アメリカンフットボールの世界最高峰、NFLの2026年ドラフトは、日本時間4月24日(現地4月23日)米ペンシルバニア州ピッツバーグで始まった。第1日は1巡32選手の指名が終わった。第2日(現地時間24日)は2巡、3巡の指名がある。第3日(現地時間25日)は、4巡から7巡までの指名が行われる。
米カレッジフットボールのハワイ大学レインボーウォリアーズで、2025年に大活躍し、コンセンサスオールアメリカンとなったK(キッカー)松澤寛政が、今回のNFLドラフトで指名される可能性や条件について、真面目に考えてみた。
そして、表題の通り、スーパーボウル優勝最多6回の名門ピッツバーグ・スティーラーズに指名される可能性が、わずかながらあるという論拠を、書いていきたい。途中、かなり牽強付会の部分も出てくるが、日本人NFL選手が誕生する可能性という好機ゆえの、同国人としての身びいきがあることをご理解願いたい。
後で詳述するが、松澤が将来NFLでプレーするためには、今ドラフトで指名される必要はない。とはいえ、これだけ一般メディアからも注目を浴びている状況だ。松澤、そして日本のファンに朗報が届かないかと、期待せずに、待つことにしたい。【撮影:北川直樹、写真提供:ハワイ大学】


そして、スティーラーズには、今やNFLでも3本の指に入る、正Kクリス・ボズウェルがいる。ボズウェルは35歳で、2026年が4年契約の最終年。スティーラーズは基本的に、シーズン開始後の契約交渉をしないチームなので、これから3カ月の間に、ボズウェルと新契約を結ぶことになる。
Kの選手寿命は長いので、ボズウェルは大型契約を結んで、NFL最高報酬のKになる可能性が取りざたされている。そういう微妙な時期なので、中途半端なFAのKなどは決して連れてこないだろう。
そうはいっても、フットボールである以上、負傷の可能性は常にある。サマーキャンプの練習量を考えると、ガンガンと練習で使える若手の控えKは必ず必要になる。もちろん、プレシーズンゲームでのプレー機会も普通にある。
そして、シーズン開始後は、緊急事態に備えて、PS(プラクティス・スクワッド)で待機することになる。FG(フィールドゴール)の成功率も大切ではあるが、まずは、TD(タッチダウン)の後のエクストラポイントを、外さずに確実に決めてくれるKであることが重要だ。
そして、NFLのスタンダードでは、決して商品価値が高くないKが良い。なぜなら、その選手はシーズン中はPSに置かれるために、あまり能力が高すぎると、他チームに持っていかれてしまうからだ。
つまり、今の松澤のようなKこそが、スティーラーズのニーズに合うのだ。
またルール改正も大きい。NFLは2020年に、PSの人数を16人まで拡大した。2008年までは8名、2014年までは10名だった。控えKをPSに置いておく余裕が生まれている。
■日本人を採用してきたスティーラーズの歴史
次にスティーラーズのチーム固有の歴史を考えてみたい。
「ルーニー・ルール」は、多くのファンが認知していると思う。NFLのチームが、HC(ヘッドコーチ)やGM(ゼネラルマネージャー)などの要職採用時にアフリカーナーや少数民族(マイノリティ)の候補者を最低1人は面接に含めることを義務付けた規則で、故ダニエル・ルーニー前会長(オーナー)が定めたものだ。
またスティーラーズは、ビル・カウワー前々HCの時代の2002年に、日本人の磯有理子さんをNFL初の女性トレーナーとして採用したことは、とても有名だ。
磯さんは、HCがマイク・トムリンに代わっても、トレーナーとして務めを続け、在籍は9年に及んだ。2006年2月の第40回、2009年2月の第43回、2011年2月の第45回と、3回のスーパーボウルにもチームトレーナーとして参加した。勝った第40回と43回は、スーパーボウルリング(第40回はペンダントに加工)も受け取っている。
30年前の1996年には、徳升宏臣さんが、スティーラーズの広報、マーケティング部門のスタッフとして勤務した。徳升さんは、その後帰国して、NFLジャパンや、WWEジャパンでも活動した方だが、原点はスティーラーズ時代にあった。徳升さんの採用については、先ごろ亡くなった、フォトグラファーのタック牧田さんが、仲の良かった故アート・ルーニー先々代オーナーから、「今度、日本人を採用したぞ」と声をかけられたことを明かしている。
