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2020-12-21

「第99回全国高校サッカー選手権大会」開幕直前<2> 神戸弘陵学園高校のテクニック論:後編

12月31日に始まる第99回全国高校サッカー選手権大会の1回戦で岩手県の遠野高校と戦う神戸弘陵学園高校

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相手のイメージを上回る感覚を持つ



――そうした違いは、なぜ生まれるのでしょうか?

谷 要因はいくつかあると思いますが、一番はプレーする際の落ち着きではないでしょうか。Jクラブのアカデミーには相手を見て冷静に判断できる選手が多いと感じました。そうした選手は、普段はポジショニングなどの部分でチームのコンセプトを踏まえてプレーしています。無理をせずシンプルにプレーするため、落ち着いていてミスをしません。ところが、得点場面などではコンセプトを無視して結果を残すプレーができるのです。大胆さやアイディアも持ち合わせていると感じます。

ゴールを奪うためには、相手のイメージを上回らなければなりません。私たちには理想とする崩し方がありますが、そうした「形」を上回る感覚を持つ選手を大事にしたいと考えています。そのため、選手たちには「コンセプトや正しい判断とは違うとしても、自分の感覚を信じてプレーして欲しい」と伝えています。先ほど例に挙げた江坂選手も、相手を上回る発想や常にゴールを狙う意識を持っていました。「そこから打っても入らないよ」と思うような状況でも決める場面が数多くあったことが記憶に残っています。彼に関しては「育てた」というよりは「(もともと持っていた)個性をつぶさなかった」という表現が正しいかもしれません。ただし、「発想を持たない」選手が同じプレーをしても、うまくいかずにわがままなプレーになってしまうので、その線引きは大事だと考えます。

――指導者を上回るような発想はあるが、足元の技術がついてこないという選手も多くいるように思います。

谷 アイディアを具現化する工夫が必要です。例えば、フォワードがクサビのパスを受けてからターンをしてシュートを打ちたいのであれば、ファーストタッチのボールは、軸足ではなく、打つほうの足に置くべきです。選手は自分のアイディアを実行するにはどうするべきかをイメージしながら、ドリル形式のメニューに励むべきです。そして、指導者は選手がイメージしやすいようなアドバイスをするべきです。紅白戦やミニゲームで「あのときの練習で身につけたプレーを選択してみよう」と指示するのも一つの手でしょう。

1年生の間は学んだ技術の使い道がまだ分からないかもしれません。しかし、学年が上がるにしたがって、状況を的確に判断しながら、頭の中にあるプレーを行なうための適切な技術を選択できるようになって欲しいと思います。

プロフィール


 

谷純一監督(神戸弘陵学園高校/兵庫県)

1973年5月31日生まれ、兵庫県出身。MFとしてプレーし、神戸弘陵学園高校から大阪体育大学に進んだ。教員となり、御影工業高校と神戸弘陵学園高校でコーチを務めたあと、2006年に神戸弘陵学園高校の監督に就任した。13年に13年ぶりとなる全国高校サッカー選手権大会出場を果たしたほか、15年には高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグWESTへの昇格も果たした。江坂任(柏レイソル)や田平起也(セレッソ大阪)など、Jリーガーも育てている

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取材・構成/森田将義

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