1敗の德勝龍と2敗の正代の平幕2人に絞られた優勝争い。先に土俵に上がった正代が負ければ、德勝龍の優勝が決まるが、正代は気合の入った相撲で御嶽海を押し出し、望みをつないだ。

※写真上=勝てば優勝が決まる德勝龍が前に出続け、ついに貴景勝を寄り切った
写真:月刊相撲

 満員の観衆から大歓声が沸き起こる中、結びの一番を迎えた。德勝龍が勝てば優勝決定、負ければ決定戦となる。貴景勝には大関の意地があり、簡単に優勝させるわけにはいかない。

 貴景勝はモロ手突きから突いていったが、吸い込まれるように左を差してしまい、左四つに組み止められてしまう。德勝龍は左上手も取って胸を合わせて寄り立てる。こうなると貴景勝は分が悪い。懸命に左から掬ったり、右から突き落としを見せるが、ついに土俵を割り、德勝龍の初優勝が決まった。

 その瞬間、顔をくしゃくしゃにして男泣きの德勝龍。支度部屋のテレビでこの一番を見つめていた正代は天を仰いだ。

「振られて危なかったんですけど、行くしかないと思って前に出ました」と德勝龍。

 木瀬部屋からは初の優勝力士の誕生。再入幕力士の優勝も初めて。奈良県出身としては98年ぶり、幕尻優勝は20年ぶりの記録ずくめの優勝となった。

「ボクなんかが優勝しちゃって、よかったんですかね」と謙虚な発言をしたが、德勝龍は悪くない。悪いのは取組編成をする審判部だ。20年前幕尻優勝した貴闘力は終盤に関脇、横綱、横綱、関脇にあてられての優勝。今場所の德勝龍は千秋楽の貴景勝戦が唯一の役力士との対戦だった。12日目ぐらいから上位と当ててほしかった。

 それでも、終盤戦はプレッシャーと戦いながら、最後は大関を破っての堂々たる優勝だ。場所中に急逝した恩師の近大相撲部伊東勝人監督にいい報告ができる。

「監督が見守ってくれているだけじゃなく、一緒に戦ってくれていたんだと思う」と涙を拭った德勝龍。後半戦の5日連続突き落としの逆転は、伊東監督が背中を押してくれたのかもしれない。

 年齢的にはベテランの域だが。「まだ33歳だと思って頑張ります」と語る。次の目標は三役昇進だ。

文=山口亜土

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