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2026-03-11

【相撲編集部が選ぶ春場所4日目の一番】鉄人・玉鷲が、レジェンド・旭天鵬を抜き幕内通算出場で歴代トップに

土俵際まで攻められながらも、左からの突きで獅司を泳がせ、残す玉鷲。今場所はまだ白星が挙がっていないが、その気力はいささかも衰えていない

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獅司(下手投げ)玉鷲

今場所初の白星を目指して、41歳は動きに動いた。相手の廻しを嫌って突き放し、潜られかけると右で相手の腕を固めての小手投げ。ついてこられて土俵際に詰まると左からの突き落としでしのいで押し返し、右から相手の首のあたりを突いて横を向かすと右上手に手を掛けた。ここが勝負、と一気に出たが、急に攻めた分だけ前にのめる形になり、最後は右に体をかわした獅司の下手投げで、土俵下に落とされた。
 
鉄人・玉鷲が、この日で幕内出場記録を1471回とし、“レジェンド”旭天鵬(現大島親方)の記録を抜いて、歴代単独トップに立った。記念の日を白星で飾ることはできなかったが、「勝ちたかったけれど、今場所一番いい相撲が取れた。体は今場所で一番動いたので、きょうの相撲が取れたらいい結果が出る」と、いかにもこの人らしく、玉鷲はどこまでも前向きだ。
 
今場所で、幕内在位もまた旭天鵬と並び、史上3位の99場所目。今回幕内通算出場記録で抜き去ったレジェンドは、子供の頃からテレビで見ていたモンゴルの先輩であり、「温かくて、すごい人」と敬意を抱く存在。大島親方も、「体を触ってみたらパンパンだった。体も気持ちも、今が一番強いんじゃないかな」と、玉鷲には称賛のコメントを送る。
 
揃って名前が出たところで考えてみると、この鉄人・玉鷲とレジェンド・旭天鵬の二人には、やはり何となく「日本で長く土俵に立ち続ける男」の共通項があるようにも思う。
 
ともにモンゴル出身だが、まずは大きくて丈夫、骨太な体を持つことが一つ。玉鷲も1月場所後、初土俵以来の連続出場記録がギネスに認定され、表彰された際に「この賞はお父さん、お母さんがもらったもの。お礼を言いたい」と、両親を招いて感謝の意を表していたが、まずはその体と、さらに基礎運動重視でフィジカルの基礎を積み上げてきたということがあるだろう。これについては玉鷲も、「天鵬関はいつもしっかり準備運動をしていて、それを見習ってやってきた」と語っている。
 
そして、そのフィジカルが可能にさせる部分もあるが、旭天鵬は四つ相撲、玉鷲は押し相撲と相撲のタイプは違うとはいえ、ともに小細工を用いず、相手が誰であろうと正面から力で攻め切る相撲にこだわって歩んできたところも似ている。これも、大きなケガを招きにくく、かつ基礎的なパワーを保ち続けられることにつながっているはずだ。
 
さらに、土俵外にもかかわってくるところでは、二人ともモンゴル出身だが日本語ペラペラ、好奇心旺盛な話し好き、という共通点もある。外国出身力士は記者のほうから質問されて初めて言葉を発するという人も少なくないが、この二人に関しては、気になるものがあると「これ何ですか?」などと記者に聞いてくることもしばしば。この好奇心は、生活の上でも相撲の上でも工夫につながってきているのではないかと思う。そして、こだわりを持つべきところには持ちながらも、基本的にはおおらか、という性格も似ていて、これが一番の、丈夫で長持ちの秘訣のような気もする。

「やっと楽しくなってきたですね。あしたからは、きょうみたいに荒々しい自分の相撲を出したい」と玉鷲。次の節目は今場所5勝目を挙げた時点での幕内通算勝ち星8位タイの記録となるが、これからも、長く鉄人の輝きを保って、頑張ってもらいたい。
 
幕内上位に目を移すと、この日から大の里が休場、そしてこの日は、琴櫻、安青錦、豊昇龍と横綱、大関陣が全滅し、「荒れる春」の様相が深まってきた。安青錦は早くも2敗目だが、結果的には全勝は関脇以下の3人(髙安、隆の勝、琴勝峰)だけで、横綱豊昇龍とは1差のままという状況なので、まだその綱取りの灯は消えてはいない形が残ったと言えようか。

文=藤本泰祐

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