close

2026-03-06

【名古屋ウィメンズマラソン】田中希実インタビュー 未知への挑戦~前編~

昨年は日本選手権1500mで6連覇。5000mと2種目で世界選手権に出場した田中が、名古屋で未知の距離にチャレンジする

「MGCシリーズ2025-26」の女子最終戦となる3月8日の名古屋ウィメンズマラソンで、田中希実(New Balance)がペースメーカーを務める。中距離を主戦場に世界を転戦する田中が、未知の世界に踏み込む理由を聞いた。

海外レースでの武器を求めて

――マラソンでのペースメーカーは初めてということですが、オファーの経緯や、引き受けた理由を教えてください。

田中 別の大会からペースメーカーのお話をいただいたこともあって、興味自体はここ1年くらい持っていて、機会があれば受けてもいいかな、という思いはありました。今回の名古屋ウィメンズマラソンに関しては世界選手権後から、父(田中健智コーチ)を介してだんだん決まってきた感じです。

――どのくらいのペースで何kmまで走るのか、現時点(取材は3月3日)である程度は決まっているのでしょうか。

田中 距離に関しては15km以内と確定していて、今のところ15kmまで引けたらいいな、と思っています。余裕次第でもう少し引かせていただくことも、あり得るかもしれません。15kmとなると初めての距離で、未知の世界に踏み込むことになります。大会の胸を借りてマラソンの雰囲気を味わう感じで走れたら、私としてもこれからに向けてありがたいですね。ペースに関してはまだ分かっていませんが、だいたい(1km)3分20秒くらいじゃないかと想像しています。他のペースメーカー選手の前でペースメーカー的に走るのか、ペースメーカーの1人として並走する形で走ればいいのか、引っ張り方や役割についてもまだ決まっていません。並走であれば他の方の力も借りながら、自分自身の練習にもなるかな、と思っています。自分が先頭でペースをつくるのなら、自分のレースみたいなつもりで行かないといけません。

――ペースメーカーを引き受けた目的は? ご自身にどんなプラス要素があると考えてのことでしょうか。

田中 海外でトラック種目の勝負をするとき、自分の強みを今のところ見つけられていません。国内であればハイペースで押せたり、ラスト1周で勝負できたりしますが、海外に舞台を移すとどちらも武器になっているとは言えません。例えばラスト1周で60秒を切ることを考えた時、ミドル系の選手だときつい状態でもできてしまうのですが、私の場合、乳酸値がマックスでは60秒を切ることができないのが現状です。60秒を切るにはラスト1周を迎えたときに心身ともフレッシュな状態が求められ、そうするには圧倒的なスタミナが必要です。スタミナ部分の強化の意味も含めて今後10000mに取り組む機会を増やしたいと考えて、12月に久しぶりに10000mを走り、自信を深めたところもありました(30分54秒40のシーズン日本最高)。しかし10000mでは10000mまで、という意識になってしまいます。自分の限界はここまでとか、ここまでの距離の走り方しか分からない、という概念を取り払うため、あえてそれ以上の距離を走ってみることもいいのでは、と思っていました。1人の練習では難しいし、海外チームの練習に合流してもそうした練習はなかなかありません。今回のペースメーカーのお話は自分にとっても、今後スタミナを強化していく上で役立つのかな、ということが一番の理由です。

マラソン出場の可能性は

――今回のペースメーカー用に、スタミナ系の練習も行っているのでしょうか。

田中 今までは量よりも質だったのですが、今は質を極力落とさないようにしつつも、ちょっとボリュームを持たせたり、最初や合間にペース走的なものを入れたりして、脚が重い状態をつくった上でスピード系の練習を行っています。普段のジョグの距離も少しずつ増えていますし、ペース走も無意識にペースが上がっています。距離や、距離に対するペースというところの既成概念を、ちょっとずつ壊している最中です。

――将来的にはマラソンも、という思いもあるのでしょうか。

田中 今回15kmを走ってどう感じるか、によると思っています。今回のペースで、その3倍近く走るイメージを持てるかどうか。この冬はトラックを走るにしても、かなり“でたらめ”なスケジュールで動いていて、普通に走る準備はしてないよね、という状態でレースに出場し続けています。そのくらいですから、まず15km本当に持つのかな、というところもあります。走ってみて、ちゃんと走り切れそうっていう感覚が降りてきたら面白いと思うのですが、そのあたりを考えるきっかけにするためにも、まず走ってみる。そういう位置づけが大きいのかな、と思います。

――出場選手の中で、一緒に走ることを楽しみにしている選手がいたりしますか。

田中 特にこの人と、という選手はいませんが、今オーストラリアで合宿をしていて、メルボルンのトラックチームとも練習をしていますが、マラソン選手もいて名古屋ウィメンズを走ると聞いています。今回はたまに練習に混ぜてもらっているくらいですが、日本で再会できるのは楽しみですし、ストーリーが生まれるみたいでちょっとワクワクしています。

構成/寺田辰朗 写真/中野英聡

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事