幼いころから相撲好きだった私は、平成元年念願かなって、山形県は酒田から憧れの世界に身を置くようになった。それからというもの、呼出し生活を通して勝負の厳しさ、人情の機微、相撲文化の奥深さになど、憧れと違わぬ相撲社会の素晴らしさを目の当たりにしてきた。そしてそんなシーンに立ち会うたびに、しびれるような感動を味わってきた。
※写真上=ウサギ(鬼?)の両目のようなところが一番力士たちの手の当たるところで、より深くえぐれている。なんという積み重ねの歴史! ここまで使い込んだ柱はほかの部屋では見られない
写真:月刊相撲
長い人生には、誰にもエポックメーキングな瞬間があり、それはたいてい鮮やかな一シーンとなって人々の脳裏に刻まれている。
相撲ファンにも必ず、自分の人生に大きな感動と勇気を与えてくれた飛び切りの「一枚」というものがある――。
本企画では、写真や絵、書に限らず雑誌の表紙、ポスターに至るまで、各界の幅広い層の方々に、自身の心の支え、転機となった相撲にまつわる奇跡的な「一枚」をご披露いただく。
※月刊『相撲』に連載中の「私の“奇跡の一枚”」を一部編集。平成24年3月号掲載の第2回から、毎週火曜日に公開します。
そのなかでも、私が土俵築きの手伝いのため最初に中村部屋(元関脇富士櫻、平成25年停年)の稽古場を訪れるうちに気付いたことは、これまでの人生の中でも1~2を争う感動ものだった。そこで私が“発見”したのは入念に磨きをかけられた、美しい1本の丸く太い柱だった。それは稽古場の端っこにひっそりと立っていた。そう、力士が突っ張りの稽古に用いるテッポウ柱である。
中村部屋のその柱は、長年の力士のテッポウによって手の当たる低い腰のあたりが磨り減り、木の年輪までもが鮮やかに浮かび上がっていた。なんという神々しさであることか。
普通、年輪というと輪切りにしたものを上から見るイメージがあるが、ここの柱は横腹に鮮やかな年輪が浮かんでいる。「これは中村部屋ならではの天然記念物だ! 相撲界の世界遺産だ!」。言葉的には間違っているかもしれないが、私はそんな衝撃を受け、涙が出るほど感動したあの瞬間を忘れない。
真面目で稽古熱心だった親方が、現役時代そのままの情熱を稽古場に持ち込み、興した(昭和61年5月)中村部屋。弟子たちにもその精神、また突き押しの基本の大切さがしっかり伝わっている。
その弟子たちが入れ替わり立ち代わり向かってきたテッポウ柱。延べ何人が、延べ何回この柱に青春を、熱い思いをぶつけてきたことだろう。
この見事な彫刻は、力士の手による打撃だけで浮き出ているのだ。こんな現象はほかの部屋で見たことはない。
世間では、海の波とか風、砂漠の砂などが長い間繰り返したたきつけられることによって出来上がったものが、自然の絶景、芸術品とよく讃えられるが、この中村部屋の風景も、私は天然記念物にたとえ、世界遺産と呼びたいと思う。
しかし、このことに気が付いている人は、相撲に詳しい報道陣でも意外と少ないようだ。その理由は、稽古場の隅に置かれていること、また稽古中は誰かしら力士が占領しているので、柱そのものを見るチャンスがないことからくると思われる。
長年の力士たちの努力の跡が浮き出た「相撲界でも稀に見る奇跡の芸術品!」であるテッポウ柱について、「柱の一本ぐらい折れると思ったんだけどな」と、親方は笑い飛ばしている。
平成25年2月の親方の停年を前に、部屋の力士は24年九州場所後、東関部屋に移籍して、中村部屋は閉じられるが(25年4月、武蔵川部屋が転居)、私が発見してからでも十数年のときが経っているテッポウ柱の年輪はいよいよ際立ち、柱の輝きをさらに増している。
私はこの『世界遺産』を発見したときの感動を永遠に残すために、今回初めて自分のカメラに納めさせていただくことにした。真摯な稽古というのは、こんなにも素晴らしい芸術品まで生み出すのだ。断言するが、私の究極の“奇跡の一枚”は間違いなく、力士たちの汗と涙を奥に湛えた柱が微笑んでいるこの写真である。
語り部=十枚目呼出し 利樹之丞(高砂部屋、本名・土田利樹)
写真:月刊相撲
月刊『相撲』平成24年12月号掲載
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