米カレッジフットボールは、ボウルゲーム真っ盛りだ。130大学が所属する最上位カテゴリーの1部FBS(フットボール・ボウル・サブディビジョン)は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で、なにからなにまで異例ずくめだったシーズンを、なんとか終えようとしている。開幕時の9月上旬に比較すると、3カ月余りで、感染者数が3倍以上の1966万人(米CDC調べ、2020年12月31日)に膨れ上った米国では状況は深刻で、選手やコーチ・スタッフの感染が相次ぎ、多くの試合が中止になるなど、大きな変更を余儀なくされた。
昨シーズンのボウルゲームは、全米優勝戦を含めて41。それが今季は30まで減った。開催予定だった試合も、12月31日までの21ボウル中4試合がCOVID-19の影響で中止となった。
◇議論を呼んだ「全米4強の選出」
全米王座を決めるカレッジ・フットボール・プレーオフ(CFP)に進出する4チームは、CFPランキングの1位アラバマ大学(11勝0敗、サウス・イースタン・カンファレンス=SEC)、2位クレムソン大学(10勝1敗、アトランティック・コースト・カンファレンス=ACC)、3位オハイオ州立大学(6勝0敗、ビッグテン・カンファレンス=BIG10)、4位ノートルダム大学(10勝1敗、今季限定でACC)となった。
クレムソン大のQBローレンス=photo by Getty Images
アラバマ大とノートルダム大の「ローズボウルゲーム」は、アラバマ大の優位は動かない。QBマック・ジョーンズ、WRデボンテ・スミス、RBナジ-・ハリスの「3本の矢」に、伝統の強力ディフェンスと大きく強いOLは死角がない。今回も優勝候補の筆頭だ。
ノートルダム大は12月19日のACC決勝では、クレムソン大に完敗した。クレムソン大とはシーズン中の対戦では勝っていたが、この時はQBローレンスがCOVID-19に罹患したため出場していなかった。ACC決勝戦では、オフェンスの獲得ヤードはクレムソン大の半分以下で、34-10というスコア以上に、力の差が目立った。ノートルダム大が勝つためには、エースQBイアン・ブックの大活躍と、ディフェンスの奮起が必要だ。
ノートルダム大のエースQBブック=photo by Getty Images
◇ハイズマン賞にWRスミスが急浮上の背景
カレッジフットボールの年間最優秀選手賞、ハイズマントロフィーは、例年なら12月上旬の土曜日に発表されていたが、今季は1月5日発表となった。シーズン前の予想は、NFLドラフトのトップ評価と同じで、本命ローレンスに対し、対抗がフィールズだった。しかし、前述のように、ローレンスは試合欠場、フィールズは不調で、成績が積みあがらず、脱落した形となった。
代わって台頭したのが、フロリダ大のQBカイル・トラスクと、アラバマ大のQBマック・ジョーンズだ。トラスクはFBSでトップのパス4125ヤード、43TDを記録した。ジョーンズはFBSで2位の3739ヤード、32TD。共に近年のカレッジフットボールでは珍しく、ほとんど走らない純粋のパサーだ。
フロリダ大のQBトラスク=photo by Getty Images
12月19日のSEC優勝戦では、両チームが対戦し、アラバマ大が52-46でシュートアウトゲームを制した。この試合でジョーンズはパス418ヤード5TD、トラスクは408ヤード3TDという好成績を残した。ただ、内容的には、この2人が昨年のジョー・バロウ(現NFLベンガルズ)や、1昨年のカイラー・マレイ(現カージナルス)、3年前のベイカー・メイフィールド(現ブラウンズ)のパフォーマンスに匹敵するとは、言い難いものだった。トラスクは球離れが遅いため度々サックされ、ファンブルロストするなど課題も多く、ジョーンズもアラバマ大の強力なOLと優秀なWR、RBに助けられている部分が目についた。
米スポーツ専門局ESPNの特集コーナー「ハイズマンウオッチ」では、週ごとにハイズマン受賞候補をランキングで掲載しているが、この試合が終わった段階で、アラバマ大のWRデボンテ・スミスがトップ候補に躍り出た。スミスの今季の成績はパスレシーブ1511ヤードで17TD。WRがハイズマン受賞となると、1991年のデズモンド・ハワード(ミシガン大)以来となる。
スミスのシーズン後半6試合での活躍は、パスレシーブ955ヤード13TDと目を見張るものはあったにせよ、ここへ来てのトップ浮上は、候補となったQBたちが、周囲を納得させるパフォーマンスを見せられなかったことの結果と言えそうだ。試合や練習などプレー機会の減少で、最も影響を受けているのはQBという見方もできるだろう。
アラバマ大WRスミス。ハイズマントロフィー受賞が有力視されている=photo by Getty Images
スミスは12月29日に、AP通信が選出する「プレーヤーオブザイヤー」の受賞も決まったが、過去22人の受賞者から17人がハイズマントロフィーも勝ち取っているので、スミスのハイズマン受賞は濃厚となった。
なお、ハイズマントロフィーは記者投票によって決まるが、選考の対象はあくまでレギュラーシーズンのゲームで、ボウルゲームは含まれない。発表は、全米準決勝の4日後だが、投票は12月21日までになされている。現地12月30日のコットンボウルではフロリダ大がオクラホマ大と対戦し、フロリダ大のQBトラスクは、パス158ヤード、3インターセプトと今季最悪のパフォーマンスとなったが、仮にトラスクがハイズマントロフィーを受賞できなかったとしても、この試合は関係ないということになる。
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