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2026-06-01

【アイスホッケー】平野裕志朗 「日本代表、1B降格」謝罪の意味。

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今季、ドイツのデュッセルドルフでプレーした平野(写真は前年、国内での合同トレーニング)。今季後半はケガのため試合を欠場、そのまま5月の世界選手権に臨んでいる

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ポーランドで行われた今春の世界選手権(ディビジョンⅠ・グループA)。男子の日本代表は1勝4敗、6カ国中6位となり、来季は同じディビジョンⅠの「グループB」に降格することになった。大会が幕を閉じてから中1日。5月10日の日付で、ある代表FWからのメッセージが日本のファン宛に届いている。「ごめんなさい。私のせいです。この恥を背負って出直します。応援に感謝します」。長きにわたり日本のオピニオンリーダーを務めてきた、平野裕志朗(ひらの・ゆうしろう)。言葉に隠されているものについて聞いてみた。

自分が言い過ぎると、選手が委縮する。
互いに牽制して壁をつくってしまった。

 今年の世界選手権では副キャプテン。強気で成る日本の「精神的リーダー」が、この日のSNSでは、おとなしげに映っていた。

「あの言葉には2つの意味があったんです。日本代表は、これまで何年も勝ちきれない試合を続けてきた。今大会、最初のフランス戦で、後半まで勝っている場面がありましたよね?(3ピリ43分に日本が3-2と逆転。しかしフランスも57分、58分に連続ゴールを決めて再逆転する) 1人1人が集中して、ここはみんなで乗り切ろうと声を掛けるつもりだったんですが、フランスのタイムアウトが終わって、言葉をかけるのを僕はためらってしまったんです。大事なところで、チームをひとつにまとめることができなかった。一体感を生み出せなかったんです」

「もうひとつの理由が、この世界選手権で僕個人のポイントがゼロだったことです。今回は国内合宿、それに韓国との練習マッチがあったんですが、そこでもっといい状態をつくれたんじゃないか。そう思っているんです」

 選手ひとりが責任を追うべきなのか。そんな話は別にしても、第1戦で波に乗り切れなかったことが日本の「その後」に影響を及ぼしたことは間違いない。昨年度のトップディビジョン、フランスに対して、「惜しい試合だった」というのではなく、勝っていれば、いや「1」でもいいから勝ち点さえ取っていれば、その後の展開も変わってきたはずだ。

「今回は、寡黙な選手が多くて、自分(平野)が言い過ぎてしまうと若い選手が委縮してしまうから、一つひとつの言葉づかいに気をつけていたつもりです。でも、どこかお互いに牽制しすぎて、壁をつくってしまっていた」

 平野の誕生日は1995年8月18日。代表選手ではGK成澤優太、FW髙木健太(ともにレッドイーグルス北海道)、FW大澤勇斗(横浜グリッツ)に次ぐ4番目の年長だ。「若い選手とベテラン選手、今回はそれぞれのいい部分が、必ずしも出し切れていなかったと思います」と振り返る。

 平野は、高校を出て2年目の世界選手権のことを忘れていない。開催地は、今年と同じポーランド。今年度の会場であるソスノヴィエツの隣町、カトヴィツェで行われた、2016年のディビジョンⅠ・グループAだ。

 日本は5戦全敗で、グループBに陥落。コロナの影響もあり、実に2023年のエストニア・タリン大会でグループAに昇格を決めるまで、7年もの「雌伏のとき」があった。その7年間は、代表を愛する平野にとって本当に長く、だからこそ今回は「アイスホッケー界」に一石を投じる発言になったのではないか。平野は否定しているが、そんな気さえしてくる。

 今年2月、ドイツでプレーしていた平野は、背骨を折る重傷を負った。2カ月以上、何もできない状態だった。日本代表で戦列には復帰したものの、そこで待っていたのが日本の「グループB降格」であり、「0ゴール、0アシスト」だった。

「もちろん、ケガを言い訳にするつもりはありません。ただ、日本のチームとしては、もっとやれた、やれたはずだった。そういう気持ちは今でもあるんです。繰り返しになりますが、日本の良さは一体感。戦う上で、それが欠けていたと思いますから」

 6月の6日、7日には「オーヴィジョンアイスアリーナ福岡」で、国内のトッププレイヤー35人を招いて3オン3のイベントを開催する。「福岡まで来てくれる人に、ホッケーへの熱をさらに燃やせるような経験を用意しています」
6月の6日、7日には「オーヴィジョンアイスアリーナ福岡」で、国内のトッププレイヤー35人を招いて3オン3のイベントを開催する。「福岡まで来てくれる人に、ホッケーへの熱をさらに燃やせるような経験を用意しています」

