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2025-10-06

【アメフト】「アップセットが頻繁に起こるリーグへ」ノジマ相模原、富士通を破る(2)

【ノジマ相模原vs富士通】秋季リーグで富士通戦勝利を果たし喜ぶノジマ相模原の選手たち=Photographs by Kohei SAEKI©Official RISE pics

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アメリカンフットボールの国内最高峰・Xリーグの「X1 スーパー」で、大きなアップセットがあった。ノジマ相模原ライズが、富士通フロンティアーズを秋季リーグ戦で破った。今、Xリーグに何が起きているのか。後編では、ヘッドコーチの話をもとにまとめた。

ノジマ相模原ライズ○29-28●富士通フロンティアーズ
(2025年9月14日@富士通スタジアム川崎)

 富士通・山本HC「今の我々はチャレンジャー」
富士通の山本洋HC,後方はオフェンスの中核、トラショーン・ニクソン=撮影:小座野容斉

富士通の山本洋HC。後方はオフェンスの中核、トラショーン・ニクソン=撮影:小座野容斉

 富士通の山本洋HC(ヘッドコーチ)は冷静だった。「秋シーズンに、競り合いのゲームで敗戦するということに、慣れていない選手が多い。だから、『これでライスボウルに行く道が閉ざされたわけではない』『今回できていなかったことを、次の試合に向けてしっかりやっていこう』という話をしました」という。

 ただ「気持ちを切り替えて」という言い方はしていない。それは強いチームが番狂わせを起こされた場合の言い方。山本HCには、ノジマ相模原戦の結果はアップセットではなく、現在のチーム力の反映だという認識がある。

 「今のフロンティアーズのチーム状態は、過去にライスボウルで優勝してきたシーズンとは違うと、私自身は考えています」

 「勝ち切れないとか、1対1で負けるというシーンが出てきている。選手がもっともっと成長していかなければいけない」と、言葉は穏やかながら、危機感にあふれている。

 これは今に始まったことではない。今年1月のライスボウル後の記者会見、あるいは今春のパールボウルトーナメントの中で、折に触れ、山本HCは、若い選手や、控え選手など、新しい力の台頭が必要なのに、それが起きていないことを訴えてきた。

 負傷者も多い。必ずしも試合中の負傷ばかりではない。企業チームである富士通は、他のチームと違って、ウィークデーに半日、練習日がある。それがシーズンが深まるにつれ、プレーの熟成度となって現れる強みとなっているが、他方で、練習であってもプレー機会が多ければ負傷のリスクが高まる。

 さらに、フラッグフットボールの日本代表候補に選ばれているため、アメフトの練習が減っている選手が主力の中に何人もいる。富士通としては全面的にフラッグフットボールに協力しているので仕方がない。

 山本HCは「スタータークラスと、控えメンバーがローテーションを組んで回せるほどの戦力のデプスが今の我々にはない」という。それがプレーの幅が限定されたり、特定の選手ばかりにボールが集まったりすることにつながっている。

 「3連覇していた時のチーム力とは、今は違います。例えば、今、パナソニックと試合をやったとして、選手たちがあの強靭なフィジカルに対抗できるのか。1対1で止めきれるのか。ボコボコにやられてしまうのではないか」という危機感がある。レギュラーシーズンは折り返し。残りの期間でどうやってチームを、選手たちを成長させていくのだろうか。

 「今の我々は王者ではなくチャレンジャー」

山本HCはそういう認識を持っている。


ノジマ相模原・城ヶ滝HC「今のXリーグに、楽に勝てる相手はいない」
ノジマ相模原の 城ヶ滝一朗HC、後方は石井光暢GM=撮影:小座野容斉

ノジマ相模原の城ヶ滝一朗HC。後方は石井光暢GM=撮影:小座野容斉

 9月27日、オール三菱ライオンズが、16-14で東京ガスクリエイターズを破った。14-14の最終盤で、オール三菱ディフェンスが、セーフティーで決勝点を挙げた。

 第1節でIBMビッグブルーに34-9で完勝した東京ガス。そして第2節に、そのIBMに14-45で敗れたオール三菱。かってオール三菱と東京ガスはライバル関係にあったとはいえ、今はチーム力にはっきりとした差があるはずだった。その予想を覆したアップセットだった。

 オール三菱の林顕HCは、「ライズさんの勝利は他チームにとっても嬉しいこと。同じようなことができるように、頑張りたい思った」と、語った。アンダードッグのチームが、強いチームに勝つのは困難だが、ライズの勝利に勇気づけられたという。

 その翌日の9月28日、ノジマ相模原ライズは、富士フイルム海老名ミネルヴァと対戦し、苦戦を強いられた。序盤、二つのターンオーバーを喫すると、富士フイルム海老名の新米国人QBシェバン・コルデイロのパスで攻め込まれた。

 前半終了時は7-13とリードされ、最終スコアも29-13、リーグの順位決定に影響する20点差をつけるには至らなかった。

 城ヶ滝一朗HCは「甘いんですよ。まだまだウチは」という。

 「見に来てくれたお客さんの、7,8割は『富士通に勝って、慢心した。気が緩んだ』と思うでしょう。決してそんなことはなかったし、絶対にそういう風に思われたくないから、頑張ろうという話をしていたのですが」

そして、「今のXリーグには、弱いチームはいなくなってきた。少なくとも楽に勝てる相手はいない」と、次戦に向けて厳しい表情を崩さなかった。

 米国のNFLのように、アップセットが頻繁に起こるリーグへ、Xリーグが変わっていく過程にあるとまでは、断言できない。だがその萌芽はいたるところで見られるようになったのは確かなようだ。

【ノジマ相模原vs富士通】=Photographs by Kohei SAEKI©Official RISE pics
【ノジマ相模原vs富士通】富士通はWR木村にボールを集中した=Photographs by Kohei SAEKI©Official RISE pics

【ノジマ相模原vs富士通】チームを牽引するノジマ相模原のQBパランデック=Photographs by Kohei SAEKI©Official RISE pics
【ノジマ相模原vs富士通】チームを牽引するノジマ相模原のQBパランデック=Photographs by Kohei SAEKI©Official RISE pics

【小座野容斉】

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