7月21日からスタートした世界選手権の競泳競技。現地取材を敢行しているスイミング・マガジンでは、レース後のコメントをはじめ、注目レースの紹介やレースを見て感じたことなどを、少しラフなタッチも入れ込みつつ、紹介していく。スイマガルポだけに、マニアック過ぎたらゴメンナサイ!
写真/決勝では自己ベストを目指し、自分の泳ぎに徹する覚悟で臨む青木玲緒樹(撮影◎毛受亮介/スイミング・マガジン)
23日夜の決勝には続々と日本選手が登場する。順を追っていくと、まずは男子200m自由形に松元克央(セントラルスポーツ)。準決勝では前半を超積極的に入り自己ベストを更新(1分45秒63が1分45秒56に)。同着4位で決勝に残った。世界の列強が腹の探り合いをしていた準決勝だったが、「まだ上げられます」と頼もしい発言。名将・鈴木陽二コーチの秘策を松元がやりぬけば、胸に光るものがぶら下がるかもと期待が膨らむ。鈴木先生、「ワンチャン(ス)」、お願いします!
そして男女100m背泳ぎも酒井夏海(スウィン美園/武南高3年)、入江陵介(イトマン東進)がそろって決勝へ。「52秒前半が出せればメダル争いに絡める」と入江が決意を示せば、酒井は「ラスト15mをしっかりいくこと」と自分の泳ぎに徹する覚悟。男女とも、金メダル争いに加え世界新の可能性もあるレースなので、そちらを片眼で見つつ、日本勢の奮闘に期待したい。
最終レースの女子100m平泳ぎには青木玲緒樹(ミズノ)が堂々3位残りで決戦に挑む。4月の日本選手権で代表権を獲得できず、5月のジャパンオープンで滑り込みの代表入りを果たした青木がこの活躍。こういった頑張りはチームに活力を与える。「50mをラクに30秒7~8くらいで入り、ラストで競ったときに焦らない」を心にとめて泳ぎ抜く覚悟だ。
22日の予選、男子100m背泳ぎで多発したバックストローク・レッジの不具合。そのため、予選18人(通常は16人)を準決勝に進ませる異例の措置を取り、さらに午後のレースではレッジ部分を固定して使用するという事態となった。
バックバックストローク・レッジとは、ブランコのような構造で、レッジと呼ばれる板に足をかけることで、より勢いよく飛び出すのを手助けしてくれる器具。そのブランコの紐の長さを選手の好みにより調節できるのだが、長さを調整する機能が壊れるという事態が発生した。
予選はレーンによって故障の有無が異なったため、レースをやり直す選手も出た。国際水泳連盟からの正式発表はないが、それらの事情を鑑み、18人を準決勝に進ませる措置を取ることになったようだ。
そして準決勝を前に、チーム関係者には「本日の午後のレースでは、バックストローク・レッジは使わずに行ないます」(旨)なるお達しが出た。しかし結果的には、レッジが水面のやや下の位置になるようにブランコの紐を固定して設置する措置を取り、午後のレースもレッジを使って行なわれることとなった。
準決勝を無事に泳ぎ終えた入江は、「問題なくスタートすることができました。(高さ調節ができないことは)記録には影響しないと思います」とさわやかに返答。百戦錬磨が成せる対応力と冷静さはさすがっ!
使わないというお達しが出たあと、当該選手の国のコーチが呼ばれ「使用しない」という事情説明がなされが、どうやら米国のコーチからの抗議を受け、レッジを固定して使用することになったようである。
米国の抗議は当然だ。仮にレッジを使用せずにレースを行なった場合、順位に関しては、同条件で行なったわけだからそこに優位性は生まれない。しかし、競泳は記録のスポーツである。特に男子100m背泳ぎは、現世界記録保持者のライアン・マーフィー(米国)、そこに100分の1秒に迫っている徐嘉余(中国)がおり、勝負と同時に記録も狙っている選手にとっては、譲れるわけがないのは当然だ。
それにしても……。バックストローク・レッジは取り外し式なため、純粋に、予備を用意しておかなかったのかな? と思った出来事だった。
文◎桜間晶子(スイミング・マガジン)
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