6月6日、7日の福岡のリンクでは
初心に戻ってホッケーを楽しみたい。

 6月6日と7日。日ごろはアジアリーグの公式戦の行われない福岡(オーヴィジョンアイスアリーナ福岡)で、平野は「氷刃の乱(ひょうじんのらん)2026」を主催する。試合形式は、GKを除いて「3オン3」。このイベントのために結成された、4チームの間で優勝を争うのだ。

 参加するのは、日本のトッププレイヤーである35人。チームのキャプテンに選ばれたのは大澤勇斗、FW中島彰吾(レッドイーグルス北海道)、DF佐藤大翔、FW大津晃介(栃木日光アイスバックス)の4人だ。現役の代表組である大澤以外は、つい最近まで日本代表に選ばれていた選手ばかり。選手の中には、アジアリーグのタイトル争いで常連の古橋真来、鈴木健斗(いずれもFW、アイスバックス)もいる。彼らもまた、今回の代表には名前がなかった。

「6月のオフ期間に、ホッケーをめいっぱい楽しんでもらいたい。そういう目的で氷刃の乱を開催しているので、世界選手権は関係ないです」と平野。とはいえ、日本代表に選ばれなかった彼らにしても、今回、思うところはあるはずだ。

「本当にアイスホッケーが好きで、福岡まで来てくれる人も多いはずです。ホッケーへの熱。それをさらに燃やせるような経験を、選手として用意したい。ホッケーは、本当に楽しいものだ。そう思ってもらえる非日常体験を準備していますし、僕らも初心に戻って、ホッケーの楽しさを共有できればいい。そう思っているんです」。平野はそう言っている。

 これは個人的に、平野に話を聞いてみた後に「思ったこと」だ。

 アイスホッケーのチームには、話を聞くだけでは絶対に伝わらないものがある。たとえ数多く試合を見ている人ですら、「えっ、そんなことがあったの?」ということが実際には存在している。

 あるアジアリーグの選手は、「いま、チームがどういう形であるのか。それは実際にチームの一員でない限りは、わからないと思います」と断言した。スポーツを取材する立場として、「取材をする人間と、実際にプレーする選手とでは、事実の理解度に温度差がある」ことを十分わかっていて、それを承知のうえで記事を書いている。

 いま、スポーツの取材を取り巻く環境は年ごとに厳しくなっていて、アイスホッケーの世界選手権でいうと、日本の本社から記者やライター、カメラマンを現地へ派遣できるのは何社あるのか、それは片手で足りるのではないか。雑誌や新聞の売り上げを換算してみると、通常は売り上げを「ペイ」できないのだ。日本のアイスホッケーは「現場(選手)」を含めて、ひじょうに厳しい状況だといえる。

 ただ、たとえ経済的に厳しい状況に置かれていても、選手の話を聞き、それを今後に生かすことはできるのではないか。肯定も否定もしないで、まずは話を聞いてみる。そこから始めて見ることもできるはずだ。

 世界選手権で浮き彫りにされた課題は、何だったのか。まずは日本代表の選手に聞いてみる。次に、日本代表の「候補選手」に、そして日本代表の「元所属選手」にも。それが、お金をかけないでできる強化の第一歩ではないだろうか。

 6月6日と7日。福岡の「氷刃の乱」に集まった選手たちは、どんなプレーをファンに届けるのだろう。

「日本の良さは、一体感があること」

 繰り返し、繰り返し言っていた平野の言葉が、どうしても忘れられない。

平野裕志朗 ひらの・ゆうしろう
1995年8月18日生まれ。188センチ・98キロ。北海道苫小牧市出身。元古河電工のDF・利明氏を父に持つ。苫小牧緑小、和光中から帯広の白樺学園高に進み、卒業後はティングスリュード(スウェーデン)、USHLヤングスタウンを経て東北フリーブレイズへ入団する。2017-2018シーズンからカルマル(スウェーデン)、AHLウィルクスバリ・スクラントン、ECHLウィーリング、ECHLシンシナティ、横浜グリッツ、AHLアボッツフィールド、AHLユティカ、ECHLアディロンダックへ所属。その後は戦いの舞台をヨーロッパに移し、インスブルック(オーストリア)、ドイツのクレフェルト、今季はデュッセルドルフEGでプレーした。6月6日、7日には、昨年に続いて福岡でアイスホッケーのイベント「氷刃の乱」を主催する。

山口真一

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