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2020-12-20

【ボクシング】カネロ・アルバレス強し。身長191cmのスミスをサンバッグ!

体格差も関係ない。アルバレスが一方的に攻めつけていった

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WBAスーパー世界スーパーミドル級タイトルマッチ、スーパーチャンピオンのカラム・スミス(30=イギリス)対WBAレギュラーチャンピオンの挑戦者サウル・アルバレス(30=メキシコ)の12回戦は19日(日本時間20日)、アメリカ・テキサス州サンアントニオで、空位のWBC世界同級王座決定戦を兼ねて行われ、アルバレスが一方的に攻め続けて大差判定勝ちを手に入れた。

内容的には大差がついたGGGとカネロ

 ミドル級周辺のふたつの大車輪、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)とアルバレスが、連日で登場した冬の陣。すっかり明暗を分けたと言ってもいいのだろうか。その表現がいささかオーバーなら、38歳のゴロフキンが勝ち得たのは薄明かりの僥倖に過ぎなかったのに対し、アルバレスのそれはまさしく絶頂にある“強さの権化”のようだった。

 ゴロフキンは4度倒しながらも、無名挑戦者相手にいささかの疑問符がつくパフォーマンスしか披露できなかった。アルバレスのほうはどうか。昨年、豪打のライトヘビー級、セルゲイ・コバレフ(ロシア)に続いての巨人狩りだ。自分より身長で18センチも高く、ここまで27連勝19KOのスミスからダウンこそ奪えなかったが、終始、圧倒し続けての勝利。残した印象度には数段以上もの差が見えたのだ。

リーチで20センチ近く劣るというのに、アルバレスのジャブが効果的だった

カネロはジャブから支配し始めた

 立ち上がりこそ、様子見気配のアルバレスだったが、初回の2分あたりにはギアをトップに入れる。まずはジャブがよく伸びる。はるかに大きく、さらに慎重に距離を置くイギリス人の顔を、この左パンチで何度も弾いた。さらに鋭い足取りでステップインし、豪快なライトを叩きつけた。

 4ラウンドにはアッパーカットを狙うスミスに、右ストレートをねじ込む。そして、とっておきの左フックのレバー打ち。攻撃は加速する。鋭いワンツー。スミスがアッパーで反撃すれば、同じパンチで打ち返す。

 パンデミック下の興行、巨大なアラモドームのキャパシティに規定の3分の1きっかり、1万5000の大観衆は、ほぼすべてがメキシコのスーパースターのサポーターだ。場内はもう、やんやの大騒ぎ。“カネロ”の重いパンチを肌身で実感したスミスは、このラウンドを境にどんどん守備的になっていった。

激しい攻撃に巧みな守備も織り交ぜる。後半戦はとくに一方的な展開に

巨大なネズミを小さな猫がいたぶるように

 6ラウンドを越えてからは、ことさらにワンサイドマッチの様相を呈していく。カネロがとにかく素晴らしい。ムンド(世界)のニックネームを持つスミスが、世界一周でも目指すようにリングを駈け廻ろうとするのだが、的確なステップで真正面の位置をキープすると、激しいプレスをかけていく。体をのけぞらせるスウェーバックと、頭を振ってかわすスリッピングアウェー、小さなバックステップをミックスさせた極上の守りで、相手の反撃を封じる。そして強烈な左右パンチ。ガードの上からでも、体重を目いっぱい乗せて叩きつけているから威力は満点だ。

 一撃強打では定評のあるスミスだが、アルバレスに圧迫され、反撃のパンチはどれも軽い。まるで小さな猫が、巨大なネズミをいたぶるようなラウンドが重なっていく。

 8ラウンド、9ラウンドは、あるいはいつKOシーンが訪れてもおかしくないほど。もはや、スミスは決定打から逃げおおせることだけが、目的になっていく。最終ラウンドには、最後までフィニッシュを狙うアルバレスに対し、スミスはクリンチを仕掛け、残り時間を表示する時計を見やるシーンもあった。

 出されたスコアは119対109がふたり、残るひとりのジャッジが117対111と、いずれも大差でアルバレスの勝ちにしていた。

「グレートな仕事だったろう」とアルバレス

カネロの次戦はサンダースか?

 4年前、アルバレスに兄のリアムがKO負けした仇討ちがかかっていたスミスだが、はるかに小さなメキシカンのパンチに怯えたような戦い方には、多くのファンもがっかりしたはず。「私は勝つためにここに来たんだ。今日はカネロが自分より上だったけど」と力なく敗戦の弁。今後はライトヘビー級転向の計画もあるが、IBF王者アルトゥール・ベテルビエフ(ロシア=15戦オールKO勝ち)らと対抗できるだけの装甲力、心の強さを不安視する向きもある。

「スミスはグレートなボクサーだ。でも、見てのとおりだ。偉大な仕事だったろう?」と胸を張ったカネロは、2021年にはゴロフキンとの対戦が話題の中心になる。この試合をストリーミング中継したDAZNのボクシングを仕切るプロモーターのエディ・ハーンは、アルバレスの次戦はビリー・ジョー・サンダース(イギリス)、GGG戦はその次としている。

文◎宮崎正博 写真◎ゲッティ イメージズ

ボクシング・マガジン 1月号

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