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2020-10-29

松井大輔に聞く正しい「ファーストタッチ」の身につけ方[前編]

2018シーズンから横浜FCでプレーしている松井大輔

フランスを中心に海外で活躍し、2010年には日本代表としてワールドカップのベスト16進出に貢献した松井大輔。創造性あふれるプレーや高いドリブルスキルでファンを魅了してきたプロ21年目の男に、正しいファーストタッチを身につけるための心構えを聞いた。

取材・構成/鈴木智之
写真/©YOKOHAMA FC

出典:『サッカークリニック』2020年11月号

同じことを繰り返し、自分の感覚を磨く

――プレーにおけるファーストタッチの重要性について、どのように考えていますか?

松井 ファーストタッチは一番大切なプレーだと思います。ファーストタッチがうまくいかないと、ドリブルも始められませんし、パスも出せません。周りが見えなくなってしまいます。すべてのプレーの基本ですし、ファーストタッチでプレーが決まるといっても過言ではないと思います。

――松井選手が考える良いファーストタッチとは、どのようなものになりますか?

松井 まずは自分がイメージした場所にボールを置けることが重要です。相手選手が寄せに来た際は最初にイメージした場所とは違うところにボールを置いたり、触り方を変えたりするなどして対応します。それが良いファーストタッチだと思います。

 試合で良いファーストタッチをするには、反復練習しかありません。同じことを繰り返して、自分の感覚を磨く、これに尽きると思います。

――ポジションによって、良いファーストタッチは変わりますか?

松井 変わると思います。センターバックでプレーする右利きの選手であれば、右サイドバックにパスを出せる位置、ボランチに縦パスを出せる位置、フォワードや前線の選手を狙ってロングキックを蹴ることができる位置、この3つの選択肢を持てる位置にピタッとボールを止めるのが理想です。ボランチであれば、360度どこからでも相手がプレッシャーをかけてくるので、後方から寄せられた場合でも相手をかわせるところにファーストタッチでボールを置くことが大切になります。

 どのポジションであっても、ボールの置きどころやそのためのファーストタッチは次のプレーに関わってくるので、大切だと思います。

――松井選手はサイドのタッチライン際でボールを受けてゴール前にドリブルでカットインするプレーが多いと思いますが、サイドでプレーする際のファーストタッチについては、どのようなことを意識していますか?

松井 サイドでプレーするときは、ボランチかサイドバックからボールが来ることが多くなります。その際に、自分が相手ゴールのほうを向いた状態でボールを受けているのか、それともサイドバックのほう(後ろ)を向いて受けているのかによって、ファーストタッチは変わってきます。フランスリーグでプレーしていたときは、ファーストタッチでボールを置く位置が悪いと、体ごと持っていかれて奪われることが多かったですね。移籍して最初の頃は、日本との違いを感じました。

――具体的にはどのようなことでしょうか?

松井 相手が寄せに来た状態で足元にボールを止めると、相手は足ごとボールを奪いに来ます。フランスリーグには背が高くて足が長い選手が多かったので、背後から回り込むように足を出しても、ボールに届くんです。相手と向き合った状態で正面にボールを止めると、足を出して奪われてしまうので、ファーストタッチで角度をつけてボールを止めたり、手を使って相手を飛び込ませないようにブロックしてからコントロールしたりするなど、工夫していました。

――特にアフリカ系の選手が多いフランス2部リーグは、日本とは様子がずいぶん違ったようですね。

松井 体ごとボールを奪いに来るので、移籍した当初は2カ月に1回は足首を削られていました。その後、チーム(ル・マン)が昇格して1部でプレーしたのですが、2部での経験がなければ、1部でプレーするのは難しかったと思います。

 

取材・構成/鈴木智之

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