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2018-08-10

三重インターハイ 悔しさもありながら強豪校の強さ見せる 洛南・東大阪大敬愛・相洋・埼玉栄

8月2~6日まで、三重県伊勢市で行われたインターハイの陸上競技。毎年、総合優勝を争う上位チームが、なかなか苦しい戦いを強いられたり、アクシデントがあったりした。それでも強さを見せたチームたちを紹介する。

写真:三重県・伊勢市で行われたインターハイの陸上競技(写真/椛本結城)

総合4連覇を狙った洛南

 昨年の山形インターハイで、史上初の男子総合優勝3連覇を成し遂げていた洛南高(京都)。今年は大エースこそいないものの、多種目にわたって有力選手がおり、4連覇を目指して戦った。

 初日には、主将を務める野口航平(3年)が400mで3位に食い込んで勢いをつけた。2年ぶり優勝を狙った4×100mRで7位、800mで山岡龍輝(2年)が7位としぶとく得点を重ねる。

 だが、日本人リストトップだった3000mSCの三浦龍司(2年)が予選で微妙な判定で失格となってしまう。

 3連覇を狙った4×400mRで5位にとどまり、最終的に洛南高は19得点で総合3位。惜しくも総合4連覇は逃がした。野口は「苦しい1年でしたが、洛南として当然4連覇を狙ってきました」とチームメイトたちを誇った。

 3連覇を狙った4×400mRで5位にとどまり、最終的に洛南高は19得点で総合3位。惜しくも総合4連覇は逃がした。野口は「苦しい1年でしたが、洛南として当然4連覇を狙ってきました」とチームメイトたちを誇った。

 来年は王座奪還に向けて、受け継がれてきた洛南魂を見せそうだ。

洛南の主将を務めた野口(写真/長岡洋幸)

負けてなお強さ見せた東大阪大敬愛

 東大阪大敬愛高(大阪)は、女子総合5連覇を狙っていた。だが、その道のりは苦難の連続だった。地区大会では、400mHで有力だった宮出彩花(3年)が敗退。インターハイ本戦では、初日の400mで優勝候補の大西愛永(3年)が4位にとどまってしまう。

 さらに400mHでリストトップの德永弥栄(3年)が予選敗退、800mでは宮出が熱中症で準決勝欠場。走幅跳で大西が予選敗退と得点を稼げずにいた。

 しかし、800mでは先輩の分もと有広璃々香(2年)が6位、やり投では期待の1年生・中村怜が46m22で7位に入った。

 そして、4連覇を果たして“代名詞”ともいえる最後の4×400mR。何とか回復した宮出が1走を務め、有広、田和りな(2年)とつなぎ、最後はエース・大西が前を追った。

 惜しくも届かなかったが、3分42秒39で2位。アクシデントがありながら、さすがの強さを見せた。

 大西は「敬愛のマイルに憧れて」入学した選手。大西や宮出がそうだったように、先輩たちに憧れた後輩たちが、「来年は自分たちで総合を取る」と走り出すことだろう。

敬愛のエースとして牽引した大西(写真/中野英聡)

相洋、マイルアベックVは来年へ

 女子は見事に400mを制した髙島咲季(2年)を軸に、最終日の4×400mRも制した相洋高(神奈川)。

 男子も、主将のメルドラム・アラン(3年)が400m6位、800mではクレイ・アーロン竜波(2年)が1分50秒05で優勝。勢いに乗っていた。

 史上初の4×400mR男女アベック優勝を狙った最終日。女子の直後に行われた男子は、1走のクレイ、2走の森木龍弥(2年)、3走の山本毅(2年)と順調につないでトップを走った。

 しかし、アンカーのメルドラムとのリレーで、バトンを落とすミス。7位に転落し、選手たちは涙をのんだ。

“リレーの相洋”と称されるほど、その総合力と調整力は群を抜く。だが、相洋高は、これまでも男女ともリレーでミスがあったとしても、その悔しさを糧として成長し、結果を残してきた。男子マイルも3人が残り、来季は“リレーの相洋”としての意地をきっと見せる。

400mで2年連続入賞のメルドラム(写真/長岡洋幸)

奮闘した下級生中心の埼玉栄

 5日間通して、埼玉栄高(埼玉)の選手たちが存在感を発揮した。

 下級生が中心のチーム。特にスプリントのエースの鈴木一葉(2年)は100mで、決勝は惜しくも4位にとどまったが、準決勝で11秒71(+1.6)=高2歴代4位の好記録をマークした。200mでも24秒59と、来季のスプリントの中心となりそうだ。

 さらに、走幅跳では多くの6mジャンパーがそろうなか、昨年の全日中3位の梅宮悠(1位)が5m91(+1.8)で3位に食い込んだ。

 その2人を擁する4×100mRは、予選で46秒18と好タイム。だが、準決勝でバトンミスがあり敗退してしまった。それでも、最終日の4×400mRでは4位。

 鈴木、梅宮のほか、4×100mRの3走・大野瑞奈と4走・菊池愛華が1年生。4×400mRの1走・塩味未琴、2走の吉田詩央が2年生。

 楽しそうに走り回る姿が印象的なチームで、バトンミスを含め、タイトルを逃した悔しさが、さらに成長を加速させそうだ。

 これまで数多くのインターハイ・チャンピオンを輩出し、過去、女子総合優勝18度を誇る名門。来年は久しぶりに総合優勝争いを展開するかもしれない。

100m、200、両リレーと大車輪の活躍だった鈴木(写真/長岡洋幸)

* * * *

 いわゆる“強豪校”は、批判の的となりがちで、「強い選手を集めている」など先入観で判断されることも多い。だが、毎年のように有力選手を送り込むこと、指導することの大変さ、そして伝統を背負う選手たちの重圧と強さはあまり理解されにくい。過酷なインターハイ路線を乗り切る力、継続するチーム力は、しっかりと評価されるべきだ。

 三重インターハイで苦しんだ強豪チームの選手たちの奮闘もまた立派だった。

 来年の舞台は沖縄。すでに、そこに向けた戦いはスタートしている。

文/向永拓史

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