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2025-10-10

【アメフト】強い法政が戻ってきた 多彩なランゲームで東大を圧倒

【法政vs東大】前節の不調を覆すパスとランでオフェンスの爆発力を演出した法政大QB齊藤=撮影:北川直樹

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 関東大学アメリカンフットボールTOP8第4節、法政大学と東京大学の試合は、法政大が東大を49-28で下した。法政は中川達也(4年=明治学院)と小松桜河(4年=日大三)の両RBに加え、大型QB齊藤空大(4年=駒場学園)のキープを組み合わせた多彩な攻撃で東大ディフェンスを圧倒。東大は後半にQB林新太郎(4年=開成)を投入し、得点を重ねて反撃したが及ばなかった。【写真/文:北川直樹】

○法政大学オレンジ 49-28 ●東京大学ウォリアーズ
(2025年10月4日@富士通スタジアム川崎)

 一進一退の攻防も、第2Qに法政が抜け出す

法政は最初のドライブは3&アウトに終わり、東大が自陣からの攻撃を開始。QB田中昴(3年、灘)がランとパスを織り交ぜながら着実に前進。ゴール前1ydまで到達すると、8分26秒、田中がねじ込みTD。7-0とリードを奪う。
しかし法政はすぐさま反撃。ハーフライン付近から攻撃を開始すると、QB齊藤が的確にドライブを進める。10分、齊藤からWR高津佐隼世(4年、佼成学園)への6ydTDパスが決まり、7-7の同点に追いつく。
東大は次のドライブでファーストダウンを更新するも、法政ディフェンスの圧力に苦しみパントに追い込まれる。法政はハーフライン付近から攻撃を再開するが、このドライブは得点に結びつかず第1Qを終える。
第2Qに入り、法政の攻撃リズムが加速する。RB小松を中心としたランゲームで東大ディフェンスを押し込むと、6分、小松が6ydのランでTD。14-7とリードを奪う。
東大も反撃して攻め込み、1st&ゴール8ydの好位置を得る。しかしここで東大にフォルススタートの反則が出て後退。その直後のプレーで、東大がオプションプレーを試みるもファンブル。法政がリカバーし、流れが法政に傾く。
法政はRB中川のランで前進。11分、齊藤が2ydをねじ込みTD。TFP成功で21-7と前半を折り返す。
東大は前半で田中を中心に攻撃を展開したが、ファーストダウンはわずか6回にとどまった。法政ディフェンスのライン圧力が効き、思うように前進できなかった。



【法政vs東大】法政RB中川と双璧の活躍を見せた小松。圧倒的なクイックネスでydを稼いだ=撮影:北川直樹

 後半、東大は意地の反撃も法政が圧倒

後半最初のシリーズ、法政ディフェンスが東大を3&アウトに抑え込む。法政は自陣からの攻撃を開始。ランでリズムを作ると、中川が中央を突破し66ydの豪快なランTDを決め、28-7に。中川のスピードとパワーが存分に発揮された決定的な一撃だった。
東大はQBを林に交代。自陣46yd付近から攻撃を開始すると、1分45秒、林がWR古屋大翔(4年)へパスを投げ込み、49ydのTDパスが決まる。28-14と2TD差に詰め寄る。
しかし法政はペースを緩めない。自陣33yd付近から攻撃を開始すると、中川のランとスクリーンパスで前進を続け、3分、齊藤からWR佐藤祥秀(2年、佼成学園)へのTDパスが決まる。35-14と再びリードを広げる。
続く東大のドライブは3&アウト。法政は再び攻撃権を得ると、中川のランとスクリーンの組み合わせで敵陣7ydまで到達し1st&Goalを獲得。6分、齊藤がキープでTD。TFP成功で42-14と大きく引き離した。
第4Q開始直後、法政は中川の中央ランで1st更新を重ねると、9分過ぎには小松のランで敵陣15ydまで攻め込む。11分に齊藤からWR須加泰成(4年)への7ydのTDぱパスが成功し、49-21とダメ押しの得点を挙げる。
しかし東大は諦めない。7分、東大P神田泰誠(3年、六甲学院)のパントを小松がリターンし、法政が自陣18ydから攻撃を開始。しかし6分、齊藤のパスを東大がハーフライン付近でインターセプト。攻撃権が渡る。
東大はこの好機に林が鮎澤航之介(2年)へのパス成功で敵陣へ。林自身のキープで約5yd前進すると、続いて林からWR山﨑蓮(3年)へのパスが決まり、敵陣25yd付近で1st更新。林からRB太田明宏(4年)への13ydTDパスで49-28と追い上げた。
残り2分、法政は敵陣34ydから攻撃を開始。1分40秒、今手のランで1st更新し敵陣20ydへ。終盤、法政はFGトライを試みるも失敗し、法政が49-28で勝利を収めた。


