5月3日、静岡県・小笠山総合運動公園静岡スタジアム(エコパ)で行われる東京五輪代表選考会の第105回日本選手権女子10000m。優勝争いは、JP日本郵政グループ勢を中心に展開することが予想される。
2度目の10000mで代表入りを狙う廣中 10000mの新谷仁美(積水化学)、マラソンの一山麻緒(ワコール)と、東京五輪代表に内定している2選手が不参加。佐藤早也伽(積水化学)が欠場し、昨年12月の日本選手権1~3位(新谷、一山、佐藤)不在のレースになる。
東京五輪の参加標準記録(31分25秒00)突破者の出場がゼロのため、この大会で標準記録を破って2位以内に入った選手が代表に内定する。
標準記録突破の可能性が最も感じられるのが、廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)である。廣中は4月の金栗記念が自身初めての10000m出場だったが、31分30秒03で優勝。標準記録の31分25秒00に約5秒と迫った。
廣中の持ち味は積極性。大会やシーズンの目標を問われると常に、「タイムや順位はなく、思い切り走ること」だと廣中は答えている。新谷に敗れた昨年9月の全日本実業団5000m(14分59秒37の日本歴代3位)も、田中希実(豊田自動織機TC)に敗れた12月の日本選手権5000mも、廣中が前に出てペースをつくった。上りのあるクイーンズ駅伝1区(7.6km)では、佐藤を32秒引き離した。
金栗記念は初の10000mということで慎重になった部分と、廣中らしさの両方が現れた。1000~2000mが3分20秒にペースが落ちると先頭に立ち、3分12秒、3分06秒とペースアップ。5000mで安藤友香(ワコール)に先頭を譲り、3分10秒前後のペースに落ち着いたが、8000mでスパートして安藤を引き離した。9000mまでは3分00秒、最後の1000mは2分58秒まで上がった。
廣中はレース後の場内インタビューには、「先輩の胸を借りながら戦えました。ラストは自分らしい走りができてよかった」と答えていた。
10000mを一度経験したことで、日本選手権ではさらに自身の力を発揮する走りができるだろう。その結果として、風などの気象条件が悪くならない限り、標準記録を上回るはずだ。
終盤勝負に持ち込みたい鍋島 廣中の先輩である鍋島莉奈も優勝候補の一人。日本郵政としては、鈴木亜由子と関根花観が1、2位を占めた16年日本選手権のように、鍋島と廣中でワンツーフィニッシュを達成したい。
鍋島は17、18年と5000mで、19年は10000mで日本選手権に優勝した勝負強さを持つ。故障で1年間ブランクが生じたが、昨年7月に復帰。12月の日本選手権は31分31秒52で4位と、今大会出場者では最上位を占めた。
ラストスパートが武器の選手だが、クイーンズ駅伝5区で2度区間賞を取るなど単独走もできる。16年に鈴木と関根が見せたように、日本郵政コンビが交互に先頭に立って標準記録を上回るペースでレースを展開することもありそうだ。廣中と同期の大西ひかり(JP日本郵政グループ)が、そこに加わる可能性もある。
鍋島が最後まで廣中に食い下がることができれば、鍋島が有利だろう。故障明けでも昨年の全日本実業団優勝時には、見事なラストスパートを見せている。だが金栗の廣中はラスト1周を68秒でカバーした。廣中のラストスパートの力も上がっているだけに、最後まで一瞬たりとも目が離せない激戦になるかもしれない。
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