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2019-12-22

【箱根駅伝】創価大・米満が密かに待ち望む「勝負」

新監督を迎えた今季、箱根予選会で堂々の5位通過を果たした創価大。その牽引車となったのがエースの米満怜(4年)だ。シード権獲得はもちろん、米満自身が長年抱き続けた勝負の実現を心待ちにしている。

上写真=エースとして3年ぶりの箱根に臨む米満
撮影/福地和男(陸上競技マガジン)

 創価大の米満怜は、エースとして箱根に戻ってきた。

 10月の箱根予選会ではハーフマラソンの自己ベストとなる1時間03分19秒で全体7位、日本人3番手と好走を見せ、チームの3年ぶり3回目の箱根出場の原動力となった。

「狙っていた日本人トップを取れなかったので悔しさは残りますが、最低限の仕事はできたと思います。7月、8月は貧血で、本格的な練習をできなかったのに、ここまで走れたので、自信になりました」

 前回の箱根出場は1年生のとき。8区を任され、区間3位と好走し、下馬評の低かったチームの総合12位に貢献した。しかし、「何か良いとこ取りだったという気持ちが強かったんです。予選会に出て本戦を走れなかった選手もいるなかで、自分は予選会に出ず、本戦だけの出場でしたから」と、達成感を得ることができなかった。だからこそ、最後の箱根では「そのとき走れなかった選手たちに恩返しする意味でも、今回は4年生が中心となって、シード権を獲得できる走りを見せたいです」ときっぱりと言い切る。

 そんな米満だが、過去3年は紆余曲折を経てきた。

 2年時まではたびたびケガに泣かされ、継続して力を発揮することができなかった。その課題を克服すべく、2シーズンを終えた冬場には、トレーナーの指導を受けながらフィジカルトレーニングに着手。状態も上向き、満を持して迎えた大学3年目。副将にも任命され、「再びチームを箱根へ」の強い思いを抱いて臨んだが……そのやる気が時としてチームメイトへの厳しい態度となり、思わぬ影響を与えてしまう。

「昨年の自分はすごくピリピリしていて、それがチーム全体を壊すことになり、周りが自分に付いてこれなくなってしまったんです」

 米満は福岡の強豪、大牟田高出身。同級生のチームメイトには大学入学時から大きな注目を集め、東海大黄金世代の一角を成す鬼塚翔太がおり、高3時の全国高校駅伝では10位に入っている。しかし、創価大は、米満と同じような境遇で陸上に打ち込んできた選手ばかりではない。

「昨年の自分を見て、瀬上(悠然)総監督からは『うちは強豪校出身の強い選手が多くいるわけではないので、そのやり方(周囲に厳しく接すること)は合わない。それなら自分の走りに集中することで、チームを引っ張るようにしたらいい』と言われて。だから今年はそのことを意識して、春先から取り組んできました」

 米満にとっては今春から新監督に就任した榎本和貴監督のやり方にマッチしたことも大きかった。榎木氏は現役時代、中大で4年連続区間賞を獲得、箱根総合優勝も経験した実績の持ち主で、実業団でのコーチ歴も長い。「箱根に出ることを目標にするのではなく、箱根で戦うことを前提に強化を進めていく」という方針の基、米満は自分のレベルアップに集中。榎木監督が提示するポイント練習の設定タイムも「自分が少し頑張ればクリアできる設定だったので、その時々でクリアするたびに自信になっていった」という。そして何より、チーム全体が活気にあふれるようになった。

 そうした春先からの積み重ねがあったからこそ、夏場に貧血で練習量を抑えても、10月の予選会の好結果につながったのである。

 目指すはシード権の獲得。そして米満は個人的に抱いてきた思いが実現することも、密かに楽しみにしている。

「個人的には1区を希望しています。そしてタスキを一番で(同級生のムソニ)ムイルに渡したい。それに、エントリーがどうなるかは分かりませんが、鬼塚と対戦したい。高校時代は一度も勝つことができなかったので、もし1区に出走してくれば、勝ちたいと思ます」

 米満は万全の状態で、3年ぶりの大舞台に挑むつもりだ。

創価大・米満怜

よねみつ・れん◎1998年2月27日生まれ、福岡県出身。宇美中→大牟田高(福岡)。172cm、58kg。自己ベスト10000m28分30秒59(大4)、ハーフマラソン1時間03分19(大4)

文/牧野 豊(陸上競技マガジン)

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