8月17日の3回戦、敦賀気比(福井)に逆転勝利し、2年ぶりとなるベスト8進出を果たした仙台育英(宮城)。その勝利に大きく貢献しているのが、データ収集・解析を行っているベンチ入りしていない選手たちだ。
※上写真=鳴門戦では初回に一番・中里が初球から積極的にスイングし二塁打。これもデータ班の分析からの作戦だった
写真◎石井愛子
2回戦で鳴門(徳島)と対戦した仙台育英打線は初回から爆発した。
一番・中里光貴が初球をとらえて二塁打を放つと、二番も初球をバントし一塁もセーフ。その後もほとんどの打者がファーストストライクから積極的にスイングし、例外なく芯でとらえる。投手のクセを見抜いて球種が分かっているのか、そう感じさせるほどの鮮やかな速攻で初回に4得点。
仙台育英が見抜いていたのは投球フォームの癖ではなく配球の傾向だった。
序盤は高めの甘い変化球を狙って積極的に打ちにいく。高めの変化球を危ないと認識した相手バッテリーは低めの球が多くなるはずだから後半はそれを見極めて四球を狙う。これが仙台育英の作戦だった。
鳴門の先発・西野知輝に初回だけで6安打を浴びせたが、球数はわずか19球。カウント球をたたいた。
プランを練ったのはデータ班。ベンチ入ってない3年生がホテルの部屋を分けて何試合も録画してデータを取り、アプリに打ち込んで情報をメンバーと共有。的確な分析で強烈な先制パンチにつなげた。
データの活用は宮城大会でも難敵攻略に貢献していた。
グラウンドマネージャーを務める菅野友雅(2年)は、試合前日に相手の特徴や苦手なコースなどをメンバーにラインで送る。プランがハマったのが準決勝だ。東北学院榴ヶ岡の投手は球数が多くなってくると崩れると見抜き、前半はボールを見て後半勝負のゲームプランを立て試合に臨んだ。
5回までは互いに無得点だったが、最終的なスコアは10対0。自チームの試合中に球場を離れ、別会場まで偵察に行った努力が実った。
「何試合かデータを取って、監督に『思ったとおりだった』と言ってもらえたときはうれしかったですね」
菅野は応援組のため、甲子園では前述のとおり滞在している3年生が分析を担当している。仙台育英のすごいところは、データに頼り切るのではなく、試合展開に応じてプランを切り替える柔軟さも併せ持っていることだ。
記録員を務めているグラウンドマネージャーの今井悠介は敦賀気比(福井)戦を「外のスライダーをどれだけ見逃せるか、それとデータはデータなので。途中で変化球が入らなくてなったのでストレート狙いでいった回にうまく点を取れた。次の回から配球が変わって変化球が多くなったので点を取るのが難しくなったんですけど、その回でよく追いついたなという感じですね」と振り返る。
須江航監督も「素晴らしいです。アナライズに関してほとんど完ぺきでした。打球方向、狙い球の張り方、ピッチャーの組み立て方も。彼らがまとめてくれて最終的に僕がチェックして、今朝全員で見てやってきました」と賛辞を惜しまない。
大会後半は日程も詰まり分析する時間は短くなるが、ベスト8に進出し東北勢悲願の初優勝まであと3つ。データ班の腕の見せ所だ。
文◎小中翔太(スポーツライター)
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