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2020-03-01

【アメフト】「歴代最強ジャパン」で勝つ 近江、佐藤、中谷、宜本 4リーダーの覚悟

 現地時間3月1日午後7時(日本時間2日午前10時)、米育成プロリーグ「The Spring League(TSL)」選抜チームと対戦するアメリカンフットボール日本代表(藤田智ヘッドコーチ)。藤田JAPANを引っ張る、24歳の近江主将と佐藤、中谷、宜本の3副将の「4頭の獅子」の覚悟を聞いた。【聞き手・構成 /小座野容斉】

『歴代最強ジャパン』を作るのが目標
WR #84近江 克仁 おうみ よしひと(IBM)
180cm83kg24歳=立命館大学

アメリカに挑む近江主将=米テキサス州で、撮影:小座野容斉

(主将になった理由)

「藤田さんに選ばれた。自分としても、トライアウトのときから、『代表やるんやったら、絶対幹部になろう』と思っていた。言いたいこと、やりたいこと発信し続けた」

(主将の役割)

「代表はアメフトが好きで集まった人間ばかり。全員、やるときはやる選手だと思う。まずは、切り替えを、自分がしっかり声を張って知らせる」
「今回は『勝つという目標』の上に、日本のアメフトの発展がある。そこを見据えて行動しようというのを、全員に伝え続けなければならない」

(立命館大学時代も主将)

「今回は日本を背負っている。大きさが全然違う」

(24歳。チーム平均より下)

「年上の選手に対しても引けたりするところはない。話し方も、できるだけ自分の言葉で伝えようと思っている」
「年上の人には、年上なりの考え方がある。しっかりしている人たちばかりなので。その人たちにも出てきてもらって、積極的に発言してほしい。自分一人でチームを作るのではなくみんなで作るというのが、今回の一番大事なところ」

(代表チームが、全体として若い)

「代表チームが若いとか、全然関係がない。『歴代最強ジャパン』を作るのが目標。もし、2015年の日本代表と今の代表が対戦したとしたら、必ず勝てるチームというのを目指してやっている。そこにブレはない」

(NFL経験のある選手も出てくる)

「相手が誰であれ自分のプレーは決まっていて変わらない。やることは何も変わらない。ただ、試合の場で見て、自分のフットボールが出来なくなってしまうのはダメなので。情報のある選手は、ハイライト動画を作って共有し、イメージづくりするというのはしっかりやっている」

(IBMではエースレシーバーとしてXリーグの米国人DBとマッチアップしてきた)

「フィジカルは、まだまだ強化しなければならないと思うが、アメリカ人のコーナー相手でも、球際の競り合いだったり、駆け引きは得意。そこには自信を持ってやりたい」

(3月末にはCFLのコンバインがある)

「日本代表もCFLへのチャレンジも、同一のチャンスだと思ってやっている。僕にオフシーズンはない」

アメリカの存在は常に頭の奥で意識
DL #23佐藤 将貴 さとう まさき(オービック)
183cm105kg24歳=中央大学

身体能力は日本人DEの中でもトップクラスの佐藤副将=撮影:小座野容斉

(一番若い副将)

「副将に選ばれるとは思っていなかった。自分はDLなので、DLとしてのプレーでチームに貢献しようと思っていた。今はディフェンス全体のことを考えるようになった。毎回の練習が、プレッシャーというか、『しんどいな』と思うくらいに、どうしたらチームがもっと良い方向に動けるのか考えるようになった」
「(中央大学時代から)周囲には恵まれていた。同期に、いろいろなことをちゃんと口で言える人がそろっていた。今、シーガルズでは、みんなが言うので。不言実行ではなく有言実行。『言うんやったらやろうや』と。言わないことによって、逃げるのが一番ダサイ」

(トライアウトでは、3コーンドリルで6秒台、立ち幅跳びで283センチをマーク)

「今日本にいるDEの中では、身体能力の部分では自信がある。シーガルズの中で米国人を含めても、自分のプレーがフィジカルで劣っているとは思わない。自分のプレーがチームにどこまで通用するのか、楽しみでもある」

(TSLとどう戦うか)

