2月28日(日)に行われたびわ湖毎日マラソンでは、鈴木健吾(富士通)が2時間04分56秒の日本新記録で優勝を飾ったが、男子マラソンの日本記録の変遷を見返すと、あらためて近年の高速化を裏付けている。
2時間10分切り(サブテン)を基準に見ていくと、以下のような変遷となる。
★男子マラソン日本記録の変遷(2時間10分切り以降)
●2時間09分05秒6:宗 茂(旭化成)
1978年2月5日/別府大分
●2時間08分38秒:瀬古利彦(エスビー食品)
1983年2月13/東京国際
●2時間08分15秒:中山竹通(ダイエー)
1985年4月14日/ワールドカップマラソン広島
●2時間07分35秒:児玉泰介(旭化成)
1986年10月19日/北京国際
●2時間06分57秒:犬伏孝行(大塚製薬)
1999年9月26日/ベルリン
●2時間06分51秒:藤田敦史(富士通)
2000年12月3日/福岡国際
●2時間06分16秒:高岡寿成(カネボウ)
2002年10月13日/シカゴ
●2時間06分11秒:設楽悠太(Honda)
2018年2月25日/東京
●2時間05分50秒:大迫 傑(Nike)
2018年10月7日/シカゴ
●2時間05分29秒 大迫 傑(Nike)
2020年3月1日/東京
●2時間04分56秒:鈴木健吾(富士通)
2021年2月28日/びわ湖
初めてサブテンの領域に入ったのは、1978年の宗茂(旭化成)。宇佐美彰朗(日大桜門)が保持していた2時間10分37秒8の日本記録を実に7年3カ月ぶりに更新したときだった。その後、1分刻みで見ていくと、2時間08分台まで約5年、2時間07分台までは約3年と記録更新の流れは加速したかに見えたが、2時間06分台への突入はその後、約13年間待たなければならなかった。さらに高岡寿成(カネボウ)が2002年に2時間06分16秒の日本新を出して以降は、15年4カ月も日本記録の更新は見られなかった。
しかし、2018年2月に設楽悠太(Honda)が高岡の日本記録を更新すると、その8カ月後には大迫傑(Nike)が2時間05分台に突入。さらに1年半後には大迫がさらにその記録を縮め、今回のびわ湖では鈴木が2時間04分台に突入した。
2017年以降の世界的な潮流同様にシューズの技術革新も一因にあるだろうが、設楽や大迫が止まっていた時計を動かしたことは、他の選手の意識にも大きく影響を及ぼしたといえる。特にこの2年は記録にもその傾向が顕著に表れている。
昨年の東京マラソンでは日本新を樹立した大迫含め4名が日本歴代10傑入り、今回のびわ湖毎日マラソンでは鈴木を含めて日本人上位5名が日本歴代10傑入りを果たしている。1レースで好記録が続出する要因はコース、その日の天候や気象条件、ペースメーカーがつくりだすレースペースなどさまざまな要因があるだろうが、全体的に「はまった」展開のなかで生み出されたことは間違いないだろう。
ちなみに日本歴代5位、10位を2019年から振り返ると以下のようになる(2021年は2月28日現在)。
2019年 5位=2時間06分54秒/10位=2時間07分39秒
2020年 5位=2時間06分51秒/9位タイ=2時間07分05秒
2021年 5位=2時間06分26秒/9位タイ=2時間06分51秒
今後、日本記録更新はもちろん、歴代記録の底上げがどこまで進んでいくのか。楽しみである。