私は元幕下力士(若鷲、出羽海部屋)で、引退後は柔道整復師の道へ進み、平成5(1993)年からは協会トレーナーも務めさせていただいた。しかしこの伝統国技の世界に入り、その後も親しく関わらせていただいているおかげで、素晴らしい人に出会えたし、いいものを見ることができた、人にはできない尊い経験をさせてもらったと思うことに事欠かない。
※写真上=貴乃花親方のこの優しさの根底には、相撲に懸けるまっすぐな思いと不撓不屈の『心気体』があった
写真:月刊相撲
長い人生には、誰にもエポックメーキングな瞬間があり、それはたいてい鮮やかな一シーンとなって人々の脳裏に刻まれている。
相撲ファンにも必ず、自分の人生に大きな感動と勇気を与えてくれた飛び切りの「一枚」というものがある――。
本企画では、写真や絵、書に限らず雑誌の表紙、ポスターに至るまで、各界の幅広い層の方々に、自身の心の支え、転機となった相撲にまつわる奇跡的な「一枚」をご披露いただく。
※月刊『相撲』に連載中の「私の“奇跡の一枚”」を一部編集。平成24年3月号掲載の第2回から、毎週火曜日に公開します。
その中で私が受けた感動の最も大きなものといったら、相撲史に残る貴乃花関の最後の優勝場面を身近に見守ることができたということになる。そう、平成13年夏場所千秋楽の優勝決定戦で、武蔵丸関を破ったときに仁王のような表情を浮かべた、あの奇跡的大逆転劇の一部始終を――。
前日の武双山戦で右ヒザ脱臼に加えて半月板損傷という重傷を負った貴乃花関。普通の人ではヒザを曲げることすらできない重傷だったが、貴乃花関は横綱としての使命感、責任感から千秋楽出場に踏み切ったのだ。そのケアをさせてもらった私から見ても、当然歩くことすら危ぶまれる状態だった。
私は土俵入りの際、テーピングを勧めたが、土俵の美を重んじる横綱は、それをよしとせずきれいな体のまま綱を締めて土俵に向かった。本割ではさすがにテーピングをしないわけにはいかなかったが、土俵上の所作をおろそかにすることをしなかった。ちょっと長い蹲踞をしただけでも外れる状態なのに、だ。取組は当然悲惨なものに。武蔵丸関にパッと叩かれただけで、あっさり土俵に這った。
さあ、ついに決定戦。入れ替わった東の支度部屋に戻って精神統一をしながら、立ったまま出番を待つ横綱。もはや師匠二子山親方(元大関貴ノ花)の欠場指令も届かない。付け人も、取組進行の若者頭も声を掛けられる状況ではなかった。
そして迎えた決定戦。一大勇猛心を奮い起こした貴乃花関は痛みに耐え、外れたヒザを入れ直しながら仕切り、ついに土俵中央右四つ、左からの渾身の上手投げで奇跡の優勝をもぎ取ったのだ。日本中がこの奇跡の優勝劇に湧いた。その渦中にいた“当事者”の私たちが、その間ずっと夢の中にいるような気持ちで、ただこれを見守っていたことは言うまでもない。今思えば本当に長くて短い、素晴らしい時間だった。
横綱はその後7場所連続休場、15年1月場所で引退のやむなきに至った。お礼奉公の春巡業では、この感動的な平成の大横綱とぜひとも記念写真をと希望する関係者が毎日のように順番待ち。最終日の横須賀市に、せめて一枚でもと妻を連れて出掛けた私だったが、これでは自分たちがお願いできる余地はないなと諦め、遠目にその撮影風景を眺めていたら、なんと横綱のほうから「中元さん、撮りましょう」と言ってきてくださり、若い衆の案内で体育館のワキでの撮影と相成った。また、普通は横綱姿で笑顔を見せることはないのだが、私のカメラを手にした安芸乃島関(現高田川親方)がなんだかんだと笑わせてくれて、笑顔の横綱との何よりもの記念写真が奇跡的に実現したのだった。あの国民的感動につながる宝物が、私のこの一枚なのである。
語り部=中元皓希与(中元整骨院院長・元日本相撲協会専属トレーナー)
月刊『相撲』平成29年3月号掲載
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