち合い自体はさほど良くはないので、このあたり、どう修正できるか。きのうのこのコラムでは、「1差というほど差はないのでは」と書いたが、この日は豊昇龍が内容面でも押し戻したように見える。
 
そうなると残るポイントは、豊昇龍だけが残している安青錦戦がどうなるか。安青錦はこの日は右からの厳しい攻めを見せて伯桜鵬に左差しを許さず圧勝。こちらも6連勝とノッてきているので、本当に楽しみな一戦になる。あすは豊昇龍は先に霧島戦が組まれたので、おそらく安青錦戦は12日目になりそうだが、優勝争いは、まずはここを終わってどういう情勢になっているか、ということになりそう。
 
あすは2敗同士の取組が2番あるので、2敗勢のうち2人が後退必至、両横綱は、今の内容を見ていると、落とす可能性がそうあるとは思えないが、それでももちろん油断は禁物だ。このまま、令和2年3月場所(この時は白鵬と鶴竜)以来の、両横綱マッチレースの優勝争いになだれ込んでいくのかどうか。楽しみに見守っていきたい。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事