※写真上=世界の表彰台レベルの領域となる8m40をマークした城山
撮影/中野英聡(陸上競技マガジン)
まず、橋岡は1回目の跳躍でいきなり8m32(+1.6)の日本新記録を樹立した。橋岡は今年4月のアジア選手権でマークした8m22の自己記録を10cmも更新。また、前日本記録は橋岡が現在、指導を受けている森長正樹コーチが1992年に樹立した8m25で(ちなみにこのときの風速も+1.6)、橋岡はその記録を27年ぶりに7cm上回った。
一方、同じ1回目には津波響樹(東洋大4年)も2年前、同じ会場で行われた日本学生選手権での優勝時にマークした自己記録を12cm更新する8m21(+2.0)の日本歴代3位のジャンプを見せると、2回目でその記録をさらに伸ばし、8m23(+0.6)。競技終了時には日本歴代4位となったが、ハイパフォーマンスを見せた。
しかし、クライマックスはここからやってくる。
3回目の跳躍。社会人3年目の城山正太郎(ゼンリン)は橋岡の記録を8cmも上回る8m40(+1.5)をマーク。この記録は2019年世界ランク2位、1位に1cmに迫るもので、城山にとっては東海大北海道4年時にマークした8m01の自己記録を39cmも更新するものだった。
城山は北海道函館市出身。中学、高校、大学、そして社会人となった今も北海道を拠点に競技を続けている選手で、高校時代までは全国レベルでは無名の選手だった。大学も関東・関西ではなく地元の東海大北海道に進学。しかしそこからシニアレベルの選手として着々と力をつけきた。
そんな異色の選手が刻んだ8m40の金字塔。まずはドーハの世界選手権で、その姿をぜひ見てみたいものだ。

日本記録を城山に塗り替えられたものの、6本中5本で8m10超の跳躍を見せた橋岡
撮影/中野英聡(陸上競技マガジン)
一方、日本記録をすぐに塗り替えられた橋岡だが、6回の試技トータルで見たら、その実力が抜きんでていることがわかる。3回目に8m21(+1.7)、そして6回目には追い風参考ながら8m27(+2.1)をマークしたのみならず、5本目の7m64以外はすべて8m10超えという驚異的なアベレージ。文字どおり世界で戦う力を備えており、来月の世界選手権がますます楽しみになってくる。
城山、橋岡、津波の3選手は今回、ドーハ世界選手権参加標準(8m17)より高い東京五輪の参加標準(8m22)も突破。
他種目でも日本新が連発した福井の夜。その起爆剤となった男子走幅跳のハイレベルな戦いは、語り継がれることだろう。
文/牧野 豊(陸上競技マガジン)