【法政vs東大】本格復帰の法政RB中川は抜群の走りでグランドアタックを担った=撮影:北川直樹

RB中川の66ydTD、QB齊藤の多彩な攻撃が光る

法政はRB中川が10回のキャリーで176yd、1TDを記録した。特に第3Q開始直後の独走TDは、法政がリードを決定づける豪快なランだった。中川は怪我からの本格的な復帰ながら、スピードとパワーを兼ね備えた走りで東大守備陣を翻弄し続けた。
RB小松も7回で62yd、1TDと安定した走りを見せ、RB今手太陽(1年=駒場学園)も随所で効果的なゲインを重ねた。180センチ100キロのQB齊藤は7回のキャリーで66yd、2TDと自らの走りでも貢献。さらにパス12/15、178yd3TDと、パスでもWR高津佐、佐藤、須加に投げ分ける多彩な攻撃を展開した。
法政のランゲームは32回で349yd(平均10.9yd)を獲得し、トータルオフェンスは527ydに達した。OLがラインスクリメージで押し勝ち、RB陣がセカンダリーに到達する場面が増えた。ファーストダウンは24回を記録し、3rdダウン成功率は80%(4/5)と高い数字を残した。

一方の東大は、前半のQB田中が先制TDを奪ったものの、2Qのゴール前でのファンブルが痛かった。後半から投入されたQB林は、パス5/9で78yd2TD獲得。WR古屋への49ydTDや、TE太田へのパスTDで反撃を試みた。RB米田健人(4年、西大和学園)も13回で87ydを記録したが、TDは奪えず。ディフェンス陣は、法政の多彩なランゲームに対応しきれず、349ydのラッシングを許した。

【法政vs東大】法政エースWRの高津佐はワンハンドキャッチなどミラクルな勝負強さで貢献=撮影:北川直樹
【法政vs東大】法政エースWRの高津佐はワンハンドキャッチなどミラクルな勝負強さで貢献=撮影:北川直樹

■チーム成績


ファーストダウン: 法政大学 24、東京大学 14
総獲得yd: 法政大学 527、東京大学 372
ラン獲得yd: 法政大学 349(32回)、東京大学 158(31回)
パス獲得yd: 法政大学 178、東京大学 214
パス成功率(試投/成功/被INT): 法政大学 16/12/1、東京大学 20/11/0
3rdダウン成功率: 法政大学 4/5(80%)、東京大学 5/9(56%)
4thダウン成功率: 法政大学 0/0、東京大学 1/1(100%)
反則: 法政大学 2回5yd、東京大学 6回48yd
ファンブル(回数-喪失): 法政大学 1-0、東京大学 2-1
ボール所有時間: 法政大学 21分21秒、東京大学 26分39秒

■個人成績(主要選手) 

【法政大学】
RB中川達也: 10回ラン 176yd 1TD
RB小松桜河: 7回ラン 62yd 1TD
QB齊藤空大: 7回ラン 66yd 2TD、パス12/15,178yd,3TD
WR高津佐隼世: 5回レシーブ 117yd 1TD
WR須加泰成: 1回レシーブ 13yd 1TD
K髙城颯真: TFP 7/7
【東京大学】
QB田中昴: パス5/10 131yd 1TD、6回ラン 24yd 1TD
QB林新太郎:パス5/9 78yd 2TD、4回ラン 25yd
RB米田健人: 13回ラン 87yd
TE太田明宏: 4回レシーブ 32yd 2TD
WR古屋大翔: 1回レシーブ 49yd 1TD
K舟本寛太朗: TFP 4/4

「この流れを止めないで、日本一まで行く」

法政大学 菅野洋佑ヘッドコーチの試合後ハドル(選手への語りかけ)

