NOAH2・12日本武道館大会でタッグを組んで清宮海斗&稲村愛輝と対戦した秋山準と丸藤正道。決戦前におこなわれた対談では秋山のNOAH退団劇についても語られていた。 2012年12月4日、NOAHは千葉大会前に田上明社長が会見をおこない、一部夕刊スポーツ新聞に掲載された秋山準、潮崎豪、金丸義信、鈴木鼓太郎、青木篤志の5選手退団について「契約を今年いっぱいにさせてくれとは言われてます」と説明。12・23ディファ有明大会では丸藤vs秋山のシングルが組まれた。
試合は21分40秒、フロント・ネックロックで秋山がTKO勝ち。試合後、両者はリング上に座ってしばらく言葉を交わした。その時のことを秋山は「あの時に2人で座って話したのがここでひと区切りなんだろうなって感じました」と振り返る。
2人はどんな内容の話をしていたのか? 丸藤は「明かさないですね」と前置きしながらも「あの時、こうなりますよって確かなものはなかったんですけど、またいつか巡り合えたらいいなって思ってました。ボクの中ではいつかあるんじゃないかなと思ってたんで…杉浦さんと違って(笑)」と語った。
当時、杉浦貴は秋山らの退団に激怒。12・23有明大会では退団する潮崎とのシングルに臨んだが、試合前に丸藤は「ちょっと何かやっちゃったら、すみません」と打ち明けられていたという。
そんな丸藤の話を聞いて、当時は渦中にいた自身について秋山はこんなことを語った。
「ボクは出る身なんで巡り合えたらいいなとかなかったですね。またゼロというか、イチからなんで余裕はなかったです。ボク、あんまり後ろを見ないんですよ。それがよくないのかもわからないけど、いいことも悪いこともすぐに忘れるんですよ。ほぼ前しか見てない。だから、あんまり昔話もしないし…しないっていうか、忘れてるんですよ」
隣で聞いていた丸藤は「ボクは女々しいんで、すぐに過去を振り返ります」と笑う。その言葉を証明するように、当時の貴重なエピソードも明かす。
「秋山さんが辞める時もどこか地方の控室に2人っきりで『オレはこうこうこうだから、こうするんだ』ってちゃんと話をしてもらったんですよ。人それぞれなんで。これはプロレスっていうよりも人としての人生模様なんで。リアルだからこそファンの人も感情移入するんじゃないですか」
両者は2018年4月の全日本プロレス「チャンピオン・カーニバル」公式戦で再会し、試合後にグータッチを交わした。丸藤はこの一戦を通して「いろいろあってボクの中ではキレイにひと区切りできた」と過去が清算できたことを告白。NOAH11年ぶりの日本武道館が決まると秋山とのタッグを希望し、2・12武道館で実現。試合ではNOAHの未来を担う清宮&稲村に敗れはしたものの、NOAHの歴史を築いてきた両者のタッグは観客を魅了していた。
秋山はDDT2・14川崎大会でシングルリーグ戦「D王 GRAND PRIX 2021」優勝者として遠藤哲哉のKO-D無差別級王座への挑戦を控えている。丸藤は13日に「昨日負けたやつが何言ってんの?って思うかもしれないけど、俺は今年中に絶対にGHCヘビーに挑戦する!」とツイート。それぞれが次なる闘いに向けて、すでに動き始めている。
丸藤と秋山の人生模様が再び交錯する日はいつになるのか。その日を楽しみに待つことができるのはプロレスファンの特権。プロレスはプロレスラーたちが己の人生を懸けてリングで紡いでいく壮大な大河ドラマなのである。
<週刊プロレス・井上光>
週刊プロレス 2月24日号(WEEKLY PRO-WRESTLING No.2107)