close

2020-11-01

井上尚弥の新たな出発! マロニーを右一撃KOしラスベガス初陣飾る

ダブルジャブからの右、あるいはタイミングを合わせたいきなりの右が目立った

全ての画像を見る
“モンスター”華麗に襲来! 31日(日本時間11月1日)、アメリカ・ラスベガスのMGMグランド・コンベンションセンター“ザ・バブル”で行われたWBAスーパー・IBF世界バンタム級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオン井上尚弥(27歳=大橋)が挑戦者のWBA2位、IBF4位のジェイソン・マロニー(29歳=オーストラリア)を7回2分59秒KO。WBA王座4度目、IBF王座2度目の防衛に成功した。


 世界最大手のひとつ、トップランク・プロモーションとの契約初戦、憧れの聖地ラスベガス初登場。WBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)優勝をひと区切りとした新たなスタート。「第2章の始まり」と自ら語った井上は、入場曲を『Departure』(旅立ち)に戻し、“ザ・バブル”のリングに颯爽と登場した。
 強く、そして速い左ジャブを上下に散らし、立ち上がりからプレッシャーをかけることに成功した井上は、フィジカルの強さに自信のあるマロニーが接近すれば、得意の左ボディブロー、あるいは中からの右アッパーカットでその戦いをも回避せざるをえない状況に詰めた。

 フットワークを使って遠い距離を築き、井上の打ち終わりを伺うスタイルにシフトしたマロニーを、決して強引に攻めていかない。
「ガードも堅くて、なかなか当てられないという印象を持った」と井上は語るが、おそらく豪快に攻め込んでいっても倒し切れたはずだ。が、あくまでも丁寧に、そして一瞬の隙を逃さない。“万が一”をも細心の注意をはらって避ける。そういう鉄壁の心が感じられた。それがまた、この試合に懸ける想い、この試合が持つ意味合いの理解度をいっそう感じさせた。

 井上の右に対して左フック、左に対して右を狙うマロニーだが、井上のスピード&パワーに気おされ、また井上の反応の良さにミートはかなわず。逆に、それらを得意とし、繊細さでも上回る井上が、「これが真の形だ」と言わんばかりに、マロニーの攻撃に右クロス、右カウンター、左フックのカウンターを合わせ、ヒットを奪っていったのは印象的だった。

 序盤にしてすでにマロニーのタイミングやブローの角度を見切っていた井上は、ガードを固めて弾き返し、攻撃につなげる姿勢も見せたが、「ヒザを使ってブロックしよう」という父・真吾トレーナーのアドバイスを聞き、下半身起動の防御を意識し直す。


ダウンを奪ったのは左フック、右ストレートといずれも鮮やかなカウンター。決してパワーパンチだけではない姿を披露した

 5回、下がってロープを背負ったところに、左ストレートから右を叩きつけられた井上だが、ワンフェイントを入れてからの右ストレートでバランスを崩させ、6回には「(マロニーが)左ジャブのダブルを打つときに、突っ込みすぎる癖」を突いて、得意の左フックカウンターを合わせてダウンを奪う。そして7回、ノーガードでリラックスした状態から左ジャブを上下に突き刺していくスタイルでマロニーの攻撃を誘い、右の打ち出しに右ストレートをドンピシャリ。その一撃で崩れ落ちたマロニーは、立ち上がろうとしたものの、キャンバスにふたたび沈み込み、テンカウントが数え上げられた。


真吾トレーナーとともに勝利をアピールする。決して派手な喜び方はせず、嬉しさをかみしめている様子だった

「フィニッシュパンチは納得のいくもの。攻め切れなければ、待つ練習もしていた。日本で練習してきたパンチも出せたし、(ノニト)ドネア(フィリピン)戦で学んだ状況によっての判断力で、あの試合よりパワーアップしていると思う」と振り返った井上は、現地放送のESPNに今後を訊かれると「(WBC王者ノルディーヌ)ウバーリ(フランス)対ドネアの勝者、もしくはWBO王者の(ジョンリエル)カシメロ(フィリピン)。タイミングが合うほうと戦いたい」と、3団体、4団体統一戦を目指していくことをあらためて明言した。
 ジャブ主導のボクシングを徹底し、マロニーのスタイルに応じて、コンビネーションでなくカウンターパンチで対応する。もちろんまだまだ披露していないバリエーションは豊富。聖地ラスベガス発の「ナオヤ・イノウエ」は、パワー&スピードだけの“モンスター”ではないことをアピールできたはずである。
 井上の戦績は20戦20勝(17KO)。初のKO負けとなったマロニーの戦績は23戦21勝(18KO)2敗となった。


ラスベガスでの第2戦を、またしてもKOで終えた平岡

 井上尚弥同様、トップランク・プロモーションと契約する長身サウスポーの平岡アンディ(24歳=大橋)は、リッキー・エドワーズ(30歳=アメリカ)と昨年11月30日に続くラスベガス第2戦(スーパーライト級8回戦)。前の手のやり取り、距離感、スピードで上回っていることを早々と読み取った平岡だが2回、至近距離で回り込む際に、右フックの相打ちを食ってしまう。さらに、左ストレートの打ち終わりに右アッパーカットも狙われた。

 しかし、ここからの素早い修正力が、平岡の成長を感じさせる部分。3回、立ち上がりから下がってカウンター狙い一辺倒のエドワーズを、なおも左ストレートで攻め、右のリターンをボディワークでかわし、左アッパーを合わせてダウンを奪う。クリンチ際も注意したいポイントだったが、ここでも頭をずらして対応。続く4回、2回に貰ったお返しとばかりに、右フックの相打ちのタイミングを敢えて築き、今度は確実にヒットしてヒザを着かせると、左右フックの連打から左フックでふたたび倒す。なおも立ち上がったエドワーズを連打で攻め立てて、2分20秒レフェリーストップに持ち込んだ。
 平岡の戦績は16戦16勝(11KO)。エドワーズの戦績は17戦12勝(3KO)5敗。

 実力差の感じられる相手に対し、強引に正面から攻める姿勢となった平岡だが、本来はもっと柔軟にサイドの動きもできる逸材。現在は、日本1位にもランクされている。大橋秀行会長によれば、来年はWBOアジアパシフィック王座も含めて、なんらかのベルトを狙っていく模様で、タイトル戦になれば多くの引き出しを出さざるをえない展開となるだろう。

ボクシング・マガジン 11月号 | BBMスポーツ | ベースボール・マガジン社

2020年10月15日発売BBM0292011A4判定価 本体1045円+税ContentsCOLOR GRAVURE【10.31ラスベガス展望大特集】井上尚弥「前半から中盤で倒す!」ジェイソン・マロニー「バンタム級の誰にでも勝てる」【展望...

文_本間 暁(WOWOW視聴)、写真_ゲッティイメージズ

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事