アメリカンフットボールの関東大学リーグ1部TOP8は、10月17日に開幕節の残り2試合があり、東京大学ウォリアーズと中央大学ラクーンズが対戦、東大が逆転で中大を破った。
東京大学ウォリアーズ○10-7●中央大学ラクーンズ(2020年10月17日)
先制したのは東大。第1クオーター(Q)6分、中大のミスに付け込んで得たチャンスからK柳瀬達矢が33ヤードのフィールドゴール(FG)を決めた。しかし、中大は第2Q開始早々に、QB小島大地がWR岡崎光太郎に36ヤードのタッチダウン(TD)パスを決めて逆転した。中大はその後も攻め続けたが、得点できず、中大が7-3とリードして、後半へ折り返した。
ほぼ自陣内でのオフェンスが続いた東大だが、第3Q後半から始まったドライブで、QBボストロム丞慈(じょうじ)のパスとランを中心にチャンスを作った。第4Q3分、ゴール前2ヤードからボストロムが飛び込んでTDを奪い、10-7と逆転した。東大は、ディフェンスが粘り強く守り、中大の最後のオフェンスをパスインターセプトに仕留めて、逃げ切った。
わずか、3点の差。だが、中大は焦り始めていた。次のドライブではゴールまで36ヤードの地点でFGを選択、53ヤードと距離があったトライは失敗する。
中大は、次の東大のオフェンスをタイムアウト3回を使って何とか止め、パントに追い込んだ。残り時間は1分半。最悪のケースでも3点を狙えばよい。東大のパントは25ヤードでボールが止まったが、イエローフラッグが飛んでいた。ランニング・イン・ツー・ザ・パンターの反則だった。
5ヤードの罰退でも、なお4thダウン4ヤードだったので、東大は依然としてパント選択だったが、蹴り直したボールはラッキーバウンド、ゴール前1ヤードで止まった。中大の最後の望みをかけたオフェンスは、自陣1ヤード、ゴールまで99ヤードからのスタートとなった。しかもタイムアウトがないため、この試合好調だったランもほぼ使えない。
中大QB小島は、2度ファーストダウンを更新した。この時、サイドラインで森HCが選手に与える指示が耳に入った。
「ファーストダウンは、取られても構わん。相手にタイムアウトはない。ロングゲインを防げ。ラフィング・ザ・パサー(の反則)だけは絶対するな」
至極基本的な、当たり前の指示だった。しかし、東大の選手は、大半が高校まで競技未経験だ。どうかすると2、3年前まではアメフトそのものを知らなかった選手も普通にいる。当たり前のことをなおざりにせず、きちんと的確に説明するのが森流だった。
悪戦苦闘しながら40ヤードを前進した中大オフェンスだったが、もう時間はなかった。小島が投げたパスは東大DB滝井陵介の手に収まった。パスインターセプト。試合は終わった。
中大のオフェンスは、トータル269ヤード、ファーストダウン15回。東大は154ヤード、ファーストダウン8回。東大は戦力的な劣勢の中でタイトに戦い、前後半で計2回レッドゾーンに侵入したチャンスを、2回とも得点に結びつけた。ディフェンスも「曲がっても折れず」に戦い続けた。
筆者は、東大の勝利の理由がもう一つあったと考える。東大のサイドラインを移動する際に負傷者用のテントの後ろを何度も通ったが、そのテントには選手はおらず、使われた形跡もなかった。
中大は攻守ラインに大きくフィジカルな選手が多い。昨年秋のこのカードでは、その差が如実に出て、完敗したという。その中大と、初冬のような気温と悪天候の中、僅差のせめぎ合いを演じながら、傷んで手当てを受けるような選手がほぼいなかったということだ。
東大は、チームの全体練習は、晩夏までできなかったというが、ウェートトレーニングなど、フィジカルの強化は、選手一人一人の努力で可能だ。それがオフェンス・ディフェンス共に最後まで戦い抜いた結果につながったのではないか。
開幕節の、日大・法大戦のような、高いタレントレベルのチームが繰り広げるシュートアウトゲームは、フットボールの醍醐味だ。ただ、この試合で森・東大ウォリアーズが見せた戦いぶりも、「これこそがフットボールだ」というエッセンスにあふれていた。
【写真・文/ 小座野容斉】
東大・森清之HCの一問一答
【東大vs中大】僅差の戦いを振り返る東大・森清之HC=2020年10月17日 撮影:小座野容斉
(この勝利について)
新型コロナの影響で、準備としては、例年のチームでいえば、4月終わりか5月初めぐらいの状態でした。それを、4年生選手を中心に、時間がない中準備をしてくれた。試合に始めて出るような選手も結構いたのですが、選手やスタッフがよく頑張ってくれたと思います。
(本格的な練習の開始が、私立大に比べて遅れたと思いますが)
僕らは、こういう特別なシーズンでなくとも、スポーツ推薦入学があるわけでもなく、いろいろなことで、私立大学の強豪校と比べたら、不利というかハンデは常にあります。それを何らかの方法でキャッチアップするのが、僕らに与えられた宿命。
たまたま今年は、こういうシーズンになって、そのハンデは大きくなったかもしれない。けれども、日本一になりたいというのなら、その状況を腹くくって受け入れて何とかしないと、永遠に勝つことはできない。だから、それを言い訳にはしないようにしようと、チームでは言ってきました。
もし今年、これで、全然ダメだったということになるようなら、普通のシーズンだって勝てないし、「日本一」を口にする資格がありません。
(雨は、味方しましたか?)
選手にも言っていたのですが、たぶん、今日の内容を見ても、力は中大さんの方が1枚も2枚も上でしょう。だから、条件が悪くなって、不確定要素が増えるほうが僕らにとってはチャンスがあるなと。もちろん僕らもやりにくいが、それ以上に中大さんの方がやりにくいから、正直に言って、雨はラッキーだなと思っていました。
(第3Q途中まで、あまりQBボストロムにパスを投げさせなかったが、作戦だったのですか)
本当だったら、もう少しパスを投げさせたかったのですが、雨でボールが手につかなかった。
彼はサイズもあるし、素材としては、1年生で入った時から期待していました。怪我などもあって、なかなか試合に出られなかったが、本来なら一昨年か昨年には、今のこれくらいのレベルに到達できていたと思う。なかなか、僕らもうまく教えることができなかったのですが、この1カ月くらいで、急激に伸びた。
本人も、フルゲームやったのが、今日が初めて。自信につながったと思う。彼の才能を考えると、まだまだこんなものではないので。残り試合は少ないですが、非常に楽しみにしています。
(中大の須永HCとは、Xリーグ以来、久々の対戦でしたが)
今日も朝、競技場の駐車場でばったり会って「どちらかが雨男だな」なんて会話をしました。準備の段階では、中大の試合だけではなくて、Xリーグの(ライズの)試合のビデオも、コーチと一緒に分析しました。まあ、いろいろ(対策を)考えたのですが、結局、試合中は、そういう分析を使うような余裕もなく、自分たちのやるべきことに精いっぱいでした。
特に、逆転してからはどうしたら最後まで逃げ切れるか、そればかり考えていました。
【東大vs中大】中大ディフェンスの選手を3人引きずり突進する東大QBボストロム。ラン17回75ヤードを記録した=2020年10月17日 撮影:小座野容斉
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