堂々たる太鼓腹、色白、土俵入りの見事さは「相撲人形のごとし」と形容された第42代横綱鏡里。右四つ、左上手を取れば磐石で、太鼓腹を突き付け悠然と寄り切る。堅実だが地味な取り口のため爆発的人気はなかったが、安定した成績を残した。
写真上=幕内で26度目の対決となる昭和31年秋場所14日目、栃錦をつかまえた鏡里が巨腹を利しての寄り切り。この場所、鏡里は14勝1敗で4回目の優勝を飾る
写真:月刊相撲
多彩な技で土俵を沸かせた名人横綱。
巨体の上位陣に食らいつく姿は、
「マムシ」と呼ばれた。
名門・春日野部屋での猛稽古で小柄な体と
技術を磨き上げ、賜盃を抱くこと10回。
ライバル若乃花との対決で戦後黄金期を築き上げたが、
入幕同期でしのぎを削った鏡里の存在も忘れてはならない。
※平成28~30年発行『名力士風雲録』連載「ライバル列伝」を一部編集。毎週金曜日に公開します。
初土俵は栃錦の方が2年早く、初めての顔合わせは昭和18年夏場所の幕下時代。左四つがっぷりから栃錦(当時大塚)に上手を切られ、出し投げのような上手投げを食った鏡里は、食らいついたら離さないそのしぶとさ、全身に異様な闘志を燃やす「マムシ」の根性に驚いたという。
入幕は昭和22(1947)年夏場所の同期。栃錦は話題にも上らなかった一方、幕内での初対戦も、鏡里が下手投げで栃錦を降し、大関昇進も先んじた。右四つからの吊り寄り、またはカンヌキからの極め出し、極め倒しで小柄な時代の栃錦を苦しめた。
昭和27年秋場所、初優勝の栃錦に極め出しで唯一の黒星を付け、28年初場所千秋楽は、栃錦を寄り切りで降し初優勝。鏡里は、またも栃錦に先行して横綱に昇進した。しかし、のちに栃錦が体重を増し、本格的な押し寄り相撲に変わったころから思うように勝てなくなった。横綱同士での戦績は鏡里の3勝6敗。それでも二人の最後の対戦となった33年初場所千秋楽は、右四つ両廻しを十分引きつけ鏡里が寄り切り。これが、鏡里の土俵人生最後の一番でもあった。
『名力士風雲録』第5号栃錦掲載
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