アメリカンフットボールのXリーグは、トップリーグ「X1スーパー」第3節でパナソニックインパルスとIBMビッグブルーが対戦し、パナソニックがIBMに競り勝った。パナソニックは2勝1敗、IBMは1勝2敗となった。
先制はパナソニック。第1Q、QBアンソニー・ロウレンスのパスで攻め込むと、RBビクター・ジャモー・ミッチェルが飛び込んでタッチダウン(TD)をあげた。IBMはすかさず、直後のドライブで、QBケビン・クラフトからRB伊藤隆貴にパス。ランアフターキャッチで68ヤードをゲインしてチャンスを作った伊藤がTDも決めて同点とした。ここから得点の応酬が続き、パナソニックが28-20とリードして、後半へ折り返した。
第3Q、IBMはQBクラフトからWR近江克仁にTDパス。さらにTEジョン・スタントンにパスで2ポイントコンバージョンを成功させ同点に。追いつかれたパナソニックは、RB岩田駿一のTDで35-28と再び勝ち越した。
パナソニックは、7点を追うIBMに、第4Qゴール前1ヤードまで攻め込まれるが、QBクラフトのパスをエンドゾーン内でインターセプト。さらにパナソニックは、残り3分からのオフェンスで、WRダニエル・ワイズが61ヤードのランTD、14点差として決着をつけた。
両チームともに12回のオフェンスシリーズで、パントはIBMが3回、パナソニックが2回という撃ち合いを制したのはパナソニックだった。過去2シーズンは、ジャパンXボウルの一つ前、準決勝で対戦し、ホームの大阪で事前の有利予想にもかかわらず煮え湯を飲まされた相手だ。この試合もIBMのオフェンス力に苦しみながら、終盤に競り勝って雪辱した。
有り余るほどの見どころの中で、注目したのは第4Q終盤の攻防だ。試合残り時間は3分あまり、IBMは7点をリードされて、自陣26ヤードでフォースダウン残り4ヤードとなった。当然ギャンブルかと思いきや、即座にパントチームを入れてパントを蹴る選択をした。ボールはスナップされたが、パナソニックサイドラインはその寸前にタイムアウトを取っていた。
パナソニックのディフェンスはIBMのフォースダウンが早すぎて、人数の入れ替えができず、フィールドには12人以上がいた。IBMのHCでもあるクラフトが「交代違反」の反則を狙って仕掛けたものだ。タイムアウトのコールが少しでも遅れれば、プレーが始まり、パナソニックの5ヤード罰退でIBMが攻撃を続行できる場面だった。
パナソニックの荒木延祥監督は「タイムアウトは、私が取った。パントをリターンする気もなかったし、とにかくちゃんとやろうと思った」という。
仕切り直しの後、IBMは結局パントを蹴ってパナソニックのオフェンスとなった。そこでパナソニックは用意していた、とっておきのプレーを繰り出した。スロットレシーバーとして入っていたワイズへのリバースだ。右の外をまくったワイズはぐんぐんと加速し、IBMサイドラインの前を走り抜けてTD。勝敗は事実上決着した。
試合後、荒木監督は「2連敗した相手。この試合に対して、思うところは強かったが(簡単ではなかった)。ただ今年のチームは始まったばかりなのでどこまでの実力があって、どこまでプレーしきれるのか、というのがまだ把握できていない状況だった。どんな試合になるのかは分からなかったが、点を取らなければ勝てないことだけは分かっていた。取られたら取って、取られたら取ってと、オフェンスが頑張ったのが勝因だと思う」と振り返った。
「今日、オフェンスは、凄い数のプレーを用意した。プレーに困ることもなく、全部のシリーズでTDを取りに行くつもりだった。それでも勝負所でのミスはあったし、きちんとやり切れれば今日も50点は取れた試合だった」という。
殊勲のTDのワイズは、第2節の富士通戦で、パントリターンの場面で痛恨のマフを犯し、流れを失うきっかけとなった選手。この試合で恥をすすいだ形となった。そしてチームも、大阪のファンの前で、IBMを破って見せた。
それでも、誰よりも負けず嫌いな荒木監督には、リベンジしなければならない相手が別にいる。「もう一回、富士通とやりたい」。その言葉を繰り返した闘将の目には挑戦者の炎が燃えていた。【写真/文:小座野容斉】
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