2011年テグ世界選手権女子マラソン代表の野尻あずさ(NicoA’s Running Family)が第一線からの引退を表明。ラストランとして選んださいたま国際マラソンを2時間53分37秒で駆け抜け、12位で競技生活に幕を閉じた。
写真上=笑顔で「野尻あずさ」としてのラストランを飾った
撮影/中野英聡(陸上競技マガジン)
レース後の野尻は晴れやかな表情を見せた。
「本当は練習をもっとやって万全で臨みたかったのですが、出し切ることはできました。地元富山で走っているかのように皆さんのエールをもらい、嬉しかったです」
他のトップランナーとは異なる歩みをたどった異色の選手だ。日本大学時代にはスキーのクロスカントリーでユニバーシアードに2度出場。その後、2008年に26歳で陸上に転向した。翌年には5000mで15分43秒94、ハーフマラソン1時間10分53秒と頭角を現し、2010年の大阪国際女子マラソンでは2時間29分12秒。2011年のロンドンマラソンを2時間25分29秒で走り、11年のテグ世界選手権の代表権を獲得する。陸上を本格的に始めてわすか4年で世界の舞台に立ち、18位に入った。
ベストタイムは2時間24分57秒。ロンドン五輪出場をかけて挑んだ2012年の大阪国際女子マラソンで出したものだ。この時は5㎞16分50秒ペースで進む中、中間点を前に先頭集団から離されるも、崩れることなく5㎞17分台のラップを最後まで維持し、3位(日本人2位)。五輪切符には手が届かなかったが、後半の粘りが印象的なレースだった。
引退を決めたのは「トップアスリートとして心技体が伴わなくなった」から。練習を詰めてレースに臨むタイプだったが、それに向き合うことが難しくなり決断したと話す。マラソンだけでなく、2020年の富山冬季国体にはふるさと選手としてクロスカントリーに出場予定。地元への「最後の恩返し」をしてアスリートとしての活動に終止符を打つ。「これまで走ったマラソンにはひとつひとつに意味がありますが、時計をつけずに走ったのは今日が初めて。充実感があって楽しかったです」と笑顔で最後のマラソンを振り返った。
今後は11月に結婚した夫ともに設立した「一般社団法人日本伴走家協会」の理事、「磯野あずさ」として、知的障害や発達障害をもつランナーへのサポート事業に従事する。夫と共に、そして支えるランナーと共にこれからも走り続ける。
文/加藤康博
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