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2025-11-15

【相撲編集部が選ぶ九州場所7日目の一番】髙安のパワーもしのぎ切る。安青錦が1敗守って大の里を1差追走

髙安の攻めを、力強く、そして機敏な動きでしのぎ切り、最後は寄り切って白星を挙げた安青錦。この後も内容のある相撲を積み重ねていければ、また大関への道が見えてくる

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安青錦(寄り切り)髙安

これはもしかしたら、「大関の資格あり」の印象を持たせる、強い相撲だったかもしれない。
 
新関脇の安青錦が、髙安のパワー満点の突き、寄り、投げの攻めをしのぎ切り、最後は投げの打ち合いから寄り切って白星をゲットした。
 
過去、この安青錦と髙安の対戦成績は1勝1敗。7月場所で低く食いつきかけた安青錦を髙安が豪快な上手投げで投げ捨てたのが印象深い。
 
立ち合いからの流れは、いつもの対戦と同様、まず髙安が突いて起こしにいき、安青錦が上体を起こされまいと耐える攻防となった。今場所も安青錦は押されながらもなんとか耐え抜き、髙安が左差しに来たところ、右ハズで反撃に出る。
 
すると髙安は今度は右四つ狙いに作戦変更、のぞかせた右から起こすと、相手の手をはね上げてモロ差しとなり、寄り立てた。
 
安青錦は俵に詰まり危なかったが、辛くも左に回り込んで残し、いったん離れる。
 
向き直った髙安は再び突っ張り。ここで安青錦が機敏に突いてきた相手の左手を手繰り、左を差して頭をつけた。髙安は手を伸ばして右上手。先々場所決めた上手投げに勝負をかけた。
 
安青錦は左ヒザを相手の右ヒザの宇良に当てて何とか防御、切り返し気味に攻めて左下手投げ、最後は髙安の上手投げとの打ち合いになったが寄り切った。

「名古屋で負けているので、警戒していった。立ち合いからの流れはよくなかったが、体はしっかり動いている。勝手に動きました」

と安青錦。危ない場面もあったが、むしろ髙安のパワー満点の攻めにも完全には崩されず、しのぎ切った相撲は、土俵際と突き合いの中での動きのよさ、力強さを強く印象付けるものになったような気がする。
 
5日目に1敗を喫し、今場所後に大関の声がかかるか、という期待に関しては、あと1敗ぐらいしかできなくなったので、かなり難しい状況ではあるが、13勝にラインを設定した場合、番付が下の力士に一番も落とさず、対横綱大関戦を2勝1敗でいけばクリアできるので、まだ絶望というわけではない。
 
あすは関脇同士で王鵬戦。安青錦は5日目に相手の立ち合い変化に敗れた後、6日目、7日目は少し受けるような立ち合いになっている感じもあり、力のある王鵬にまた同じ立ち合いをしてしまうようだと危険もあるが、そのあたりを修正していけるか。なんとか横綱・大関との対戦まではもう一つも落とさず、大関取りの可能性を手繰り寄せたいところだ。
 
優勝争いのほうは、7日目を終わって、大の里がただ一人全勝、1敗は安青錦と義ノ富士、藤ノ川の3人になった。つまり情勢的には、安青錦がこのまま白星を重ねて大関への可能性をキープしていけるかどうかは、今場所の優勝争いの興味が終盤までつながることとほぼイコールとも言えるわけだ。
 
上の番付のためにも、今場所の盛り上がりのためにも、安青錦には負けられない戦いが続く。この日のような強い一番を見せ続け、そこを乗り越えられた時、周囲からは自然に「これは大関だ」の声が、より強く上がってくるはずだ。

文=藤本泰祐

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