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2025-11-24

【アイスホッケー】スターズ神戸とアイスバックス⑤青山大基

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スターズ神戸を新たな活躍場所に選んだわけは「より中心選手としてプレーできるチームだから」。昨季までの3年間を、取り戻す決意でいる(ⒸSTARS KOBE)

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今季からアジアリーグに加盟した「スターズ神戸」。ここまで11試合を行なっており、11月20日現在、勝ち星を挙げるには至っていない。11月29日・土曜日は16時から、30日・日曜日には14時から、地元・兵庫の尼崎スポーツの森アイススケートリンクで、前身の古河電工チームを含めて創部100年の「栃木日光アイスバックス」2連戦が予定されている。スターズには日光にゆかりのある選手やスタッフが多く、いっそう気持ちが高ぶっているようだ。今季、レッドイーグルス北海道からスターズ神戸に移籍した「新キャプテン」、DFの青山大基(あおやま・だいき)選手に話を聞いてみた。

スターズか、バックスかで悩んだけど、
リスタートの意味でスターズを選んだ

 なんでなんだろう。1人きりで悩むことも、おそらくはあったはずだ。でも、今は「それもいい経験でした」と振り返ることができる。青山大基は新たに、スターズ神戸で再スタートを切った。

 今から1年前。開幕から調子の出なかったレッドイーグルスの中で、青山もまた、もがいていた。シフトはたいてい、3つ目か4つ目。プレーヤー(ゴーリーを除く選手)の中では、チームでもっとも少ない20試合出場だ。ベンチには入っていたものの、実際に氷上ではプレーしないこともあった。

 小学生のころから評価の高かった選手だ。バランスがよくて、筋肉も柔らかい。体の柔らかさはプレーにも出ていて、特にパス出しが柔らかいのだ。中学、高校と順調に伸びてきて、釧路江南高3年の時は「ナショナルの合宿に今すぐ呼ぶべきなのでは」と思うほどの逸材だった。

 明治大学を経て、レッドイーグルスへ。アイスホッケーの世界でいう、エリートコースだった。1年目は、36試合に出場して1ゴール4アシスト。2年目は、32試合とフル出場しながらも、1ゴール3アシスト。そして昨季は20試合で1アシストのみ。プレーオフになるとさらに顕著で、1年目も、2年目も、3年目も、出場機会は「ゼロ」だった。

「大学時代まで、本当に順調に来ていたと思います。それがレッドイーグルスに入って、層の厚さに苦しんだ。ミスひとつで、試合に出られなくなる経験もありました。でも、今になって考えてみると、その経験が、自分の実になっている気がするんです。試合に出られない挫折は経験しましたけど、自分を客観視できるようになった。今、やらなければならないこと、試合に出られなくても、できることが必ずあるんです。それが身についたと思います」

 迎えたシーズンオフ。青山は、アジアリーグの移籍リストに乗った。獲得に乗り出したのは、今季からリーグに参画するスターズ、そしてアイスバックスだった。

「すごく悩みました。両方とも熱心に誘ってくれましたから。ただ、僕自身、選手生活をリスタートしたい意味もあった。できることなら、中心DFとしてプレーしたい。本当に迷ったんですが、スターズにお世話になることに決めたんです」

 今季はキャプテンとして、人前でしゃべる機会も増えた。「初勝利の日が来たら、選手とファン・サポーターの人とで、一緒に写真を撮りましょう!」(ⒸSTARS KOBE)
今季はキャプテンとして、人前でしゃべる機会も増えた。「初勝利の日が来たら、選手とファン・サポーターの人とで、一緒に写真を撮りましょう!」(ⒸSTARS KOBE)
 
レッドイーグルスで経験した周知活動。
西日本でも学校訪問をやりたいんです

 リーグの開幕は9月20日。2試合目の同21日、横浜グリッツ戦では2-3と敗れはしたものの、60分の時点で2-2の同点だったため、勝ち点「1」が与えられた。リーグ参戦でほどなく勝ち点を手にして、初勝利も遠くはないのではと思われたが、ここまで11連敗。スターズにとって、楽ではない戦いが続いている。

 どうすれば、勝ち星を挙げられると思いますか?

「うーん…。1試合戦うたびに、僕たちから見ても成長を感じ取っているんです。このピリオドは、自分たちのペースで進められているという瞬間もある。ただ、1ピリから60分間、いいペースで運べるゲームが、今のところできていないんです。言葉にすると、継続力でしょうか。それができれば、どんな相手でも勝負になると思うし、近い将来、勝ち試合をお見せできると思っているんです」

 シーズン開幕前、青山はスターズのキャプテンを任されることになった。小中学校、さらに釧路江南高、明治大学でもキャプテンを任されているから、人望も厚いのだろう。

「今まで4つのチームでキャプテンをやらせてもらいましたが、スターズは、日本で暮らすのは初めてという韓国の選手、中国の選手もいます。僕がキャプテンとして…というよりも、みんなでスターズというチームを作り上げていきたい」

「今は、守る時間が本当に多いですけど、その中で得点シーンがあると、本当に『やったな』という喜びを味わえるんです。スターズは、無得点試合というのが1試合もないんですよ。この勢いが、早く勝ちに結びつけばいいのですが」

 青山はいま、アイスバックスに感謝している。レッドイーグルスを退団した自分に、ライバルチームであるアイスバックスが誘いの声をかけてくれた。もう一度、選手として頑張ってみよう。「俺はアイスホッケー界から必要とされているんだ」ということを、わからせてくれたからだ。

 そして、レッドイーグルスにも。

「昨シーズンまで、ネピアリで2000人とか3000人のファンの人の前でプレーしていました。応援の力って本当に大きいんだ。それをあらためて知ったんです。今は、西日本で生まれた初めてのプロチームとして、アイスホッケーという文化を定着させたいし、何より子どもたちに、このスポーツの面白さをわかってほしい。レッドイーグルスのときには学校訪問をして、子どもが見に来てくれるケースが多かったんですが、スターズでも周知活動をしていきたいんです」

 人間、至るところ青山(せいざん)あり。社会人で初めて味わった挫折と教訓。そこに青山なりの「答え」を探そうとしている。

 ※11月29日(土)と30日(日)の「スターズ神戸」と「H.C.栃木日光アイスバックス」2連戦の詳細は、スターズ神戸の公式サイトをご参照ください。


青山大基

青山大基 あおやま・だいき
スターズ神戸・DF。背番号「12」。身長171センチ・体重75キロ。スターズの今季キャプテンを務める。1999年9月20日生まれ、北海道釧路市出身。釧路鳥取西小でアイスホッケーを始め、その後は鳥取西中、釧路江南高、明治大学へ。プレーの柔らかさを備え、視野の広いディフェンスマンとしての評価が高く、卒業後はレッドイーグルス北海道に入団する。3年間プレーしたのち、今季からスターズ神戸へ。神戸の須磨で、家族とともに暮らしている。「夏は泳ぎにも行きましたし、水族館でシャチのショーを見たりして、須磨の生活を楽しんでいます。ただ、神戸は坂道が多いんですよ。電動自転車の世話になっています」。弟の晃大は、東京ワイルズのFW。

山口真一

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