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2021-01-23

【ボクシング】ロイヤル小林、「ハードパンチ」を語る。

2013年5月、熊本市内で取材に応じてくれた小林さん。照れながら、でもとても実直に語ってくれた

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“KO仕掛人”の異名を持ち、左フックを主武器に対戦相手を次々となぎ倒して一時代を築いたWBC世界スーパーバンタム級チャンピオン、ロイヤル小林(本名:小林和男)。その戦いぶりもさることながら、日本のボクシングファンには、歴史に名を刻む名選手との対戦でも記憶に残る。昨年11月に亡くなられた小林さんは、トレーナー業を辞した後、故郷・熊本でひっそりと暮らしていらしたが、『ボクシング・マガジン2013年7月号』の特集「ハードパンチャー」のために、取材に応じてくれた。追悼の意を込めて、当時語ってくださった重みのある言葉、時代を先取りした思考をここに再掲載する。

良い刀でも、研かなければ斬れない

 私は特別なことはしなかったですよ。当たり前のことをやるだけでした。練習でやったことしか、試合には出ないからね。強いパンチを打ったって、当たらなければ意味がない。当てるためにはスパーリングをたくさんやること。やっぱり練習ですよ。
 
 高校のときは剣道と空手をやっていたんです。その後、自衛隊体育学校に入ったんですが、そこで『オリンピック選手募集』っていう掲示を目にして……。オリンピックに出たくてね。そのとき、ミュンヘン・オリンピック(1972年)までは2年と7ヵ月しかなかったけれど。だから、1日4回くらい練習をしました。その後、活躍できたのは、あのとき練習した賜物ですよね。


王者リアスコを8回KOして世界王座奪取。五輪日本代表初の世界チャンピオンとなった

 どんなに良い刀を持ってたって、研がなかったら人は斬れない。間違った研ぎ方をしたって斬れない。きちんと斬れるように研ぐことが大事。誰かに教わることだけをやったって強くはならない。自分自身の研究心も必要です。最初は人真似でいい。それを続けていくことによって、だんだんと自分のものになっていくんだから。

 自分の場合は、藤猛さん(元世界スーパーライト級チャンピオン)。藤さんのボクシングを見て、俺もボクシングをやろうって思ったから。特にあの左フックですね。ボクシングをやる前から真似していましたよ。剣道部だった高校生のときからすでに(笑)。

 剣道の間合い、それを感覚として体に持っていたのが大きかった。切っ先が触れるかどうかの間合い。間合いは教えられるものじゃなく、自分でつかむものですから。剣道のおかげで、その間合いをつかむことができた。遠すぎてもダメ、近すぎてもダメ、ですから。それと、高校以前は短距離をやってたんですが、陸上で足腰を鍛えられたんです。いろいろと土台があったんですね。

誰でもハードパンチャーになれる!

 練習での打ち方次第で、どんな人でもハードパンチャーになれますよ。自分自身でいろいろと研究して、上半身の力だけじゃ限られるから、足の力をどういうふうにして使うか、とか。

 自衛隊のころは、午前中に2回走って、午後からジムワーク。夜、みんなが休んでいるときにサーキット。筋トレをしていました。当時は「ボクシングには筋トレは必要ない」って言われた時代だったけれど、筋トレをやる“時間”が大事なんです。筋トレをしてからボクシングの練習をやると、膨張した状態だから良くない。筋トレをやって寝ると、一晩休まるから筋肉が落ち着いて、パワーに変わるんです。

「筋トレはやっちゃいけない」って言われたけれど、無視してやってました(笑)。相手を倒す競技なんだから、自分の体くらい持ち上げられる力がないと、って思ってましたから。 

 当時はベンチプレスで110kgくらい上げていましたねぇ。今は80kgくらいだけど。警備員をやってるから、いざというときに体を鍛えておかないと。あとは、おいしく酒を呑むため(笑)。そういう不純な考えで筋トレをしてるんです(笑)。

PROFILE
本名:小林和男。1949年10月10日生まれ。熊本県下益城郡出身。アマチュア戦績37戦34勝(28KO・RSC)3敗。1972年ミュンヘン五輪フェザー級ベスト8。翌年2月15日、国際ジムからプロデビュー。76年10月9日、王者リゴベルト・リアスコ(パナマ)を8回KOで下し、WBC世界スーパーバンタム級王座を獲得した。世界3階級制覇の“貴公子”アレクシス・アルゲリョ(ニカラグア、1975年10月に対戦し5回KO負け)、同じく世界3階級制覇で世界戦17連続KO防衛の記録保持者ウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ、1978年1月に対戦し3回KO負け)、19度防衛のクラスレコードを持つエウセビオ・ペドロサ(パナマ、1979年1月に対戦し13回KO負け)ら、歴史的名選手とグローブを交えた。

取材_本間 暁 写真_本間 暁、BBM(試合)

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