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2025-11-16

【相撲編集部が選ぶ九州場所8日目の一番】41歳玉鷲あと一歩! 大の里が土俵際の叩き込みで全勝ターン決める

最後は左足一本で残されて叩き込まれ、41歳玉鷲の挑戦はわずかに及ばず。大の里は横綱昇進後初の全勝ターンで勝ち越しを決めた

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大の里(叩き込み)玉鷲

「あと、何センチでしたか?」

取組後、記者団に向けた玉鷲の言葉だ。

いや惜しかった。本当にあと数センチだった。これがこの日41歳の誕生日を迎えた力士かと思う力強い押しを見せた玉鷲だが、大の里に左足一本で残されて叩き込まれ、自らの持つ最年長金星の記録の更新を逃した。

それでも、「(相手が)叩くのはビビっているということ。それだけ追い詰めたんだなと思う」というこの日の相撲は、もちろん今場所、大の里が最も追い込まれた相撲でもあり、称賛されるべきものだった。

立ち合いは、相手の右差し狙いを読み、勢い込んで攻めるのでなく、頭を下げて、下からガチッと当たった。狙いどおりに左のおっつけ。右もハズにかかって捕まえにくる相手と距離を取る。

大の里は右下手に手はかかったが、圧力を掛けられ、思わず少し引くような動き。玉鷲はそれに乗じて、右ノド輪、左おっつけで押し込んだ。

俵に詰まり、一瞬大きくのけぞった大の里だが、そこから左に回り込みながら、相手の右ヒジを外から押すようにして、右は相手の体が流れたところで廻しから放して叩き込み。最後は左足一本で土俵際でくるりと回って残し、間一髪の差で白星を手にした。

玉鷲はこの日で、元大関魁皇(現浅香山親方)を抜き、幕内出場が史上単独2位の1445回となった。勝てば幕内通算700勝目になるところだったが、記念の1勝を金星で飾ることはならず。それでも、41歳で土俵に上がったというのは、戦後の力士では初めてで、その鉄人ぶりには驚かされる。

「まだまだやれそう」と記者団に振られて、「40代をなめるなよ」と返した玉鷲。「年じゃなく、心。心の中はめっちゃ楽しい」と言っているだけに、これからも期待大。まずは幕内通算700勝、そして元横綱貴乃花と歴代10位タイとなる701勝目、単独10位となる702勝目とクリアして、そのあとはまた、限界に挑んでいく姿を、いつまでも見せてもらいたいものだ。

一方の大の里は、これで8連勝とし、全勝ターンを決めた。全勝ターンは大関最後の場所となった今年5月場所以来なので、横綱となってからは初めてだ。これで入門から16場所連続での勝ち越しも決めた。
 
優勝争いでも、もちろん単独トップ。この日、1敗組のうち、義ノ富士と藤ノ川の平幕勢が敗れ、1敗で追うのは安青錦だけになった。2敗で横綱豊昇龍、平幕の義ノ富士、藤ノ川、時疾風、錦富士の5人が続く。
 
だんだん、大の里と安青錦のマッチレースの色が濃くなってきた。まだ大の里がどこかで星を落とせば、豊昇龍を含めた混戦になる可能性もあるが、さて、この日の玉鷲のように大の里を追い込み、さらに「あと数センチ」の壁を破って黒星をつける力士が現れるかどうか。残り対戦が予想される力士を考えると、そんなに数多くの候補者はいない気もするが……。
 
そう考えると、初の全勝優勝への期待も膨らんでくるが、まずは安青錦との直接対決まで落とさずにいけるか。上位に強い関脇王鵬、初顔合わせになる義ノ富士あたりに、波乱の目はあるやなしや、というところか。
 
文=藤本泰祐

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