close

2020-08-21

【連載 名力士ライバル列伝】 横綱栃錦編 最大のライバル、横綱初代若乃花

年齢差は栃錦が3つ上、横綱昇進年月も3年3カ月、栃錦のほうが早いが、両者が並立した時代は濃密で、二人の対決を軸に戦後大相撲界の黄金期が築き上げられた。

※写真上=昭和28年春場所7日目、この日まで6連勝の大関栃錦と、前頭筆頭若ノ花の対決は、栃錦の元結が切れ、ザンバラ髪になる「マムシ」と「鬼」の死闘。以後、二人の対決は、日本国中を沸かせる好勝負になった
写真:月刊相撲

多彩な技で土俵を沸かせた名人横綱。
巨体の上位陣に食らいつく姿は、
「マムシ」と呼ばれた。
名門・春日野部屋での猛稽古で小柄な体と
技術を磨き上げ、賜盃を抱くこと10回。
若乃花というライバルの存在で、
戦後の低迷期から相撲黄金期を築き上げた。
※平成28~30年発行『名力士風雲録』連載「ライバル列伝」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

壁を乗り越え横綱昇進
黄金の栃若時代を構築

 昭和28(1953)年春場所、大関2場所目の栃錦と、前頭筆頭で昇竜の勢いにあった若乃花(当時若ノ花)は、6度目の対戦で壮絶な戦いを繰り広げた。激しい攻防の末、水入り。再開後も土俵狭しと動き回り、栃錦の左外掛けでようやく決着した。この大一番こそ「栃若時代」正真正銘の幕開けで、以降両者の対戦は屈指の好取組として、毎場所熱狂的に迎えられることになる。

 若乃花は大事な一番で、何度も栃錦に苦杯をなめさせられた。敗れた昭和29年秋、30年春は、いずれも大関昇進を懸けた場所。それから3年後の33年初場所14日目、取り直しの末に栃錦を破り、2度目の優勝と横綱の地位を手繰り寄せた。宿敵栃錦の壁を乗り越え、ついに並び立った2人は、熾烈な優勝争いを展開する。

 昭和34年夏場所千秋楽、全勝栃錦を1差で追う若乃花は、本割で栃錦の全勝を阻み、決定戦で寄り切って逆転優勝を決め、関脇時代の雪辱を果たした。35年春場所、史上初、横綱同士の千秋楽全勝対決を制すと、翌夏場所3日目、栃錦が引退。栃若時代の幕が閉じた。若乃花は同年名古屋、秋場所と連覇、栃錦の優勝10回に並ぶが、好敵手を失い気力、体力の衰えは隠せず、「柏鵬」の脇役に回り時代を交代した。

『名力士風雲録』第5号栃錦掲載 

おすすめ記事

相撲 2020年8月号

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事