日本のアメリカンフットボールの新たな最高峰リーグとしてスタートした「Xプレミア」。5月3日の東京ドーム、開幕戦ダブルヘッダーの第1試合はパナソニックインパルス対オービックシーガルズで、今年1月3日のライスボウル「リマッチ」となった。オービックが14点差を逆転する勝利で、4カ月前の雪辱を果たした。ゲームMVPは1人で15得点を挙げたオービックのRB/K島田隼輔が選ばれた。
パナソニックは、レギュラーシーズンで敗れたのは2020年11月のオービック戦以来。また高山直也HC(ヘッドコーチ)は就任3年目で初の黒星となった。
Xプレミア開幕戦オービックシーガルズ○21vs20●パナソニックインパルス(2026年5月3日@東京ドーム)【得点経過】第1クォーター(1Q)開始早々の2分23秒、オービックが試合を動かす。QBピアース・ホリーからWRテイ・カニンガムへのパスが繋がり、テイが独走、79ヤードのTD(タッチダウン)。エクストラポイントは失敗したが、オービックが【6-0】と先制した。
しかし5分47秒、パナソニックが反撃。RBビクタージャモー・ミッチェルの3ヤードランTDとキック成功で【6-7】と逆転。
ここからパナソニックの猛攻が始まる。2Q、1分34秒にパナソニックのRB立川玄明が1ヤードを押し込みTD。【6-14】とリードを広げた。
さらにパナソニックのK小林真大が躍動。8分54秒に28ヤード、前半終了最後のプレーとなる12分00秒には52ヤードの見事なFG(フィールドゴール)を立て続けに決め、【6-20】とパナソニックが14点のリードで後半へ折り返した。
3Q、オービックが反撃を開始する。主役となったのはRB/K島田隼輔だ。2分40秒に自ら16ヤードを走りきってTD。QBホリーによる2点コンバージョンは失敗するも【12-20】と追い上げた。
勢いに乗る島田は、8分15秒に41ヤード、12分00秒には34ヤードのFGを成功させ、【18-20】と2点差まで詰めて最終クォーターへ。
4Q、両者一歩も譲らない攻防の中、5分35秒に再びオービックの島田がこの試合3本目の27ヤードのFGを決めて。ついに【21-20】と逆転。オービックがこの1点を守り切った。


オービックが後半に14点差をひっくり返す前半は、パナソニックの強さばかりが目立った。オービックがライスボウルで許さなかったTDを2本、あっさりと取り切った。ディフェンスも、ノジマ相模原ライズから新加入のWRテイに一発を許したものの、それ以外はオービックのQBホリーに、OLBジャボリー・ウィリアムスらが徹底したプレッシャーをかけて、封じ込んだ。
しかしオービックは終わらなかった。後半に見事にアジャストした。前半は、長いパスを決めようとしてボールを持ちすぎたQBホリーが、WRテイへ、早いタイミングのショートポストやアクロスのパスを決めた。パスだけでなくランも増やし、オフェンスのリズムが良くなった。島田と西村七斗の2人のRBのランが効果的だった。


前半はやられっぱなしだった、パナソニックQB小林宏充に対しても、後半最初のドライブではサード&アウトで止めると、次のオフェンスではインターセプトで仕留めた。頭脳派DBの坊農賢吾主将が鮮やかにボールを奪った。ゲームの最後は、交代したQB荒木優也から、LB成瀬圭汰がインターセプトを決めて、締めくくった。
RB/K兼任の島田が1人で15得点オフェンスもディフェンスも本来の力を取り戻した、オービック。ヒーローは、やはり2年目の島田を置いてなかった。後半唯一のTDと3本のFGで15得点を挙げた。
近畿大時代はK兼任。Xリーグではエクストラポイントは蹴っていたが、FGを決めたことがない。しかし、正K山﨑丈路の不調で、FGでの起用も試合直前で決まった。
最初のFGトライは41ヤード、決して簡単な距離ではなかったが、島田はきっちり成功。これがXリーグでの初FGとなった。この後も、オービックオフェンスがエンドゾーンまで攻めきれない中、確実にFGを決めていった。強力なパナソニックディフェンス相手のキャッチアップゲーム。ミスは許されない状況下で落ち着いていた。
逆転FGとなった3本目は、当初41ヤードのトライで失敗したが、パナソニックの反則で、取り消しとなって前進する「運」もあった。そして27ヤードの逆転FGを決めた。
#29を選んだ「臆することを知らない男」島田にとって1月3日のライスボウルは悔しい記憶しかない。出場はスペシャルチームのみで、オフェンスでは全く出番がなかった。
2025年のレギュラーシーズンでは、ルーキーながらパワフルな走りで活躍、RB陣の一角を占めていた。しかし、当時在籍していたイギリス人コーチが、サイズのあるWR渡辺ジャマールをRBとして起用する新戦術にこだわった。ライスボウルトーナメントの準決勝(東京ガス戦)から、出番が極端に減った。短期間だが、重要なポストシーズンで、島田は走るチャンスを奪われた。
この戦術は結局、結果を出せず、そのコーチはチームを去った。
そして4か月後、同じ東京ドームで島田はエースRBとなっただけでなく、Kとしても結果を出した。
島田は臆するということを知らない選手だ。昨年のシーガルズ加入時の背番号選択でそれが分かる。チームのハート&ソウルだったRB李卓の背番号29をチョイスした。
シーガルズに入団するのは、みな気持ちの強い選手ばかりだが、その彼らでさえ、引退したばかりの李卓の「#29」は、ハードルが高かった。それを「ならば、俺が引き継ぐ」と背負ったのだった。

オービックの塚田昌克HCは「通常のキッカーと違って、サイドラインで気持ちを高めて『行くぞ行くぞ』みたいなものがなくて、オフェンスから、そのままプレーの流れでいけるのが強み」と話す。
Xプレミアの新レギュレーションは、ゲームロースターが48人なので、余裕がない。島田は、RBとしてもKとしても重責を担い続けることになりそうだ。




