8月11日、第1試合の筑陽学園(福岡)対作新学院(栃木)戦。試合は9回裏二死から筑陽学園が3連打で2得点し、3対3で延長戦へ。しかし10回表、作新学院が2点を挙げ、5対3で勝負が決まった。
※上写真=立ち上がりが悪かった筑陽学園のエース・西舘を捕手・進藤が支えた
写真◎牛島寿人
筑陽学園の先発・西舘昂汰は「最後の最後でこんなに良い試合ができると思わなかった」と、甲子園での一戦を振り返った。
立ち上がりは不安定だった。
1回表、初球を一番・福田真夢にセンターに返されると、続く松尾翼にはライトへのヒット、さらに味方エラーで無死満塁となり、四番・石井巧の犠牲フライであっさりと1点を奪われた。
3回にも失点し、このままズルズルと引き離されてしまうかと思われたが、西舘は持ち返した。
6回にも1点を失ったが、7、8、9回は三者凡退。終盤の好投が、9回二死からの同点劇につながったとも言えるだろう。
西舘が尻上がりに調子を上げていった裏には、女房役・進藤勇也の鼓舞があった。
ブルペンでの調子は悪くなく、初球はいつもどおりの真っすぐから入った。しかし、その真っすぐを先頭打者に打たれ西舘が動揺したことは、進藤にもすぐに伝わった。
「あいつ、気持ちが顔に出やすいんです。それからはシュンとして全然イキイキとして投げられていなかったので、『もっと思い切っていけよ、楽しんで投げろよ』と声を掛けました」
配球も当初は真っすぐを軸に考えていたが、スライダー中心に変え、エースの投球を盛り上げた。
3回、4回に盗塁を刺したことも大きな援護になったはずだ。
そんな進藤に対して、西舘の信頼も大きい。
延長に入った10回表、先頭打者の福田が塁に出ると、次打者・松尾の打席で二盗、三盗と連続で決められ、それが作新学院の勝ち越し点につながった。
しかし、西舘は「進藤が刺せなかったのなら、どんな捕手でも刺せない。自分が完ぺきに盗まれてしまったということ」と、相棒への揺るぎない信頼を口にした。
もちろん信頼はバッテリー間だけではない。
「つらいこともたくさんあったけど、メンバーがいたので乗り越えてこられた。これから先の進路は皆バラバラになるけれど、野球を続けていればどこかでつながると思う」
寂しさとともに未来への希望を語った西舘。筑陽学園のメンバーもまた、最後の最後まで戦い抜いた甲子園の一戦を胸に、次の道へと進んで行く。
文◎佐野知香(ベースボール・クリニック編集部)
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