幕内の優勝争いは単独トップだった貴景勝が敗れて、再び大混戦となった。幕下は4場所休場明けの千代の国が照ノ富士を押し出して復活の優勝。十両は2敗でトップの勢と1差で追う琴ノ若の直接対決が組まれた。
※写真上=1差で追う琴ノ若を寄り倒しで降し、十両優勝へ大きく前進した勢
写真:月刊相撲
勢は今年の夏場所、左足のアキレス腱を痛め、蜂窩織炎も患い高熱がありながら強行出場。2勝13敗と大負けを喫し十両に陥落。休場するべきだったが、初土俵からの連続出場にこだわって悪化させてしまう。
十両でも2場所連続二ケタ負けで、今場所は幕下陥落にあとがない12枚目まで番付を下げていた。秋場所前には翔天狼に貸していた持ち株の春日山を返してもらい、幕下落ちなら引退という準備もできていた。
初黒星を喫した2日目、場所帰りの勢とすれ違ったのだが、ニコニコ笑顔で「お疲れさまです」と挨拶された。黒星が先行した3日目も妙に明るく、今場所が最後と開き直ったのかなと思っていたが、ケガが回復し力を出せるようになったことが、うれしくてたまらなかったようだ。4日目からは9連勝で、この日の大一番を迎えた。
両者、頭から当たって差し手争い。右四つに組み合って、琴ノ若は左上手をガッチリ取ったが、勢は上手が取れない。前に出てくる琴ノ若に対し、右下手投げでしのぐ勢。さらに琴ノ若が出るところを下手投げで体を入れ替えると、右下手を突き付けるようにして寄り倒し、10連勝で2敗を守った。
肩で息をしながら戻ってきた勢は、「強かった。でかいし、ぐいぐい来る。右で廻しを取ったので、意地でも離さないぞと思った。力を出し切りました」と笑顔を見せた。
これで後続とは2差がつき、優勝へのマジックは1。優勝なら新十両だった平成23年九州場所以来8年ぶり2度目となる。「ちょっと前まで相撲が取れるような状態じゃなかった。相撲が取れるだけで幸せです」と無欲で残り2日に臨む。
文=山口亜土
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