「NFLでプレーしていたこともあるQBやRBをタックルし、サックするチャンス。自分の中では大きなモチベーションになっている」
「アメフトをやっている以上、アメリカの存在はやはり常に頭の奥のほうで意識していた。(今回対戦するTSLは)プレーの質とかカテゴリーは置いておいて、このアメリカという国の中で、フットボールで飯を食っていこうという意思を持った人間の集まり。そういうやつらに対して、自分がどこまでやれるのか、そういうバロメーターが自分の中では初めてできる」

フットボールにモメンタムはない
DB #1 中谷 祥吾 なかたに しょうご(IBM)
180cm93kg28歳=関西大学

ハドルでは常に最前列で鋭い眼光の中谷副将=撮影:小座野容斉

(副将として)

「この短期間でチームを作り、ディフェンスを作らなければならない。今回は練習の後も、ずっと残ってカウマイヤーコーチや他のコーチと話をしているし、選手同士で話をしていろいろなことを確認している。それを意識してやっている。そういうコミュニケーションがチームビルディングに一番大事だと思っている」
「個々の選手が、『わかったふり』とか『ふんわりしているところ』がまだあるなら、そこは突き詰めていかなければならない」
「僕個人としては、試合の中で「この瞬間」を楽しみたい。『楽しみ』というとみんなでワイワイ騒いだりとなるかもしれないが、僕が求める楽しさは『試合に勝った時に味わえる極上のもの』。そのために、嫌なこと、しんどいこと、悩み、難しい問題を解決していってこそ、極上の楽しさにたどり着ける」

(フィジカルの差)

「関西大学3年に進級した時に、ヘッドコーチの板井(征人、今回の代表でもコーチ)さんに連れられて、カナダのカレッジへ遠征した。そこで自分の考えが変わった。カナディアンフットボールのカレッジオールスターにも参加させてもらったが、圧倒的に違ったのがフィジカル。『いま日本で、各大学各チームが基準にしているのは、役に立たない』と思った。『自分がどこに行きたいか、どういう基準を持つかは自分自身で決めなければならない』と気が付いた」
「でかくて速くて強くならなあかんと思って、強化してきた。当時の80キロから今は93キロ。今回の試合はこれまで取り組んできたことを証明するチャンス。『やったろう』と思う」

(今の気持ちは)

「思うところはたくさんあるが、シンプルにここに勝ちに来ている。『最高の準備ができた』と言えるよう、どこまで突き詰められるか」
「『その時の1プレー』に集中しようということは、その準備の部分にかかっている。そこにプラス メンタルの部分がかかってくる」
「今回の試合は日本のアメフトの将来がかかっている。そこをこじ開けるために、準備をして、自分たちを見失わずにやるべきことを一喜一憂せずにやり続ける。フットボールにモメンタムはない。いかに自分たちでやり切ることができるか」

ぶっつけ本番 覚悟の出場
WR #9 宜本 潤平 よしもと じゅんぺい(富士通)
168cm70kg29歳=立命館大学

腕立て伏せなど自重トレーニングは問題ない宜本副将=米テキサス州で。撮影:小座野容斉

宜本副将は、3人と異なる立場に追い込まれた。2月中旬、第2クールの練習中に負傷したのだ。
「代表を辞退することを含めて、本当に考えた」
が、熟慮の末、参加してこの試合に出ることを選んだ。
「痛みは出るが、機能的に動かないわけではない。ぶっつけ本番で挑む」という。

負傷の後でも、宜本は、ハドルでもミーティングでも、今まで以上に発言し、チームを叱咤し、鼓舞し続けてきた。

負傷の箇所は、現時点では明らかにできない。負荷がかからないような形で体のトレーニングはずっと続けている。また、フィールドゴール(FG)や、ポイントアフタータッチダウン(PAT)で、ホルダーを務めるのも宜本だ。

宜本副将から、試合前日のメッセージを掲載する。

「今日コーチと話して後半からの出場になりました。

今の正直の気持ちとしては怪我をして練習もせずに、試合もどれくらいでできるのかわからない状態で代表にいるのは申し訳ない気持ちもあります。

ただ試合に出るとなれば、痛みとかあっても思い切りプレーできる自信もあるので、後半からであろうと絶対にプレーで見せる。という気持ちもあります。
明日の試合はとにかく楽しみです!!!
板井さんが今日言うてたんですけど、僕はほんまに命懸けでやります。
この先のアメフトキャリアとかいろいろあるし、怪我には気をつけなければいけませんが、気を付けても怪我はするし、できる時に思い切りやろう。という考えになりました」

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