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2025-10-10

【陸上】国スポ・少年男子共通800mで洛南高・渡辺敦紀が日本人トップ「インターハイに出られなかった悔しさをここにぶつけるしかなかった」

少年男子共通800m2位の渡辺。この種目でインターハイに出場できなかった悔しさを晴らした(写真/黒崎雅久)

10月3日から7日までの5日間、滋賀県の平和堂HATOスタジアムで行われた国民スポーツ大会(国スポ)。大会最終日の7日、少年男子共通800mで渡辺敦紀(京都・洛南高3年)がフェリックス・ムティアニ(山梨・山梨学院高3年)に次ぐ1分49秒23で2位に入った。

仲間の応援が底力を引き出してくれた

「インターハイ(800m)に出場できなかった悔しい思いを、ぼくはすべてここにぶつけるしかなかった」と話すのは、国スポの少年男子共通800mで力走した渡辺だ。

予選で1分50秒15のシーズンベスト、決勝で1分49秒23の自己ベストをマークして2位に。ケニア人留学生のムティアニには勝てなかったが、「最低限の目標にしていた日本人トップを取れて、久しぶりにうれしかったです」と笑みを浮かべた。

1分45秒10の快速タイムを持つムティアニが1周目から独走。400mを53秒で通過した。2周目、2位争いが激しくなり、インターハイ1位の菊池晴太(岩手・盛岡四高3年)と同2位の鈴木大智(愛知・中京大中京高3年)が抜け出しにかかる。渡辺は体一つ分ほど間隔を開けられた。

「厳しいな、無理かな」と弱音がよぎりそうになったとき、スタンドから渡辺の名をさけぶ京都チームの応援が聞こえた。「今季800mで実績のないぼくを選んでくれた。その期待に結果で応えたい」。振り返るとそんな思いが底力を引き出してくれた。

残り100mを切って、渡辺は菊池と鈴木に迫り、紙一重のタイム差で先着した。「(洛南高の)柴田(博之)先生から『800mはレースがどう動くか分からない。レースは生きものなんだよ』とよく言われていたので、落ち着いていられたことは大きかったと思います」と渡辺。結果が確定すると、晴れやかな表情でスタンドに手を振った。

取り戻した自信

昨年、渡辺はインターハイで1分49秒27をマークして3位に。優勝した落合晃(滋賀学園高・滋賀、現・駒大1年)は高校を卒業し、2位だったムティアニは今季のインターハイは800mにエントリーしなかった。渡辺は、自分が優勝するんだという決意を固くした。

しかし、インターハイ都道府県予選の京都大会の準決勝で“まさか”が起きた。渡辺を先頭に1周目を57秒で通過したところまでは順調だったが、その後、失速。組最下位となり、800mでのインターハイに出場する道が閉ざされた。

直後は放心状態だった渡辺だが、インターハイには400mと4×400m(マイル)リレーに出場。400mでは予選で46秒96の好タイムで走り、マイルリレーでは洛南高のマイルリーダーとして3走を担い、3分07秒25の高校新Vに貢献した。

悔しさと情けなさ。意地と奮起。柴田先生や仲間からもらった励まし。いいことも、そうでないことも、渡辺のシーズンにはたくさんの感情が入り混じった。「今季最後の800mで、いい締めくくりができたんじゃないかなと思います。これからも800mを専門種目にして頑張ります」。大きな自信を取り戻した渡辺。来季から高校生同士のレースより格段に激しくなる学生・社会人の800mの世界に飛び込み、鍛えられていく。

文/中尾義晴 写真/黒崎雅久

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