この2週間、俺たちは本当に強いのか、どこで自信を失ったのかを考え続けてきた。今日の結果は、その問いへのひとつの答えだと思う。
いま一敗。日本一を目指すなら、ここからは落とせない。次は立教、その先に早稲田。どちらも負けられない。
喜ぶのは今日だけにしよう。今日はしっかり喜ぼう。この苦しく長い2週間で積み上げたものが、形になった。そこは胸を張ろう。
ただし、ここで止まらない。すぐ切り替えて次へ進む。ここで負けたら日本一は遠のく。勝敗の一つひとつの重みは、もう身にしみて分かっているはずだ。
今日はオフェンスもディフェンスもキッキングも、内容は良かった。だからこそ反省もやる。何が足りなかったか、何をもっと良くできるか、全員で明確にしよう。次の相手の立教は強い。俺たちも相手も、一週間で変わる。時間は少ない。この一週間をどう過ごすかを本気で考えよう。
メリハリをつける。今日は楽しんでも、明日、明後日は本気でやる。オフの使い方を計画しよう。フィルムを見よう。約束だ。立教まで時間はない。選手一人ひとりが力を出し合えば、必ず勝てる。
この流れを止めないで、日本一まで全員で行く。前節の敗戦からの2週間で得たものを、次の試合にすべてつなげよう。

【法政vs東大】法政大菅野HCは熱心に選手に語りかけた。掴んだ良い流れを次のゲームにつなげたい=撮影:北川直樹

「法政の文化の中で選手が最大限発揮」

法政大学 濱部昇オフェンスコーチ(コーディネーター)の話

今日は、春の練習試合の時から相手の得点力は把握していましたので、ボールを持ったらつなぐ、継続するという方針で臨みました。ここまで一発の大きなプレーが少なく、コーチングやインストールの面に課題があったと受け止めています。その反省から、プレーの絞り込みと練習全体の組み直しを行い、再現性を高めて試合に入れたと思います。その結果として、今日はビッグプレーも出ました。

夏にレップを重ねて精度は上がっていましたが、直近は練習の組み方の影響でランのレップが不足していました。明治戦でその弱点が表面化しましたので、今週は重点的に是正しました。天候が厳しい時間帯は私のプレーコールに課題もありましたが、全体としては修正が機能したと捉えています。

中川が本格的に戻ってきたことが大きな追い風になりました。サイズとスピードがあり、パワフルでダイナミックに走ってくれます。比較的小柄な選手が多いバックフィールドの中で、彼のサイズは貴重です。現在は中川・小松・齊藤(QBキープ)の三枚で回す形が機能しており、コールも絞れて運用しやすくなりました。齊藤もシーズン前のけがから調子が上がり、彼らしいプレーが増えています。

私は早稲田でも指導してきましたが、法政は文化やカラーが異なると感じています。能力の高い選手が多く、フットボールIQも高い一方で、キャンパスとグラウンドが離れているなど、学業との両立や限られた練習時間への対応が求められます。私の役割は自分の色を押しつけることではなく、法政の文化の中で選手がやりたいフットボールを最大限発揮できるよう支えることだと考えています。

コーチング体制については、オフェンスはコーチ陣全員で作っています。外からは私がコールしているように見えるかもしれませんが、役割を分担しながら全員で組み立てています。肩書はオフェンスコーチで問題ありませんし、肩書そのものに強いこだわりはありません。法政に関わるようになった経緯は、Xリーグでの縁があり、平日にコミットできる体制が整ったためです。現在は平日二日チームに入り、その他の時間で準備を進めています。まずは今日をしっかり振り返り、次戦に向けて準備を進めます。


【法政vs東大】今年法政大のコーチに就任した濱部・元早大監督は生き生きとしたオフェンスを作り上げている=撮影:北川直樹

「総じて、連鎖的に力負けした」


 東京大学 森清之ヘッドコーチの話


今日は力負けでした。特にディフェンスはランもパスも止めきれず、糸口が見つからなかったです。オフェンスはなんとかやろうとしましたが、ボールを落としてしまうなど惜しいミスが出てしまいました。
うちはリスクを取るプレーも使います。フレックスボーンでのバックワードパスのように、息が合わないとミスにつながる局面はどうしてもあります。打ち合いの展開になれば相手のミスでこちらにもチャンスが生まれますが、今日はそういう流れにはなりませんでした。
相手のフロントは攻守ともに強かったです。うちのディフェンスラインはフロントで力負けしていましたし、パスも通されました。QBの齊藤選手の走りは非常に強くて、なかなかタックルできませんでした。RB中川選手もスピードがあり、誰が出てきても法政のバックは速く、強かったという印象です。総じて、連鎖的に力負けした試合だったと思います。
順位のことを考える状況かもしれませんが、私たちはそういう狙い方ができるチームではありません。とにかく目の前の試合にベストを尽くすだけです。次も一つひとつ積み重ねていきます。


【法政vs東大】東大・森HCは、力負けを素直に受け入れていた=撮影:北川直樹

【北川直樹】

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