その牧田さんも、NFLの各チームの中では、ニューヨーク・ジェッツの次に、心情的につながりを持って取材したチームがスティーラーズだったと伺ったことがある。
■戦力外プロサッカー選手がNFL最高年俸Kに
最後に、1人のスターKに触れて、この長い話を終わることにする。
1995年生まれの青年、ブランドン・オーブリーはMLS(メジャーリーグサッカー)の選手だったが、23歳の時に戦力外になった。そしてサッカーを引退して、ソフトウェアエンジニアとして生活していくことを考えていた。
しかし2019年にNFLのゲームをテレビで見ていて、妻から「あなたならできるわよ」と言われる。オーブリーは、そこから3年間、カレッジチームのコーチと練習を重ねた。2022年4月に、スプリングフットボールのUSFL、バーミンガム・スタリオンズのKとなった。USFLのKとして2シーズンプレー。2年目が終了後、2023年7月にダラス・カウボーイズが彼と契約した。
オーブリーの快進撃はここから始まった。デビュー年はエクストラポイント49/52、FG36/38。Week14のイーグルス戦では59ヤード、60ヤードのFGを決めた。2024年はNFL史上2番目の65ヤードFGを決めた。2025年、オーブリーは、60ヤード以上のFGを通算6回以上決めたNFL史上唯一のKとなった。
2026年4月20日。カウボーイズはオーブリーと4年2800万ドル(保証額2000万ドル)=約44億6千万円(保証額約31億9千万円)という、Kとして史上最高額の契約を結んだ。
オーブリーに起きたことは、松澤にもきっと起きる。そう信じてやまない。
■解説:NFLのIPPプログラムとは
松澤が選ばれているNFLのIPP(インターナショナル・プレーヤーズ・パスウェイ)プログラムとはどのようなものか。
NFLジャパンのサイトには以下のように掲載されている。
「選手はフリーエージェント(FA)として契約するか、条件を満たせば2026年NFLドラフトで指名される可能性がある。また、各NFLチームはオフシーズンプログラムの開始からロースターを53人に減らすまでの間、条件を満たす外国人選手に対してロースター枠を1つ付与される。この時点で、資格を満たす外国人選手は32チームのいずれかで、外国人選手専用の17番目のプラクティススクワッド(練習生)枠に登録される資格を得る」。
元が英語なので難解な書き方だが、「オフシーズンプログラムの開始からロースターを53人に減らすまでの間」とは、ミニキャンプやOTAなどのチーム活動からサマーキャンプを終えてロースターを最終53人に絞り込むまでの間を指す。大体5月から8月の期間がここに当たる。この間は、ロースター選手として普通にチーム練習に参加できるし、8月に3試合あるプレシーズンゲームにも出場可能だ。
そして、もちろん開幕前最終ロースター53人に生き残ることができれば、NFL選手となったということになる。
仮に53人の開幕ロースターに選ばれなくとも、資格を満たしたIPPプログラムの選手は、正規のPS16人に加えて、IPPプログラム専用の17人目の『別枠』が用意され、チームに1シーズン帯同できる。
重要なのは、かってこの制度を使ってNFLに挑戦したRB李卓選手の時代との違いだ。この当時は、IPPプログラムは、原則としてNFL全体で4枠、候補者は世界各国から選ばれた10人前後で、IPPプログラムに生き残ること自体が激しい競争だった。2021年に、李卓選手はこの過程で落選していた。
しかし2024年のルール改正で、IPPプログラムの候補者を、フットボール選手としての技能で絞り込む過程が基本的に無くなった。
だから、現状で、松澤は、ドラフトされなくともNFLのどこかのチームの練習に、ミニキャンプやOTAから参加し、サマーキャンプが終わるまではそれが続くことになっている。その後は、IPPプログラムの別枠で、1年間PSとしてチームに帯同できる。
端的に言えば「将来NFLでプレーするために、今回でドラフト指名される必要はない」ということになる。
細かいことを言うと、以前のIPPプログラム配下の選手は、いったんロースターに昇格すると、その資格が消滅し、その後再びPSに戻されるときは『別枠』ではなくなるルールだった。これも2024年に改定となり、ロースター⇒PS降格を3回繰り返すまでは、IPPプログラムの『別枠』を失わないことになった。
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