プロ・アマ合同の日本野球規則委員会により発表された2020年度の改正規則16項目について3回にわたり解説する。第2回に取り上げるのは、5.07(a)(2)【注2】、いわゆる二段モーションに関する注釈文の改正。投球動作に関するその他3項目の改正についても解説する。
写真◎ベースボール・マガジン社
解説/日本野球規則委員会
投手の投球動作およびボークルールの改正点について説明します。
5.07(a)(2)【注2】を次のように改める。(下線部を改正)
(1)(2)項でいう〝中断〟とは、投手が投球動作を起こしてから途中でやめてしまったり、投球動作を一時停止したりすることであり、〝変更〟とは、ワインドアップポジションからセットポジション(または、その逆)に移行したり、投球動作から塁への送球(けん制)動作に変更することである。
昨年までの【注2】の記述は、以下のとおりでした。
「(1)(2)項でいう〝中途で止めたり、変更したり〟とはワインドアップポジションおよびセットポジションにおいて、投手が投球動作中に、故意に一時停止したり、投球動作をスムーズに行わずに、ことさら段階をつけるモーションをしたり、手足をぶらぶらさせて投球することである。」
この注釈文は、1970年代から、わが国で当時問題となっていた投球動作(いわゆる二段モーションと言われるような投球動作)を規制しようとして、わが国の規則委員会で独自に定めた規則であり、英文の原文にはないものでした。
2018年の規則改正においては、反則投球の定義に関する【注】を削除して、投球動作を一時停止させたり、自由な足をぶらぶらと上下させたりする投球動作について、走者がいない場合には反則投球によるペナルティは課さないこととしました。
しかし、日本野球規則委員会としては、あくまでもこういった投球動作は自然な投球動作とは言えず、打者に対するマナーのうえでも、また投手自身のパフォーマンスにも良い影響を与えるものではないと考え、日本野球科学研究会に、科学的観点から、これらの投球動作が打者の打撃のパフォーマンスにどのような影響を与えるのか、また投手自身の投球パフォーマンスや、投球障害に陥る危険性はないのかなどについて研究し、結果を報告していただくよう依頼をしていました。
その研究結果の要旨は以下のとおりでした。
・二段モーションや一旦停止モーション(以下、変則足上げモーションと言う)は、フェアゾーンへの打球率、打球速度、打球方向に代表される打撃パフォーマンスに特段の影響を与えるものではない。
・変則足上げモーションによって、打者の重心移動は何らかの影響を受けている可能性はあるが、それは打者の踏み込み足の着地時にはほぼ解消され、投手がボールをリリースする際には、その影響はほぼ消失する。
・変則足上げモーションは、投球速度、制球力、ボールの回転数、ボールの回転軸、ボールの変化量に代表される投球パフォーマンスに特段の影響を及ぼさない。
・変則足上げモーションによって、片脚立位姿勢(バランスポジション)時の投球動作には若干の違いが認められたが、肘関節内反トルク、肩関節牽引力、肩関節剪断力に代表される投球障害因子にも影響を及ぼすものではない。
以上の報告を踏まえ、日本野球規則委員会では、これまでの【注2】後段の記述、「投球動作をスムーズに行わずに、ことさらに段階をつけるモーションをしたり、手足をぶらぶらさせて投球すること」という文言を削除しました。
自由な足を上下させたり、投球動作の途中でグラブを叩いたりすることは、規制する根拠がなくなり、今後は投球動作の一部とみなすという結論に至りました。
従って、走者がいる場合に、このような動作を行って投球した場合にはボークは宣告しないことになります。
しかし、塁への送球(けん制)に変更した場合は、投球動作から塁への送球に変更したという理由で「ボーク」が宣告されます。また、投球動作を一時停止した場合には、打者に投球しても、塁への送球に変更しても「ボーク」となるのは今までどおりです。
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