女子やり投の北口榛花(日大3年)が今シーズンの試合日程を終えた。目標だった日本記録更新も、アジア大会出場も逃した今季。だが、その歩みは決して停滞しているわけではない。
豪快な投げが魅力の北口
※写真上=9月の日本インカレで60m超えの投てきを見せた北口(写真/中野英聡)
女子やり投の北口榛花(日大3年)は、9月の日本インカレで今シーズン初の60m超えとなる60m48で制し、10月7日の福井国体でも58m83を投げて連勝した。
その1週間後の10月14日、北口は初めて2週連続で試合に出場。結果は56m99でシーズンを終えた。その狙いはこうだ。
「海外での連戦を想定して1週間後に試合に出てみました」
来年から国際大会に向けた選考にランキング制度が採用され、国内の主要大会よりも海外で試合をした方がポイントは高くなるという場面も出てくる。そのため、来季以降に海外遠征をすることも想定しての連戦だった。
「この1週間は一度も投げずに試合しました。抜き(休み)過ぎたみたいで、体の“芯”が入らなかった感じがします」
平凡な記録だったが、失敗投てきでさえ55mを超えるようになったことも収穫であり、「休み過ぎるとダメ」ということが分かっただけでも出場した価値があった。
思い返せば、今年はこれまでにない経験を積んだ年だった。6月の日本選手権。ジャカルタ・アジア大会代表を懸けた大事な一戦で、北口はミスを犯してしまう。1投目にトップ8が確実に見える位置に投げながら、納得がいかず自らファウルにした。その過信の代償は大きく、その後、十分な記録を残すことができずトップ8から漏れ、4回目以降に進むことができなかった。
自分の調子と動き、記録がかみ合わず、周囲からのアドバイスもすべて試そうとして悩んでしまうなど、精神的に不安定な時期だった。
「今年はしっくりきた投げは日本インカレの1回だけ。日本記録(63m80)を毎回狙っていたので満足のいくシーズンではなかったです」
そう北口は総括するが、得たものは決して小さくないシーズンだった。
日本選手権でトップ8を逃した北口は涙。この失敗を必ず成長につなげるはずだ(写真/椛本結城)
北口は女子やり投界の至宝だ。
北海道旭川市出身。幼少期から水泳を習い、小学生からバドミントンに親しんだ。旭川東高に進んでからも競泳でインターハイを目指すつもりでいた。陸上部顧問の先生の勧めで陸上部に入ったものの、当初は競泳と並行していた。
中学卒業時に身長175㎝、そして天性の肩の柔らかさと強さで、陸上を始めてわずか2カ月で北海道大会やり投で優勝。インターハイにも出場した。それからは、2年時に全国インターハイ制覇、高3の世界ユース(18歳未満の大会)では、規格が少し軽い(600gではなく500gのやりを使用)とはいえ、日本人で初めて世界大会での“世界一”の称号を手にしている。
高校記録更新、日大進学後はU20日本記録更新と、順調に成長を遂げた。しかし、大学1年時にはリオ五輪を目指すなかで右ヒジの靭帯を痛めてしまう。2年時以降は指導体制も変わり、思い悩む時期も長かった。
「今は自分でメニューを組み立てながら、先輩方にアドバイスをもらっています。ただアドバイスをもらうだけでなく、自分がどんな状態かを少し説明できるようになってきたと思います」
この3年間、さまざまなアクシデントや経験も、北口が本物のやり投選手になるために必要な過程だった。
昨年は台北ユニバーシアードには出場したものの、大学に入っての3年間はオリンピック、世界選手権、そしてアジア大会とシニアの国際大会には出場できていない。「海外遠征に行くたびに感じるのは、世界ユースチャンピオンとして評価してくださり、知っていてくれるということ」。だからこそ再び世界の舞台に立ちたい。
まだまだ荒削りで、助走を生かし切れず、記録も精神面も波がある。足りないことは山ほどあるが、磨く場所が無限に残っており伸びしろの証しでもある。その潜在能力は、並み居る男子投てき選手たちが絶賛し、羨むほど。
この冬はウェイトトレーニングも含め、さらなる土台の向上とフォームの安定に取り組む。目標は来年のイタリアでのユニバーシアードと、ドーハ世界選手権だ。
「今でも62m、63m、日本記録は狙えると思っています。まずはそこを安定させていきたい」
もう一度言う。北口榛花は世界でメダル争いができる、日本陸上界の至宝なのだ。
文/向永拓史
世界のトップクラスとして活躍できる能力を秘める北口。まだまだ伸びしろ十分だ(写真/中野英聡)
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